「ゆりやん」「銀シャリ」クラスで1回5000円、吉本芸人のギャラ事情 | 茶漬けのソーダ水|記色

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デイリー新潮ダウン週刊新潮WEB取材班

藤本敏史も千秋も告白

 吉本興業のギャラが安いという話は、それこそ80年代からテレビで公然と語られてきた。特に近年は伝聞を伝えるという曖昧な内容ではなく、本人や妻といった当事者が赤裸々に真相を明かすことが増えているようだ。

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 最新のトピックで言えば、6月2日に「メレンゲの気持ち」(日本テレビ系)に藤本敏史(47)が出演。妻である木下優樹菜(30)に給与明細を見せたところ、最初は40本の出演履歴に喜んでいたのだが、実際の給与を見せたところ「なんでこんなに仕事をしているのに、こんな額なの!?」と落胆。藤本が「これで普通やで」と弁解すると、木下が藤本をぎゅっと抱きしめてくれたという。

 逆に藤本は15年12月に出演した「上沼・高田のクギズケ!」(読売テレビ系)では、妻の明細を見たことも語っている。そもそも予測していたので「見ないようにしていた」そうだが、ある時、ちらっと見ると案の定、強いショックを受けたという。上沼恵美子(63)が「どっこいどっこい」だと思っていたと告げると、「僕がそれぐらい稼ごうと思ったら、ルミネの劇場に800回ぐらい出なあかん」と自虐ネタにしたという一幕があった。

「ゆりやん」クラスでも…

 吉本が9割、芸人が1割という取り分もテレビで放送されており、13年12月に放送された「コレを言わずに年が越せるか!ぶっちゃけ告白TV! カミングアウト祭! 2013」(フジテレビ系列)では千秋(46)が元夫である遠藤章造(46)の給料明細を見て「本当に吉本ってギャラの9割を取るんだと思った」と述懐し、庄司智春(42)の妻である藤本美貴(33)も「本当にそう」と頷いた。

スギちゃんも産経新聞で暴露

 さらに続けよう。スギちゃん(44)は産経新聞の取材に応じ、2012年8月に企画連載の「吉本興業研究」に登場している。

 スギちゃんは高校卒業後、よしもとクリエイティブ・エージェンシー東海支社(名古屋吉本)所属として「フランクフルト」などのコンビを組むも、上京して浅井企画に移籍。現在はサンミュージックプロダクションに所属するという経歴を持つ。

 連載の中で、記者との一問一答が「【吉本興業研究】インタビュー編 スギちゃん ワンチャンスの厳しい会社」(産経新聞:大阪版夕刊8月31日)として掲載された。一部を引用しよう。

《――吉本を辞めた理由は

 「給料の安さが、もう嫌だったんです。芸人の取り分は1割、吉本が9割。ところが移籍した事務所はその逆で、芸人が9割、会社は1割だったんです。それに吉本にはめちゃくちゃな数の芸人がいるので、俺レベルでは(テレビに)出られないんですよ」

 ――吉本でもう一度やってみたい気はあるか

 「まったく思わないですね。芸人の数が多すぎですよ。実力はありながら、くすぶっている芸人も随分見てきましたから。かわいそうというか、怖いですよね。吉本って、ワンチャンスのような気がするんです。一回チャンスをもらって売れなかったら、見捨てられる気がします」》

吉本興業には「ブラック企業」的側面

 これで吉本の芸人はギャラのうち10%しかもらえないことが分かったが、では具体的な金額はどのようになっているのだろうか。民放キー局のプロデューサーが明かす。

「比較的、売れている若手、例えば、ゆりやんレトリィバァ(27)や、銀シャリ(鰻和博[34]/橋本直[37])、和牛(水田信二[38]/川西賢志郎[34])といったレベルですと、バラエティのロケ収録で、だいたい10万円です。1割の取り分は本当の話ですから、芸人側は1万円で、銀シャリや和牛だと2人で割るでしょうから5000円ということになります」

 もちろん、他の事務所は、桁違いに待遇はいい。

「例えば、ブルゾンちえみさん(27)が所属しているワタナベエンターテインメントでは、会社と芸人は折半が基本です。サンドウィッチマン(伊達みきお[43]/富澤たけし[44])が所属するグレープカンパニーはギャラの取り分だけでなく、事務所の雰囲気が良いことで知られています。吉本興業はギャラが安く、ブラック企業的な側面があるのは事実だと思います」(同・プロデューサー)

 これまでに様々なメディアが「吉本の給料は安い、労働環境は最悪だ」と報じてきた。しかし、ならば余計に疑問が募る。それほど待遇の悪い会社に、あれほどの芸人が所属している理由だ。スギちゃんのように他の会社に移籍してした例は、やはり非常に少ないだろう。

「昭和」の労働環境であるのは事実

「答えは簡単です。吉本は『R-1ぐらんぷり』など、芸人のコンクールを主催しています。他の芸人に対する賞の選考でも、桁違いの発言力を有しています。芸人として実力でトップに立ちたいと願う者ほど、吉本の政治力を必要とするのです。しかも、ギャラの安い吉本芸人は、必死で働きます。そして吉本は、いくらでも芸人に仕事を提供することができます。基本的には、たくさんの場数を踏んだほうが、芸は上達します。そういうところも、吉本芸人が吉本を見限ることのできない理由なのです」(同・プロデューサー)

 芸人の頂点を目指すためには、やはり吉本で働くしかない――こんな悲痛な決心で日々の仕事に邁進していくわけだが、やはり成功した者に吉本が優しいというのも事実のようだ。

「藤本敏史さんといった中堅クラスでも8対2、7対3です。小籔千豊さん(44)は吉本新喜劇の座長ですし、テレビのバラエティでも活躍しています。これぐらいのレベルで、やっと5対5の折半です。それより上の人となると、具体的な人名は割愛しますが、それこそ吉本に所属しながら個人事務所の設立を認めるなど、様々な配慮を行います」(同・プロデューサー)

 上には篤く、下には厳しい。完成された弱肉強食のシステムが、今後の芸人志望者にはどのように映るのか。冒頭に記した藤本敏史の告白は、昭和の時代ならあり得ないだろう。箝口令を敷かれなくても、自動的に発言は慎まれていた。徐々にではあるが、何らかの変化が起きている予感を覚える。

 お笑い芸人の世界でも「働き方改革」が叫ばれる日が来るのだろうか。今後に要注目だろう。

週刊新潮WEB取材班