「相続税って、全国どこでも同じように計算されるんですよね?」

そう思っている方は多いのではないでしょうか。

こんにちは。
FPふたむらたけしです。


実はこの“全国共通”と思われている制度にも、地域によって“受けられる恩恵に差が出る”しくみがあるのをご存じでしょうか?
 

その代表例が「小規模宅地等の特例」。

地価の高い都市部ほど恩恵が大きくなる――そんな“静かな地域格差”が生まれているのです。
 

「土地と制度シリーズ ─ これからの“土地のリアル”を一緒に考える(全6回)」の第3回は、この制度の背景と実際の影響について、わかりやすく整理してみたいと思います。


大都市のまちづくりと地方都市のまちづくりを対比。地価が高い大都市では不動産投資や相続税の節税目的のアパート建設が盛んで人も集まり、一方で地価が低い地方都市では相続税の節税効果の低さや人口減少のためまちづくりが思うように進まない現実がある

 


💭 小規模宅地等の特例とは?

相続した土地のうち、亡くなられた方が「自宅」や「仕事で使っていた土地」など、生活や事業に関係する土地については──


👉 一定の面積までは、相続税の評価額を大きく減らすことができる制度です。


 

区分 減額割合  上限面積
特定居住用宅地等   80%減      330㎡

特定事業用宅地等

80%減
   
     400㎡
貸付事業用宅地等 50%減    
     200㎡
 

たとえば──

「自宅」として使用していた土地(200㎡)の評価額が3,000万円だとしたら、特例を使えば 600万円(=3,000万円×20%) として計算できます。


評価額がかなり大きく減りますね。

 


📅 この制度が平成27年から利用しやすくなった

平成26年の税制改正(平成27年1月1日以後の相続から適用)により、相続税の仕組みが大きく見直されました。

ざっくり言うと、

「課税対象を広げる一方で、生活に必要な土地は守ろう」


という方向に変わりました。

  • 基礎控除が下がり、相続税がかかる対象者が全国で約1.5倍に。
     

  • その一方で、「小規模宅地等の特例」の適用要件が変更され、利用しやすくなりました。

 

 改正前  
居住用宅地の上限:240㎡  
貸付事業用宅地等:明確な規定なし  
複数区分の併用:原則不可  

          

       改正後
居住用宅地の上限:330㎡に拡大(+90㎡)  
貸付事業用宅地等:50%減・上限200㎡と制度化  
複数区分の併用:併用可能(居住用330㎡+事業用400㎡=最大730㎡)  



このように、居住用宅地の面積上限が拡大され、事業用宅地との併用が可能になりました。

 

また、「貸付事業用宅地等(アパート・賃貸マンション敷地や貸駐車場など)」の適用ルールが整い、賃貸事業を一定の規模や継続性をもって行っていれば、特例の対象となるようになりました。
 


🏙️ “制度は同じなのに効果が違う” ── 地価による静かな地域格差

「小規模宅地等の特例」は制度そのものは全国共通ですが、地価が高い地域ほど減額効果が大きくなるという特徴があります。
 

たとえば──
 

土地の種類 評価額 面積 減額割合 減額金額
都市部の「居住用宅地等」 100万円/㎡ 330㎡       80% 2億6,400万円

郊外の「居住用宅地等」
 
  10万円/㎡
   
330㎡

80%

2,640万円

都市部の「貸付事業用宅地等」

100万円/㎡

200㎡

50% 

1億円

郊外の「貸付事業用宅地等」
  10万円/㎡ 200㎡ 50%  1,000万円


 

同じ「80%減額」「50%減額」でも、

地価が10倍違えば、減額効果も10倍になります。

 

つまり、制度は同じなのに、

地価が高い地域ほど“得をする”仕組みになっているんです。

 

私はこれを「静かな地域格差」と呼んでいます。

この特例は、本来は“生活や事業を継続するための土地”を保護する目的で設けられたものですが、結果的に地価の高い地域ほど減額効果が大きくなる傾向があります。
 


🏢 都市部では「貸付事業用宅地等」を活かした節税が急増

平成27年以降、「相続税の節税型アパート建築」が一気に広がりました。

また、都市部では東京を中心に「相続税の節税型不動産投資」商品が作られました。

「相続税対策にアパートを建てましょう」

「貸付事業用宅地の特例を使えるようにするとお得です」


──そんな提案を受けた方も多いのではないでしょうか。
 


ただ、地価が低い地方や郊外では、減額金額が小さく節税効果で得するよりも収支リスクが大きいケースが少なくありません。

全国共通の制度でありながら、恩恵を受けられるのが都市部の不動産に偏る構造となったのです。

 


⚖️ その後の流れ

こうした“節税目的のアパート建築”が増えたことで、令和3年(2021年)の改正では、「亡くなる直前に建てたアパート」などには特例が使えないように見直されました。


いまは、「相続の直前3年以内に新しく始めた貸付事業」は対象外となっています。


つまり、制度は今でも使えるけれど、“駆け込みの節税目的”は特例の適用不可になりました。

このように、小規模宅地の特例に限らず、小さな改正が時折り行われますので要注意です。

 

 


🪴 FPふたむらたけしの視点

平成27年改正は、「相続税の課税対象を広げつつ、都市部がより恩恵を受ける結果になった」改正でもありました。
 

つまり、

「地方の土地を持つ人には恩恵が少なく、都市部の土地を持つ人には恩恵が大きい」

という仕組みが生まれてしまったのです。


私は、この特例の仕組みが、結果的に東京など都市部での不動産需要を高める一因になった可能性があると考えています。

そのため、この特例利用における不公平を解消することが「東京一極集中」の是正や、「地方創生」の進展へも影響するのではと考えています。

 

先にも述べましたが、制度の乱用を防ぐための小さな改正が時々行われていますので、最新の情報でもってあなたやご家族にとって最善の対策を考えるようにしましょう。
 


🌸 さいごに

私は中立な立場のファイナンシャルプランナーとして、「制度の仕組み」と「土地の現実」を両方から整理するお手伝いをしています。
 

・提案された不動産活用は、自分たちにとって本当に良いのか?

・家族でどう話し合えばよいのか?

・相続した不動産をこれからどうしていけばよいのか?


──そんな疑問をやさしく整理し、“お互いが安心できる相続”を理念に、一緒に考えていきます。

 


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資産と家族の“これから”を一緒に考える。
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🏡 ファイナンシャルプランナー 

ふたむらたけし事務所

 

二村 猛(ふたむら たけし)
CFP®/1級FP技能士/宅地建物取引士


👉 公式ホームページ
https://futamura-takeshi-office.com
 


※本稿は、平成27年(2015年)施行の相続税・贈与税改正法に基づき作成しています。
制度の適用や判断は時期や個別の状況により異なる場合があります。
具体的な相続税対策を行う際は、税理士などへご相談ください。


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