国民の立場に立ってあるべき公的年金制度のあり方を考えた場合に、私は誰もが高齢期おいて最低限の所得を保障されることが、最も重要だと考えます。

こうした視点から現行制度をみると、現役世代の所得に応じて年金額が減額されるマクロ経済スライドが、基礎年金部分にまで適用されることになっており、まずは「マクロ経済スライドは基礎年金部分には適用しない」ことにすることが必要です。

しかしこれだけでは不十分です。

現在、国民年金の保険料は低所得や失業中の人には広く保険料免除や納付猶予が認められていますが、保険料を払わなかった分、将来の年金額も減らされることになります。

もちろん後から追加で納付すれば年金額は増えますが、保険料免除や納付猶予制度を利用している人の多くは、後から追加で保険料を納付できるような余裕のある人ではありません。

つまり将来の低年金者がいま潜在的に増えているのです。

このような低年金者は現役時代の所得が低かった人たちですから、当然、蓄えも少ないはずです。

そうなるとこうした人たちは生活保護に頼らざるを得なくなってしまいます。

それを避けるためにも年金の最低保障機能の強化が必要です。

年金改革の議論はまずは「どう最低保障機能を強化するか」から、行うべきだと思います。