「ばね指」治療記 その4 | バルーン・ショップの日々

バルーン・ショップの日々

日本ではまだ珍しい存在の風船専門店。

その日々の格闘の様子や、バルーン・デコレーションの現場風景をお届けします。

いよいよ手術当日の朝がきました。

 

来院予約は12時です。当日の朝食は軽く、昼食はNGでしたのでサンドイッチを少し食べてのんびり病院へ向かいます。

12時に来てくださいというのは、午前中は外来で忙しいためですね。

でも11時頃には受付してしまいました。

 
名前を呼ばれ、場所を変えてコロナのPCRです。
鼻の奥に棒を入れられ結構痛いですね。
この一日の中であれが一番痛かったかも(笑)。
 
検査結果が出るまで1時間位。
陰性結果と13時30分に手術室に入る旨を伝えられます。
あの若い先生が確認のために指の引っ掛かり具合と指の間違いがないかをもう一度チェックし、マジックで印をつけられました。
 
前室で術着に着替えます。
腕の根本まで消毒するのでTシャツも脱ぎ、ズボンも脱ぎました。
身に着けている装飾品はコンタクトレンズも含めてすべて外すよう指示されます。カツラ、入歯(外せる)もダメだそうです。
 
部屋の空気感が変わってきました。緊張感が伝わってきます。
 
ドラマで見るように扉は手は触れずに足でスイッチを踏んで開けます。奥に向かって観音開きに開いていきます。
 
イタッ!
 
向こう側にいた看護師さんが、突然開いた扉にぶつかりました。
 
「ごめ~ん!気が付かなかった~大丈夫~?」
「いいのいいの、あたしがボーとしてたから~」
 
コントかよ。
 
奥に手術台が見えます。例の丸いライトがいっぱい付いた、大きな丸いライトがその上にあります。
その前であの若い先生が迎えてくれました。
 
(帰っていいですか・・・)
 
そう思ったとき、隣に手術用の拡大鏡のようなメガネみたいなのをつけているもう一人の先生が見えました。
手術は成功したような気分になりました。
 
診察台に寝て左手を台の上に出し、血圧計や心電図計などがつけられていきます。
右手に点滴用の針が刺されます。
念のために足と身体を軽く固定され、左手と顔の間にシーツで間仕切りが入ります。
 
「まな板の鯉」が完成しました。
 
拡大鏡の先生が僕に尋ねます。
「お名前と生年月日は?」
「今日手術するのはどの指?」
・・・
医療ミスを防ぐための確認をされ、室内にいる4名の医師看護師の準備が整っている事も確認されました。
 
「では始めます」
 
13時40分。
壁の時計が見えます。
 
「局所麻酔を入れますね」
手のひらに注射針が刺さる感触があります。ちょっとだけ痛いかな?でも大丈夫。
と、そのまま針がどんどん奥深く入ってき、更にグリグリこねられているような感覚がありちょっとビビリます。
 
見えてないし分からないのですが、本当に針が奥まで(術部)まで入ってきたのか、中の麻酔薬が注入されていく感触なのかどちらかだろうと思っていました。
 
痛みとしてはそれほど強くありません。
直後、その周辺が「ぼわっ」と膨らんでいくような感覚に襲われます。
本当に手が風船のように膨らんでいる感じです。
 
「今、つまんでいるのがわかりますか?痛みはどうですか?」
 
「つままれているのは分かります。でも痛くはないです」
 
「ではこれから切開します。もしも痛みがあれば麻酔は追加できますから言ってくださいね」
 
それから手をいじられているのは分かりましたが、痛みはありません。
拡大鏡の先生は指導医なのでしょうか、若い先生に説明しながら進んでいきます。
「ここが何番でここはこうで、ああでこうで・・・」
若い先生が術部を食い入るように見つめ吸収しようとしている感じが、その受け答えからなんとなく伝わってきました。
僕の手が経験値のひとつになってくれたらと思いましたね。なんか感動してました(笑)。
 
壁の時計は14時10分。
 
ほぼ予定通りの時間で、医師から声がかかりました。
 
「指、動かしてみて。もうひっかからないハズだけど」
 
あいかわらず手は風船なんですよね。「はい、握って」と言われても開いているのか握っているのか全然わからない!
自分の手とは思えない不思議な感覚。
すると先生は僕の肘を曲げて指先が見える位置まで上げ、自分で見ながら指を動かしてみてとおっしゃいます。
 
しかし今切られたばかりの腱を動かすのが怖く、大丈夫ですか?と尋ねると「大丈夫。握ってみて」
 
あ、動いてる。あ、握ってる・・
 
手の感覚ではわからず、見えるから自分が手を動かしているのがわかるという変な感じ。引っかかりはありません。
 
「大丈夫だね。じゃあ縫合するよ」
 
※指を動かすのと縫合は、もしかすると逆かも知れません。記憶があいまいになってます。すいません。
 
縫合が終わり、身体から心電図が外され点滴針が抜かれ、目の前の仕切りが取られます。
 
「指を使えるようになるのは何日くらいですか?」
僕の問いかけに若い先生が答えます。
「抜糸してからですね」
 
すると指導医が、
「〇〇先生は、指に力がかかるような使い方をおっしゃっているので、ゆっくり曲げたり伸ばしたりは今日から少しずつやっていきましょう。はい、伸ばして、握って」
 
「第二関節に痛みがでますが、これは動かしているうちになくなります。できるだけ動かして慣らしてください」
 
入浴など当面の注意事項を説明される中で、「ペットは飼われてますか?」と聞かれました。
 
それはもう、誰もが可愛いと言いたくなるようなヨークシャーテリアがウチにはいるんですよ!
 
なんて言う訳はございません。
 
「ばい菌が入るのが一番怖いので、もしも可能であれば少しの間だけ、ワンちゃんと離れたほうがいいかもしれませんね」
 
まあ、そうですよね。
犬が咥えたオモチャなどはそうとうばい菌が繁殖しているでしょう。
数日の間は実家に戻ることにしました。

手術室を後にして会計へ向かいます。
 
まだ指先まで麻酔が残っていて、右手で触ると人の指を触っているような変な感じでしたが、痛みはありません。
 
そして懐が痛みそうな会計です。
手術室に入るより緊張しています。麻酔が欲しくなりました。
 
財布の中には3万円を入れてきましたが、足りなければカードで払うつもりです。
 
精算の順番がきました。
機械に診察券を入れると診療費が画面に表示される仕組みです。
 
¥6.800
 
目をこらして桁を確認し直しましたが間違えていません。
 
「こんなに安いの!!」
 
少し大きな声で叫んでいたら、きっと病院から感謝された事でしょう。
 
包帯で巻かれた左手の中指を軽く動かしてみます。
まだ麻酔が残っていて自分の手ではないみたい。
でも、自分の手が帰ってきたのかな。
 
痛み止めは痛みがなければ飲まなくてもいいけれど、抗生物質は1週間分必ず飲み切るようにしてください。
 
薬局はすぐ近く。
処方箋を持って病院を後にしました。
 
こうして手術は終わりましたが、もう少しだけ続きます。