新年 明けましておめでとうございます。
旧年中は、大変お世話になり、心より感謝申し上げます。
本年も、BLRM 並びに、suu4312 を、
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
さて、2019年1月1日、私の住む和歌山では、
天候にも恵まれ、晴天だったので、初詣もまだだと言うのに、
双眼鏡を、何台も車に積み込み、
久し振りに、覗き比べに行って来た。
今回、持参した双眼鏡は、以下のようなモノである。
CARL ZEISS Dialyt 7×42BGA T*P* ClassiC
CARL ZEISS Dialyt 6×42BGA T*P SKIPPER
CARL ZEISS Oberkochen 8×30
CARL ZEISS JENA DELTRINTEM 8×30 1Q
HENSOLDT WETZLAR DIAGON 8×30 (後期型)
HENSOLDT WETZLAR Dienstglas 8×30
写真には写っていないが、 CARL ZEISS VICTORY FL 8×32T*
LEICA TRINOVID 8×42BN も 持参した。
出掛けたのは、自宅から近くの いつもの川の堤防だ。
以下の写真のような景色を堪能して来た。
まず、画像 A の景色では、
①の赤の円の部分を双眼鏡で覗いたものが、
ちょうど、その下の画像のようなイメージなのだが、
この サークル内の 川辺から山の麓までの景色が、
立体感や遠近感、奥行き感 等、
自然に気持ち良く、そして美しく、見えるかどうか!?
また、手前のススキや 木立等が、どのように見えるか??
次の 画像 B では、①の道路標識が鮮明に見えるかどうか??
解像度やシャープさを 試すのに、丁度良いのである。
また、②や③の 木々の様子も、覗き比べてみた。
最後に C の画像 の景色では、
①の看板の文字が、どこまでハッキリと見えるか!?
②には、白サギ がいたのだが、その観察、
同じく、③内の水面に群れる 鴨の観察 等を行った。
橋とその向こうの景色の、遠近感や奥行きも、
どのように見えるか!? 観察してみた。
さて、どこから書けば良いのやら。。。
結論から言うと、
像の美しさ、鮮明さ、明るさ、奥行き感や立体感、シャープさ、等、
「双眼鏡の総合的なパフォーマンス」 としては、
やはり、 CARL ZEISS Dialyt 7×42BGA T*P* ClassiC と、
同じく、CARL ZEISS Dialyt 6×42BGA T*P SKIPPER 、
この 2台が 断トツで 優れたパフォーマンスであった。
最早、文句の付けようのない、素晴らしい像=世界 であった。
やはり、この 2台は 「別格」 である。
とりわけ、スキッパーの透過感と像の明るさは、
王者をも 若干上回り、体感的には 95%以上あるのでは??
と思わせるような、ガラスの存在を全く感じさせない、
極めて高い、究極とも言える透過感であった。
また、スキッパーは像の中の見え方が、
王者よりも、グッと 引き締まった感じに見え、
より クッキリハッキリ、鮮明に感じるように見える。
覗いた景色が、まるで 一枚の絵 のようになってしまう、
芸術的とも言える、 スキッパーマジック も健在である。
また、王者、スキッパー 共に、シャープさや解像度も、
やはり これ以上は望めない トップレベルであった。
参考までに、王者とスキッパーの接眼レンズを、
画像で比較してみよう。
スキッパーと王者では、コーティング色が違う以外に、
スキッパーには、接眼レンズ周りに、
黒く、太い リングのようなモノが確認出来る。
より、クッキリ ハッキリの秘密は、
この辺にあるのかも知れない。。。
さて、他の双眼鏡は、この2台に どれだけ迫れるか!?
または、どれだけ違った個性で楽しませてくれるか!?
と言うことになるだろうか。
まずは、 デルトリンテム、
CARL ZEISS JENA DELTRINTEM 8×30 1Q から行こう。
画像Aの自然な奥行き感や、遠近感等の、
立体的な表現や、自然な距離感の表現は、
今回持参した双眼鏡の中でも、トップクラスの描写であった。
本当に 「自然」 なのである。
加えて、ススキが1本1本、確認出来るシャープさ、
その極めて自然な質感 等、「自然さ」 と言った点では、
今回の双眼鏡の中でも、トップかも知れない。
像が優しいというか、柔らかい と言うか、
コントラストが強過ぎないと言うか、
目に優しい感じで、長く覗いていても、目が疲れにくい。
また、画像B や画像C の看板や標識の文字も、
余裕で、バッチリ確認出来た。
像の明るさ、コントラストは、さすがに他の名機達に比べると、
光学性能的には、不利と言わざるを得ない為、
木立の陰の部分等では、少々見えづらい事もあるのだが、
とにかく、その自然で優しい質感は、他では得難いものだ。
次に CARL ZEISS Oberkochen 8×30 、
いわゆる、オーバーコッヘン である。
さすがに、デルトリンテムよりも、
1ランク上か!? と思わせられる、
像の明るさ、安定感、抜けの良さ、コントラストである。
立体感や奥行き感も、デルトリンテム同様、自然であり、
解像度、シャープさ、等は デルトリンテムと同等か、
若干 上回る!? と思えるような見事な像であった。
この、コクとキレが 高次元で両立したような、
まるで、アサヒ スーパードライの謳い文句のような、
画質の魅力に加え、軽くて 小さくて、取り回しも良いので、
ファンが多いのも、頷ける 1台である。
やはり、オーバーコッヘンは良い双眼鏡である。
次に、ヘンゾルト HENSOLDT WETZLAR Dienstglas 8×30 。
この双眼鏡は、軍用双眼鏡で、 D16 Fero よりも、
以前のバージョンの機種である。
この DIENSTGLAS は、非常に良く見える。
像の明るさは、オーバーコッヘンと同等くらいで、
30mmにしては、非常に明るく、シャープで、
オーバーコッヘンよりも、像の線が より一層 繊細だ。
また、周辺像の歪みが少ない。
奥行き感や、遠近感の表現も秀逸で、
極めて自然な感覚で、見せてくれる。
「自然さ」 と言う点では、
デルトリンテムと 双璧かも知れない。
デルトリンテムとの違いは、
更に1ランク 像が明るい事と、
色彩感のナチュラルさだ。
この点では、オーバーコッヘンも上回り、
着色感が、まるで皆無な 自然な色彩を見せてくれる。
コントラストは、オーバーコッヘンよりも 若干低めで、
コントラストの誇張感は皆無であり、それ故なのか、
非常に 繊細なシャープさ を見せてくれる。
また、どちらかと言えば、ZEISS よりも LEICA に近いような
色味の魅せ方で、景色がとても美しい。
色彩が繊細で豊かなのである。
ずっと、覗いていたくなるような、そんな双眼鏡だ。
見た目も無骨な、軍用双眼鏡ではあるが、
非常に優秀なパフォーマンスだと感じた。
同じ ヘンゾルトの軍用双眼鏡の、
DIAGON ARMEE FRANCAISE 8×30 と
見え味が 非常に よく似ている。
次に、同じく ヘンゾルトの幻のポロ式双眼鏡の名機、
HENSOLDT WETZLAR DIAGON 8×30 (後期型) である。
この双眼鏡は、極めてレアなので、これまで
ブログで紹介するのを、敢えて避けていた。
状態の良い個体は、スキッパー以上に レアなので、
ブログで取り上げたところで、
あまり参考にならないと思ったからである。
2019年の元旦と言うことで、特別に 初出場頂こう。
まず、中心像のシャープさと解像度は、
今回持参した ポロ式双眼鏡の中で、
間違いなく、ナンバーワンだろう。
非常に、解像度の高い双眼鏡である。
C の画像の ①の看板の下の小さな文字が、
この双眼鏡でのみ、読む事が出来た。
また、像の明るさも、王者とスキッパーを除き、
今回 持参した ポロ式双眼鏡の中では、
オーバーコッヘンと並び、ナンバーワンだ。
何より、特筆すべきなのは、
着色感も皆無で、肉眼で見たまんまの色彩である。
最近のハイエンド双眼鏡の多くは、
まるで 漂白でもしたかのような 「白」 だったりするが、
そういう方向ではなく、 「見たまんまの白」 といった印象だ。
それは、あまりにも 演出感が無く、
冷淡な程に、客観的描写、忠実描写に徹しており、
その意味では、デルトリンテムと 対極 にある存在である。
とは言え、光が当たった ススキや木々の葉 等の表現が、
非常に美しく、 「光を捉え、表現すること」 が、
とても 優れた双眼鏡だと感じる。
先の DIENSTGLAS 同様に、この時代の、
ヘンゾルトの双眼鏡のコーティング技術の優秀さが伺える。
それに加えて、周辺像の歪みも少なく、
恐らくは、1960年代辺りは、コーティング技術も、
レンズの研磨技術も、ヘンゾルトが勝っていたのでは??
と、この DIAGON や DIENSTGLAS 等を覗いていて、
そう感じる。
どちらかと言えば、ヴィンテージの双眼鏡よりも、
現代のハイエンド双眼鏡の見え味に近く、
コントラストも高めで、デルトリンテムやオーバーコッヘンとは、
明らかに違う、一線を画するような 見え味なのである。
ただ、その分だけ 自然な遠近感や奥行き感、
と言った、より自然な距離感の描写においては、
デルトリンテムやオーバーコッヘン等、
ヴィンテージツァイスの双眼鏡に 一歩譲るようだ。
誤解を恐れずに言えば、
王者 7×42BGA Dialyt の ポロ式 8×30 バージョン、
とも言えるような、一種 突き抜けた像かも知れない。
勿論、明るさも、コントラストも、全てに於いて、
王者には さすがに敵わないのだが、
この DIAGON 8×30 (後期型) に、
最も近い 見え味の双眼鏡はどれか!?
と 聞かれれば、デルトリンテムでも オーバーコッヘンでもなく、
王者 か FL 8×32 T* が近いように思うからである。
ただし、 FL 8×32 T* よりも、線が細く、繊細な描写だ。
8×30の ヴィンテージのポロ式双眼鏡で、
より明るく、より解像度が高く、より 抜けが良く、
着色感の無い双眼鏡を求めようとするならば、
この双眼鏡以外に、私は思い付かない。
ただし、この双眼鏡には 前期型 と 後期型 があり、
それぞれ、見え味は全く違う。
上記は、あくまでも 後期型 での感想である。
参考までに、デルトリンテムと画像で比較してみよう。
デルトリンテムよりも、更に 無骨で頑丈な造りだ。
接眼レンズへと伸びた 羽根の太さも、より太く、
それに伴って、上陣笠の経も大きい。
また、フォーカスリングの径も、2周り程 大きい。
これは、より 緻密で繊細な ピント合わせが可能、
と言う事と、それを可能にする為の 光学性能の高さを
証明しているように思う。
と言う事で、 幻のポロ双眼鏡の名機、
ヘンゾルトの DIAGON 8×30 後期型 を
本ブログで、初めて紹介させて頂いた。
VICTORY FL 8×32 T* が出たので、
この リトルジャイアントと呼ばれる、
小型 双眼鏡の名機の感想も書いておこう。
世間では、非常に評判の良い VICTORY FL 8×32 T* であるが、
この双眼鏡の見え味は、実は私は あまり好みではない。
像を形成する 線の描写 等は、例えば、
ヴィンテージツァイスの デルトリンテム リヒター や、
上記で紹介した双眼鏡に比べ、繊細ではなく、
どこか 単調な感じが否めないし、
スキッパー等とも 対極の存在で、芸術性や 演出性は皆無だ。
なので、景色を漠然と覗いていても、あまり楽しくは無い。
にも関わらず、持参する事が多いのは、
この双眼鏡が、コンパクトで軽く、防水である、と言った、
機動力が高い点が、最大の理由である。
また、まるで シャドー部を持ち上げたかのような、
木立の陰の部分まで、明るく見えてしまう、
このサイズの双眼鏡では、異例の明るさと、
( 逆に言えば、陰影感の表現には乏しい。)
対象物が こちらに一歩 近付いて見えるような、
クローズアップされる 独特の見え方の為、
何か決まった対象物を 「観察」 するには格好の、
非常に良い双眼鏡なのである。
ただし、一種の像の圧縮効果!?のようなものがあって、
( これは、最近のダハ式双眼鏡の多くに言える事である。 )
立体感や、奥行き感、自然な距離感 等が殆ど感じられず、
色彩的にも、あまりにも ニュートラル過ぎて、
どこか、一本調子で 単調過ぎて、味わいがなく、
漠然と、景色を鑑賞し、楽しむような使い方に於いては、
全く適さないと、私は感じている。
「自然さ」や 「面白み」 と言う点では、
今回持参した双眼鏡の中でも、
ワースト1 と言えるのだが、以上のように、
お手軽さ、便利さ、そして 光学性能的には、
ナンバー1 なのである。
つまりは、趣味性は殆ど感じられないが、
観察と言った目的の為の、実用性を考慮した時には、
総合的に、非常に優れた双眼鏡、と言うのが、
私の この双眼鏡の私見である。
最後に、おまけで、LEICA TRINOVID 8×42BN であるが、
LEICA の見え味は、CARL ZEISS とは方向が違うと感じる。
陰影感が非常に強く、光と陰の表現が、
ツァイスのそれとは、まるで違うのだ。
また、硬質なツァイスに対し、軟質なライカ、
と言った具合で、像の質感が柔らかく、優しい。
加えて、色彩の表現が美しく、
この ライカ トリノビッド や スキッパーを覗いていて、
双眼鏡には、
「観察に向く双眼鏡」 と 「鑑賞に向く双眼鏡」
の2つがあるように、あらためて感じた次第だ。
観察に向く と思える代表的な双眼鏡は、
私が持っている、或いは、
これまでに体験した 全ての双眼鏡の中では、
CARL ZEISS VICTORY FL 8×32 T* が最右翼で、
鑑賞に向く 双眼鏡の最右翼は、
CARL ZEISS Dialyt 6×42BGA T*P SKIPPER だ。
デルトリンテム や、ヘンゾルトの DIENSTGLAS 8×30
LEICA TRINOVID 8×42BN 、等も、鑑賞に向くタイプと感じる。
では、王者 7×42BGA T*P* ClassiC は!? と聞かれれば、
鑑賞にも、観察にも向く、そのバランスが絶妙な、
オールマイティー型、となるだろうか。
CARL ZEISS VICTORY HT 8×42 等も、
そこに含まれるかも知れない。
ただし、誤解していただきたく無いのは、
そして、注意すべき事なのは、
それでは、スキッパーは観察に向かないのか!?
と、短絡的に捉える事である。
勿論、観察にも向くのだが、それ以上に、
像の中の世界が美しく、
思わず鑑賞に浸ってしまう、と言う事なのだ。
つまりは、光学性能がどうの以上に、
「芸術点」 が高い のである。
オーディオなんかでも、全く 同様であろう。
周波数特性やダイナミックレンジ、高調波歪率 等、
スペック的には高性能で、ただただ、忠実に再生するタイプと、
マッキントッシュや真空管アンプ、往年のJBLのような、
スペック的には 低かったり、欠点はあったとしても、
また、決して、原音に忠実な再生では無くとも、
味わいや芸術性が高く、聞いていて、
無条件に楽しいと感じる 再生をするようなタイプ、
大きく分けると、2つに分かれるように思う。
双眼鏡も、やはり 同じ現象が起こるように感じるのである。
もっとも、ここに書き連ねた 全ての感想や意見は、
あくまでも 私の主観であり、私見である。
双眼鏡と一口に言っても、その楽しみ方は千差万別で、
人の数だけ、楽しみ方もあるだろう。
そして、その使い方によっては、
感想や印象も、全く異なったものとなるだろう。
そんな中で、自分にとって、最高の1台に巡り会える、
その 一端となれば、少しでも その参考になれば、
これほど幸いな事はないと感じている次第である。
では、2019年も、どうぞ 宜しくお願い申し上げます。
最後まで お読み頂き、ありがとうございました。
2019年1月1日
BLRM Y'z OPTICAL 代表 鈴木 庸生