岐阜市南西にある県の直営施設、古戦場記念館。

観光交流館の整備や歴史民族資料館のリニューアルし、

さらに旧小学校校舎をアーカイブス(保存記録や公文書など)の閲覧場所として

また体験プログラムも織り込んで、

来訪者への便益施設として再利用を前提するなど、

2015年に「関ケ原古戦場グランドデザイン」を策定。

そして総事業費52.4億円を投じ2018年2月に竣工したビジターセンター、

5階建ての側面は全てガラス張り、最上階の展望室は円状の建物で

正式名称は岐阜関ケ原古戦場記念館

当初、開館を7月に設定したものの、新型コロナウィルスの感染拡大のため、

関ケ原の戦いが行われた10月21日へ延期すると共に

館長を歴史学者の小和田哲男、アンバサダーを女優の竹下景子とし、

翌日の10月22日に一般公開している。

展示してある関ケ原合戦屏風、武具、出土品、書簡などは

元々歴史民族資料館の展示物を記念館に移設し、

それら施設の土地は徳川家康が最後に設けた陣地跡地とか。

そもそも関ヶ原の戦いとは、

豊臣秀吉の没後に発生した政権の内部争いに端を発し、

徳川家康を総大将とし福島正則・黒田長政らを中心とした東軍と、

毛利輝元を総大将とし宇喜多秀家・石田三成らを中心とした反徳川の西軍が

1600年に関ヶ原で激突した他、全国各地でも戦闘が繰り広げられた合戦。

この結果、勝利した徳川家康が強大な権力を掌握し、

幕藩体制確立の道筋を辿り265年間の江戸時代を構築したことから

天下分け目の戦い」とも呼ばれている。

 

猛暑日が続く8月初旬の早朝、JR大阪駅の御堂筋口改札で

駅員に新券の「青春18きっぷ」を提示し、日付を押して貰い入構する。

9番乗場で長浜行新快速に乗り米原で下車し大垣行の普通に、

さらに大垣駅で豊橋行新快速に乗換え、凡そ3時間の長旅を経て

漸く目的地である岐阜駅で下車。

今回は車窓から長閑な景色を眺める気楽な一人旅を想定したものの、

寄る年波には敵わないのが現実。

凡そ3時間の長旅で腰を痛め、ぎこちない足取りで改札を潜り

集合場所の黄金の信長像の下で暫く待機していた、

白髪混じりの口髭を蓄えた旧友Tが右手を振りながら現れた。

Tとは学生時代、同じ下宿で3年間過ごした間柄で、

年に一度、当時の下宿生数名で懇親会を開き生存確認をしていたが、

コロナ渦の影響で4年間途絶えている。

「へえ、口髭まで生やして。なんか貫禄が出てきたなあ」

双方、古希を超え人相が変わるのは当然なのだが。

「漸く仕事から解放されので、口髭くらいは生やさないとな。

それより関ヶ原記念館は予約制なので、12時45分の入館で申し込んでいて、

現地まで車で一時間くらいなので、少し急がないと」

久しぶりの挨拶も早々に済ませ近くの駐車場まで歩き、

Tのマイカーに乗り込み、国道を南西に進みながら、

お互いの現状など会話を交わしている内に目的地に着く。

 

 

事前にチケット(500円)を買い求めた後、時間的に少し余裕があるので、

同じフロアーの食堂でソバと稲荷寿司の古戦場定食で昼食を済ませ入館。

先ず巨大な床面スクリーンで東西の陣営を俯瞰できる部屋へ入室し、

グラウンドビジョンで関ケ原の全貌を把握し、次のシアター室へ。

「合戦の迫力を出すため椅子が揺れますのでご注意下さい」

女性係員のアナウンスの後、

強固な甲冑に身を包み、鉄製だけの顔に重い兜を被る馬上の武将が、

地響きを立てながら戦場を駆け抜けるパノラマ映像を10分間視聴。

地響きと同時に座席が小刻みに揺れるなか、

とりわけ島津藩の敵陣突破の無鉄砲な行軍に驚きながら、

臨場感溢れるシーンを十分堪能。その後2階へ上がり、

戦国時代の武具や古文書が閲覧できる展示室を巡回しながら、

戦国体験コーナーを横目に見て最上階の展望室へ。

 

 

関ケ原の戦いは僅か6時間で決着が付き、東軍の徳川家康が勝利したとか。

それにしても一日で天下分け目の戦いになり得たのに改めて驚き、

各地の大将が申し合わせて関ケ原に集結したのも感心しながら、

展望室から周りを見渡した。

 

笹尾山石田光成軍の陣跡(標高198㍍)

 

伊吹山や小高い山々に囲まれた関ケ原、

ウォーキングのお勧めとして、

決戦コースや行軍コース、さらに徳川家康コースがあるとか。

地元のハイキング倶楽部の候補地として良いかなと思いつつ、

暫く展望室から辺りを見収め、古戦場記念館を離れた。

 

スマホを向ける適当な場所が見つからず、最後に庭園でシャッター。

 

「今日の泊まる場所はは自宅から少し離れた、俺の隠れ家。

ビールや日本酒などの飲み物、それに上等な飛騨牛の肉を事前に用意したので、

夕食は二人で焼き肉パーティーでもしようや」

学生時代の下宿仲間でもあり、事前に約束した事項なので異論はない、

ただ隠れ家と云う表現とTの連れ添いの存在とが少々気掛かりだ。

「隠れ家か、家内と合意して建てたので全然心配ない、

それに今回、家内は準備と後片付けをするだけなので絶対出会わない。

とにかく我々が自由に振る舞えるので、遠慮なんかするなよ」

そのまま誘いを受け入れ、駐車場からTが運転する車で北上し、

凡そ一時間半離れた市街地の長閑な郊外にある「隠れ家」に着く。

「おおー、隠れ家と言うより立派な別宅じゃあないか、

随分贅沢な生活をしてるなあ。一人で住んでるの?」

感心しながら問いかけるとTは頷きながら、

十年間掛けて建てた隠れ家の経緯を簡単に説明してくれた。

「三角屋根の一軒家の内部は2階建て仕様で十分生活できるし、

プラモデルを造る専用作業場もある、全体の敷地面積は70坪程度かな。

それに昔から芝生のある家に憧れていたので……」

シンプルで洒落た別宅を目の当たりにして驚きを隠せないまま、

Tの案内で玄関からリビングに入り、

彼の卒業後のサクセスストーリーでも聞いてみようと思いつつ、

自ら要請して清潔感のある浴室に入り、シャワーで汗を流した。

 

プラモデルの帆船、糸を繋ぐのに苦労したとか。

 

(写真撮影は8月6日火曜日、酷暑日続行中)