「ねぇ、あなたの親指をここに・・・。」
彼女は優しい声で囁いた。憧れの女性上司とは少しタイプは違うけれど、彼女もとても素敵な女性だ。まずは親指の位置が大事みたいだ。
「柔らかい手をしているのね。今度は、中指をここに入れて。こっちじゃなくて、こっちよ」
そう、穴は一つではないのだ。そして、僕は年上の女性にとても弱いのだと改めて思った。弱いというのは苦手ということではなく、何か言われると抵抗しようという気が起きずに、何でも言われたとおりにしてしまいそうだと言うことだ。
「あんまり深く入れないでね。第一関節と第二関節の間くらいまでを入れるの」
そう言われると、そのくらい入れるのがいいのだと、何かで読んだことがある。でも、実際に素敵な女性に、僕の指をいじりながらそう言われると、とても説得力がある。
「それから、薬指もよ。薬指はこっちの穴に入れるの」
彼女は僕の手を取り、指を持って、その穴へと導いた。
「入れたり出したりして・・・。」
彼女はそう言って、僕の指を持って、穴に入った指を入れたり出したりした。とても慣れた手つきだ。そして、とても積極的だ。
「こういうの、初めて?」
ここで見栄を張っても仕方がない。彼女はお見通しなのだ。「は、はい。」と答えるしかなかった。
「緩くない?」
僕の指をその穴に入れたり出したりしながら、聞いてきた。緩いかどうかを、とても気にしているようだった。
「これだと、きつすぎる?」
こんどはきつすぎないかを聞いてきた。緩くしたりきつくしたりもできるようだ。(さすがだな)と僕は思った。
僕の指をその穴へ導く彼女の指に、プロとしての自覚と自信に満ちあふれたものを感じた。そんな彼女の指と、その穴の感触を確かめながら、僕は憧れの女性上司のことを思い浮かべていた。(いつか、あのひととプレイしたい。どんな風に誘ったら良いのだろう?旦那さんがいるけれど、OKしてくれるだろうか?)
「お客様」と言う声で我に返った。
「在庫にもよりますけれど、場合によっては1週間から10日くらいかかるかもしれません」
こんな風にして、僕はボウリングのマイボールをつくった。どんな感じにできあがるのか、楽しみだ。