→宗教はタブー
→宗教観と国際化
→神仏習合の寛容さ
統合失調症に関する前回記事が大作過ぎてしまったせいか、やや燃え尽きシンドロームです。書きかけのネタは沢山あるのですが、それを完成させるだけのパワーがなかなか湧いてきません。読者登録もいただいて嬉しい限りですが、ひとまず充電中というところです。
さて、過去記事を読み直していて、これはちょっと問題だなと気付いた件を短めに書きます。宗教は誰もが語るべきです。と言っているにもかかわらず、「『文明の衝突』が規定した世界史」などと、読んでない方には全く意味不明なことを書いてしまいました。メチャクチャな論理ですね。反省します。
ということで、今回はこの本をご紹介します。大学生当時の笈川博一先生による「宗教学」講義内容を思い出しつつ、というか丸パクリなのですがご勘弁ください。
文明の衝突/集英社

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本書は、アメリカ国際政治学の世界的権威であるサミュエル・ハンチントンが96年に出版したものです。やがて世界的ベストセラーにもなるのですが、これが書かれ売れた背景には、2つの大きな歴史的系譜がありました。
東西冷戦時代、世界は民主主義と社会主義に二分されていました。東西どちらの側に付くかは、国家が決断することです。その思惑は安全保障のみならず、経済や歴史など国によって様々でしたが、これをイデオロギーの対立と呼びました。
しかし91年、東側の中心であったソ連が崩壊します。これは社会主義の敗北であり、世界は民主主義へと歩み始めます。翌92年には、アメリカ政治経済学者のフランシス・フクヤマによって『歴史の終わり』という本が主版されています。
歴史の終わり〈上〉/三笠書房

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それまで世界を規定した対立軸が消え去ってしまえば、世界のイデオロギーはいずれひとつに収斂されていく。つまり本書が示した仮説は、世界はやがて国家の枠を消し去ってひとつになり、平和へ向かって進むということです。もし仮に、真に平和な世界を達成してしまえば、人類にとって歴史はあまり意味を成しません。本書のタイトルにはそういう意味が込められています。
参考:Wikipedia記事「イデオロギー」
しかし、実際にはいつまで待っても世界は平和になりませんでした。91年の湾岸戦争以降も、ユーゴ紛争、ソマリア内戦、チェチェン紛争と続き、世界各地で戦争は続きます。
他方で、もうひとつ別の潮流がありました。それは科学です。
歴史上、人類が共通の価値観を持ったことはありません。しかし、科学技術の発達は、それまでバラバラだった人類の価値観をひとつにします。「科学」という新しい価値を持った新宗教による世界統一。と言っても良いかも知れません。
しかしここで、面白いことが起こり始めます。ノーベル賞受賞者を含む世界的科学者の一部が、一度は捨てたはずの神への信仰を取り戻し始めたのです。神の存在を認めるということは、究極的には科学の死を意味します。立証できないものを信じる人は、もはや科学者ではないからです。
科学者たちが神を再び信じるようになった原因は、ビッグバン理論です。
宇宙はかつて小さなひとつの点だった。それが爆発し膨張し続けている過程が現在の宇宙である。というのがこの理論です。アインシュタインやハッブルなど、多くの科学者によって研究と実証が積み重ねられました。
しかし皮肉なことに、このビッグバン理論は旧約聖書に描かれた創世記の、天地創造の様子にそっくりでした。「なぜ神はビッグバンを知っていたのか?」という難問。それが科学者たちを困惑させたのです。
参考:Wikipedia記事「ビッグバン」
つまり、フランシス・フクヤマが言ったような歴史の終わりは訪れませんでした。科学は世界を統一するどころか、価値観をもっと複雑に、バラバラにしてしまいました。『文明の衝突』は、そんな中で生まれた本です。本書を、2001年アメリカ同時多発テロ事件を予見したという人もいますが、確かに同感です。
では、どんなことが書かれているか。最後に、私なりの要約を記します。
「世界は文明によって規定される時代を迎えた。東西冷戦時代の国家によって規定されたアイデンティティーはもう通用しない。文明とは、宗教、言語、歴史、文化などによって形作られ、異なる文明が接している場所=境界線で戦争は起こる。とりわけ重要なのは宗教である。」
「世界は7つまたは8つの文明によって色分けられる。それは、中華、ヒンドゥー、イスラム、日本、東方正教会、西欧、ラテンアメリカ、アフリカである。とりわけ、西欧文明とイスラム文明の対立は特に深刻である。」
今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。
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