大人の自由研究『あばり編み』 | 備忘録ときどきご案内

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日々のなかで触れた古今東西の文化、芸術などについて
そして、ささやかな出来事などの備忘録。
ときどき企画催しなどのご案内。
ギャラリータフ 宮﨑賀世子

ずっと前、漁師町を映したドキュメンタリーだったかで
シケの日に漁で使う網の修繕をしている漁師さんが手にする
変わった道具が目に止まった。

その道具をスイスイと動かし大きな網の穴のあいた箇所を繕ってゆく様子が
印象に残っていたことを、あるワークショップの案内をみて思い出した。

その道具は「あばり」でそれで編むことを「あばり編み」というらしい。

 道具(あばり)付き!習いたい!

繊維造形作家の新田恭子先生が織機の研究で訪れたラオスで
河魚漁で使う網を編む漁師さんと出会い釘付けになり
あばりを使って編む技法を即、教わったのが1999年
新田さん(下の写真)の指し示すのはその時の師匠である漁師さん。

ここで出会うあばり編みの技法が後に自由自在にアレンジ可能な作品を生む事になる。

 
新田恭子先生(フリースタイルあばり編み主宰)
ネックレス、ブレスレット、ハットもすべてあばり編みによる作品

帰国後、日々あばり編みの腕を磨き、造形と研究を続けるなかで
展覧会で訪れた
福島県いわき市小名浜の元漁師さんから
ガラスの浮き玉を編み込む方法を教わる機会にも恵まれ
それからも様々な出会いや縁が
編み目のように繋がり現在に至る

大きな魚がかかる漁場(海)の網は結び目が固定されている技法で編まれる。
ラオスの河魚漁では主に小魚を獲るので網の結び目が自在に動く編み方
ゆえに編みながら最後にガラスの浮きを入れるにはこの技法が向いている。

このすばらしい技法と造形への無限の可能性のあるあばり編みを普及させるべく
新田先生のワークショップでは
これひとつで小さな巾着からグリーンカーテンのためのネットまで編めてしまう
マイあばりを手にするところからスタート


好きな色糸(紐)を選びかぎ針の編みはじめのように
直径2cmほどの底から増やし目をしながらぐるぐるとひたすら編む


何色かを結び加えながら大きめのコースター程度まで編み周囲に紐を通し


結んで巾着の完成


ただただ技法を覚えたくて
好きな色を組み合わせて没頭してできた巾着だったけれど

何入れよう?と考えて
茶入れに見立てて木蓋を誂えた
ヨーロッパのガラス器がすっぽり入ったため
綴じ紐を一旦取り銀の刺繍糸を加えて細く三つ編みにしてみた

突っ込みどころ満載のなんちゃって仕覆(しふく)で一旦落着

「ラオスの漁師さんに教わったこの技法はもちろん
だれのものでもないので
皆で自由にあばって(あばりで編むこと)もらっていいです
と先生はおっしゃるのだけど
フリースタイルあばり編みの主宰者として
雑誌などでも紹介されていたり
近く、ご自身の本も出されるとか…もあり
編み方の掲載は差し控えることにした

その出版前にあばり編みの「あばりかた」の私家版が近々完成予定!
ご興味のある方は新田恭子先生のあばり編みの作品も常設している
ギャラリーギャラリーさんまで
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開催する事はあっても、参加は久しぶりだったワークショップ
そして、長い事脳裏から消えなかった「あばり編み」
ついにあばりを手にして編み進めるうちに
束の間、無心の心地よさの中の自身に気付く
充実の学びの時間でした
先生ありがとうございました。

子供のころはやっつけがちだった夏休みの宿題も
大人になると学ぶ事がどうしてこんなに愉しいのでしょう
大人の自由研究
充実の半日の備忘録でした。
長々おつき合いありがとうございました。