寝苦しい夜に涼しい話(3) | この国のタブー

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 続編ですので、前回の投稿はこちらをご覧ください。
 →寝苦しい夜に涼しい話(1)
 →寝苦しい夜に涼しい話(2)



タブーと全然関係なさ過ぎて、何だか少し罪悪感が湧いてきます。ということで最終回です。でも折角なので、地元神奈川の心霊スポットにまつわる逸話でも。



【首都圏最後の巨大ダムは自殺の名所】

高校2年の夏の話。当時、高校の課題の一環として、建設省のある出先機関での研修に参加していました。単位制のインターンシップと考えて頂ければわかり易いと思います。そこでの実務の中で、建設中の宮ケ瀬湖を見に行く機会がありました。と言ってもまだ、ダム建設中でしたから水はありませんでしたが。

「宮ケ瀬湖」は、ダムによって堰き止められた人造湖です。今でこそ、四季を通して有名な観光地にもなりましたが、当時は年々活発化する環境保護運動によって、ダム建設が困難になり始めた時代でした。そんな中で建設された宮ケ瀬ダムは、首都圏最後の巨大ダムとも言われました。
 参考:(財)宮ケ瀬ダム周辺振興財団

ダムを作ると、将来の湖面の高さより下にあるものは、家も道路も学校も病院も寺も墓も、郵便ポストから信号機まで全て沈みます。だからダム建設事業では、最初に将来の湖面よりも高い山の中腹に、湖を囲むような道路を建設し、周辺用地を整備して住居や施設の移転を行います。また同時に、湖を渡るための橋梁も掛けます。

宮ケ瀬湖には2本の橋梁が掛かっているのですが、橋が作られた時点で湖は当然空っぽです。道路から地面(将来の湖底)までは、実に100m以上の高さがありました。これだけの高さになると、落下防止措置を厳重にしなければなりませんが、自殺だけは防ぎきれません。当時、関係職員からオフレコで聞いた話によれば、片方の「虹の大橋」だけで10年間の自殺件数がなんと40数人。凄まじい数字です。
ただ、これは4年後のダム完成式典を終えるまでは公にできないので、メディアと警察の協定によって伏せられているとのことでした。私自身、今になったから書ける話です。



【橋の中央部で多発する事故】

自殺者はともかく、この橋では不可解な交通事故も絶えません。400mくらいは完全な直線道路なので、車は80km/hくらいで走っていきます。山間部地域なので走り屋も多く、夜になると更に速度が増します。でも、橋の中央部に行くととても異質な光景が広がっています。

欄干部のガードレールと自殺防止用フェンスは、ボコボコに凹んでいます。また歩道の縁石には、明らかに車が擦りえぐったと思われる跡。つまり、車が歩道へ乗り越えたことを示しています。そして、そこで起こった出来事を象徴するかのように供えられた生花。

一般に橋の中央部は横風が強い場所です。しかしここは、谷間から風が吹き込むような地形でもなければ、湖面には遮る障害物はありません。強風が吹けば、400mの直線のほとんどの区間で同様に強風なはずです。でも、交通事故は橋の中央部で集中的に多発しているようです。不思議ですね。

昔、ここをバイクで走っていて、中央部でハンドルを取られたという友人の話を聞いたことがありますが、私自身は何度通ってもそういう感覚はありませんでした。でも異様な場所です。自殺との因果関係など証明できるはずもありませんが、どうしても考えてしまいますね。



【滝から岩が降ってくる】

さてもうひとつ。次は、高校1年の夏の話。当時はまだ灼熱の太陽に負けない若さがありましたが、その若さを持て余し、生涯で一番グータラした夏休みでもありました。勉強しない。部活もやらない。これと言って能動的な行動を一切起こさず、ダラダラ、ダラダラとした毎日。暑い日中はクーラーに引きこもり、夜な夜なあちらこちらへと出かけて行っては群れ、朝帰りを繰り返していました。


「洒水の滝いこうぜ。」

神奈川県西部の山北町に、全国名水百選にも選ばれている「洒水の滝(しゃすいのたき)」があります。特に心霊スポットではありませんが、近しい仲間内では、涼しくて怖い、夏には最高のスポットとして少し有名でした。恐らくは流れ落ちる水のせいだと思いますが、滝の周辺1km内くらいはとても涼しいんです。
その夜も蒸し暑く、深夜3時を回った頃、ある友人のひとりが滝へ行こうと言い出したのです。4人で原付2台に2人乗り。アホなことばっかりやっている頃でした。

洒水の滝は宗教的にも意味がある場所だそうで、鎌倉時代の真言宗の僧侶「文覚上人」が滝行を行ったとされ、滝壺の横には岩壁をくり抜いた穴に不動明王が祭られています。
 参考:山北町webサイト「洒水の滝」

当時はちょうど、滝壺周辺の落石防止工事が行われていましたが、観光客向けに組まれた仮設足場を通って、さらに立ち入り禁止の作業用足場を通れば、こっそり滝壺近くまで行くことが出来ました。しかし真夜中ですし森の谷間ですから、明かりは一切なし。仕方なく、観光用道路の先端に停めた原付2台のエンジンを掛けたままにし、ヘッドライトが照らす薄暗い足元を進むことにしました。


滝壺へ向かってしばらく進むと、突然。後方を歩く友人のひとりから叫び声が聞こえました。

「やべえ!やっちまった!どうしよう!やべえ!」

何だ、どうしたんだと滝壺に背を向ける形で彼を振り返ったその瞬間です背後にある。滝の上流から轟音が響いてきました。

ゴツ、ゴリ、ドン!ドン、ドン、ドタン!
ガラン!ガラガラ!ガラッ!ドオオオオオン!!!!

「!!!!?」

驚きました。振り返ると滝壺に、ワンボックスカーより更に大きな巨岩が落ちてきたのです。ゆうに10tはありそうな大岩が、作業用足場の先に落下し、破片と水しぶきが飛び散りました。もう少し先へ進んでいれば、私もタダでは済まなかったでしょう。
もう一同、放心状態。そこにさらに追い打ちを掛けるように、直後、原付の1台がエンストし停止。辺りが急激に暗くなっていきます。

「え!?マズい!なんかヤバいから逃げろ!急げ!!!」

来た道を急いで戻ろうとした矢先、原付のもう1台も続いてエンスト。

「ギャアアア!!!!マジカアアアアア!」

真っ暗です。頭はパニックになりそうでしたが、真っ暗過ぎて足元も見えませんから、走り出す事すらできません。つま先で探るようにしてなんとか必死に原付まで辿り着き、私達は一目散に滝から逃げ出しました。



【お不動さんは怖い】

やっとの思いで戻ってきた麓に原付を停め、私達は最初に叫んだ友人に何があったのかを聞きました。

「歩いてたら、何かにつまずいてさ。んで振り返ったら俺、盛り塩を蹴っ飛ばしちゃったらしい・・・。で、マズイなって振り向いた時、え?って思って横を見たら、岩壁をくり貫いた穴の中に、仏像があったんだよ。俺、仏像の盛り塩を蹴っちゃってパニクったんだよ。」

「オイオイ!何考えてんだよ!滅茶苦茶怖かったぞ!」

「でもさ、あの岩にぶつかってたら俺達、絶対死んでたぜ・・・。」


いや、これには参りました。ここに祭られているのが不動明王だということは、ずっと後になって知ったことですが、当時はそれだけの頭もありませんでした。
不動明王は、その表情にいつも憤怒を浮かべています。右手には大日如来を象徴する剣、左手には獲物を捕えるための縄を持ち、いつも炎を背負っています。これは煩悩や欲に駆られた人々を叱り、言い聞かせてもどうしようもない人を力で教え導いていく存在だからだそうです。
なんて事を知ってしまうと、まさに自分達もそうだったなと、今となっては反省するしかありません。
 参考:成田山新勝寺「成田山のお不動さまとは」

宗教的奇跡を信じるつもりは無いのですが、それでもお不動さんはやっぱり怖かった。この時以降、洒水の滝を訪れたことはありません。しかしとても美しい場所で、夏は特に気持ちが良いので、またいずれ子供でも連れて行ってみたいと思います。



またついつい話が長くなり、気付けば全3回も記事を書いてしまいました。でも、本当にオカルト体験をしてみたいのですが、どうしても体験できないんです。どうしてですかね。

最後に余談ですが、つい先日、こんなことがありました。
妻の高校時代の同級生の親戚が、霊能者だか霊媒師だか拝み屋さんなのだそうで、妻がその人と電話で会話する機会があったのだそうです。「無料だったから」乗ったそうですが、1時間の会話の後に「あなたは素質があるから私のところで修業しない?」と誘われたという、ご丁寧なオチ付き。そして私については、こう言ったそうです。

「旦那さんはね、霊感ゼロ。どんな悪霊が居ても気付かないから、害も受けないよ。つまり世話要らずね。」

って大きなお世話ですよ・・・。そんなことよりお願いだから、偽物じゃない霊能者に会わせて下さい。(おい)


今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。なお、次回からはタブーに本線復帰しますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。



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