カーテンを開けると
ざあざあ降りの雨だった。




へたる気持ちを抑え
両手で傘を握りしめながら駅へ。




そういえば前夜

明日は雨が降るから気をつけてね

と夫が言っていたような気がする。




気をつけるも何も
傘があれば無敵だわい




と、鼻白んでいたものの




その無敵アイテムを電車へ忘れ
ずぶ濡れで会社へ行くことになった。




会社へ着いた途端
夫の気をつけてね
走馬灯のように駆け巡った。





冷蔵庫を開けると
中がすっからかんだった。




かろうじて
ひき肉、じゃがいも、人参があったので
カレーを作ることにした。




帰宅途中の夫から
今日の夕飯は何ですか?
とメールが着たので




今日カレーだよの文面に
「ごめん」と「タージ・マハル」の絵文字を添えて送った。




すると

まる子のカレーは美味しいから大丈夫

と、仏のような返事が返ってきた。




そして
その仏が帰宅したので
意気揚々とカレーを出した。

 


するといきなり
ん?の顔をされた。




しまいには
匂いを嗅ぎながら
これ本当にカレー?と聞かれた。




おい、仏。




いくら仏でも
カレーに向かって
本当にカレー?はないんじゃないの? 



と、少しムッとしていると
まる子も嗅いでごらんと言われた。




お皿に鼻を近づけてみると

恐ろしいくらい
スパイスの香りがしなかった。
そういえばいつものカレーより
どす黒い気がする。

 


はて、私は何を作ったのでしょうか。
(しらんがな)




慌ててゴミ箱をあさり
カレーのパッケージを見ると
「こくまろ」と書いてあった。




うーん
間違いなくカレーのルーだ。




そのことを仏へ報告すると
パッケージを見せてみいと手招きされた。




ははあと差し出すと
仏が瓶底眼鏡を光らせながらこう言った。









こくまろハヤシ








て、書いてあるよ。




なーにー




見せてみいと
パッケージをぶん取ると
控えめに、だけどしっかりと
ハヤシと書いてあった。




あれ?


三矢といえばサイダー


みつかんといえばポン酢


お〜い!といえばお茶


じゃあ、こくまろといえば?



カレーカレー!!!!!






ではないんですねー。\(^o^)/ 

 



あとから調べたら

ハヤシもシチューもありました。(ぶべべ)

 


こんなふうに
固定観念に毒された私は  

よく確認もせず
こくまろハヤシで
カレー作っていたのだ。




ずーん。




いや、さすがの私も
箱を見ればハヤシって気づくからね。
今回は半量使っていたので
中のパッケージがむきだしだったの。




ほれ、こんな状態。

(の前にぶれすぎ問題)



これじゃあ見間違えるよね?

(見えないって)
おっちょこちょいは見間違えるよね?

(だから見えないって)
よね?よね?よねすけよね?

(ビバ)(隣の晩ごはん)



その日は

他に食べるものがなかったので
夫と並んでハヤシ味のカレーを

いや、カレーになりたかったハヤシを
いや、カレーに恋したハヤシを食べた。
(んだそれ)




鼻からハヤシの香りが抜けた瞬間
まる子のカレーは美味しい

走馬灯のように駆け巡った。(ごめんすぎる)




それにしても
カレーになり損ねたハヤシは不味い。

不味いというか色々と満たされなかった。




今日も何かを取りこぼすたび
私のあちらこちらで
夫の言葉がかけめぐっている。




落ち着け、自分。
大丈夫だ、自分。

  


だって今日は
こくまろカレーを買ったじゃないか。


でーん。

(またカレー)(とか言わなーい)(でー)