米国政府は、拡散したサブプライムローン問題を解決するために、資本を投入しようとしている。しかし、単なる資本調達では間に合わないのは目に見 えている。もともとサブプライム問題は30兆円程度のもの。だから世界中の人が協力して、押さえ込むこともできる規模だったのだ。しかし混合されて販売さ れた債券の総額が300兆円となると、とてもそんなことはできない。


 この解決策としてわたしの頭をよぎったのは、1990年代はじめにスウェーデンが金融危機を乗り切った手法だ。

 当時、英国のポンド危機を発端に北欧全体が金融危機に陥った。スウェーデンの場合には商業用不動産ビルの価格が暴落し、融資をしていた銀行が流動 性危機に陥った。スウェーデン政府は銀行の駆け込み先としてエマージェンシールーム(緊急看護室)を用意した。銀行に「おかしい、やばいと思った銀行は自 ら名乗り出なさい。エマージェンシールームで保護するから」と言ったのだ。そして名乗り出た銀行には、政府が無限の保証をしたのである。こうして流動性危 機がパニックを誘発しないようにした。全国に11あった銀行のうち第4位のハンデルスバンクを除いて全ての銀行が駆け込む、という惨たんたる状況であっ た。


 次にスウェーデン政府は流動性を確保した上で各銀行の債権、債務を一つずつ解体して、全部整理したのだ。こうして銀行を一つずつ健全化していき、 元気になったところからエマージェンシールームの外に送り出していった。90年代の後半にはこの緊急装置そのものも撤去している。

 北欧がその後競争力を回復し、世界経済の時流に乗れたことはこうした徹底的な「膿出し」があったからである。