烏小路往還記

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葬場祭詞


 葬場祭のメインとなる祭詞です。下記9、10の間に故人のお人柄や経歴などを入れ、顕彰致します。
 すべてさうですが、この祭詞も一時的なもの、不定形で、実際に使用するときにはこれをもとに、もう一度作文して決定稿とします。5など、春のこの時期にはともかく、他の季節でヒバリがあがるのは当然おかしいので。


 今回葬場祭詞を調べてゐて、葬儀社のいくつかが神社本庁の例文を載せてゐたのを見つけました。お経からの類推で、その例文が毎度奏上されてゐると勘違ひされるのを恐れます。祝詞(ここでは祭詞)は基本的にその都度、神職個々人で作文して奏上するものです。


また、実際には宣命書にしますが、ここでは略します。【意訳】は大体のところと、ご承知おきいただければ幸ひです。


【書き下し文】


1.哀しきかなや、今し何某命の御名をば唱へ奉るは。
2.唱へ奉らくもおほけなき身にはあれど、
3.斎主、汝が命の御霊の御前に白さくを、しましがほど聞き給へかし。
4.けふもまたこの現世はうたたざはめき、山並たたなはりて、潮は巌を噛めり。
5.のどけくも雲雀鳴きつつ空高うのぼり、かぐはしき野の花々に、蜂飛び渡れり。
6.かくの状、なべてこともなきに似たれど、ただ汝命のみ、おはしまさず。
7.み声だに聞かせてしがな、語らひ交はす由もがなと、せちに思へど、
8.静かなる境に行き給ひて、今や鎮まり坐すらむ、
9.いらへ給はずておはしけり。寂しゑ、悔しゑと言はむもなかなかに愚かなり。
10.故、御食御酒を始めて心尽くしの御饗物に至るまで種種に設け供へて、御祭仕へ奉るを聞し食さむや。
11.親族家族は白すも更なり、知己朋友に至るまで鶉なす並み居、謝び奉り慕ひ奉る思ひのまにま、
12.八十玉串に白露の涙を添へて捧げ奉り、汝命の安らけく坐さむことを祈み奉るを頬笑み受け給はむや。
13.もし諾ひ給はば、是の某家を永遠に守り恵み幸へ給へ。
14.乞ひ願はくは、この処よりは清き明き所に出で坐して、御魂の穏に鎮まり坐さむことを。
15.いでさらば、何某命。目路はるけき幽世の道をば、幸く真幸く出で立ち坐さむことを。
16.いでさらば、何某命。うつろひし、さまざまの思ひ、哀しきかなや。
17.何某命や、はるけきかなや。


【意訳】

1.哀しいことです、今○○命のお名前をお唱え申し上げるのは。
2.お唱え申し上げるのも恐れ多い身ではございますが、
3.斎主があなたのみたまのみ前にて申し上げることを、しばらくの間、お聞きくださいよ。
4.今日もまたこの世はいっそう騒がしく、山並は重なりあってつづいており、波が岩に打ちつけています。
5.のどかにもヒバリが鳴きながら空高くあがり、いい匂いのする野の花には蜂が飛びまわっています。
6.このような様子は、すべて何事もないように見えますが、ただあなただけが、いらっしゃいません。
7.お声だけでも聞かせてほしい、話をする手だてがほしいと切に望みますが、
8.静かな境に行かれて、今はお鎮まりになっているのでしょうか、
9.お返事なさらないでいらっしゃる。寂しい、悔しいと言うのもかえって言葉を尽くしません。
10.そこで、お食事、お酒を初めとして心づくしの食べ物まで色々と準備してお供えし、お祭り申し上げるのをお聞き届けくださいませんか。
11.親族や家族は言うまでもなく、知人友人に至るまでウズラのように並んで、感謝致したり、お慕い申し上げる思いのまま、
12.たくさんの玉串に白露にも似た涙を添えて捧げ申し上げ、あなたが安らかでいらっしゃるようお祈り申し上げるのを、微笑んでお受けくださいませんか。
13.もしお受けくださるのなら、この○○家を永遠にお守りくださり、お恵み、幸いあらせください。
14.お願い申し上げますのは、この場所から清らかで明るい場所へおいでになり、みたまが穏やかにお鎮まりになること。
15.ではさようなら、○○命。見渡す限り遙かなあの世の道へと、安全に出立なさいますように。
16.ではさようなら、○○命。今はうつろってしまった様々な思いは、哀しいことですけれども。
17.○○命は、遙かな場所へと行ってしまうのですね。