中国パクリ事情其の弐<約束>
現在では、国産車にごく当たり前に装着されているクリアテール。
ちょっと判りづらいかもなので、補足しておこうか。
それまで通常装備されていたテールランプというのは、ブレーキは赤、ウィンカーはオレンジのレンズが
それぞれ担当してきた。
ところが件の“クリアテール”とは、その全てを“クリア”にしてある。
つまり、全部が無色透明であり、内部に存在する電球自体に色を着け、<ブレーキ><ウィンカー>を
区別する・・・というものだ。
車をカスタマイズする一つの手法として、今から十数年前に台湾の工場に発注してみたのが
キッカケとなったものだが、これが当時信じられないほどの売り上げを記録した。
筐体自体は3~4個の金型を使って形成されており、その型が一個およそ400万円。
上の写真にあるモノであれば、左右に分断されている事もあり、恐らく6~8個の型が必要だ。
我が社が手掛けた記念すべき初作は、当時大人気であったマークⅡバンのものであった。
なんとしかし、サンシャインから飛び降りるつもりで作った4万個が、三ヶ月で完売!
それに気を良くしたもんだから、ワゴンRやら何やらで、結果として当時の人気車種の殆どを
カバーするに至った。
それから一年ほど経った頃であろうか。
店に来たお客から、実に可笑しなクレームが相次ぎだす。
「中に水が溜まる」
「全体にゆがんでいてきちんと装着できない」
「箱を開けたら右側用のものが二つ入っていた」
なんだか嫌な予感がした。
そこで実際に「装着できない」という商品を見てみると・・・
なんとそれは、当社で作ったものではない事が判明。
すぐに台湾の工場へ電話をかけ、事の詳細を伝えると驚くべき回答が返ってきた。
「ああ、それなら大阪の業者用に作ったやつだよ」
「それじゃあ金型は、その業者が新たに起こしたのか?」
「いや、このあいだ作ったあなたのものを・・・」
「ふざけんなお前!!」
「え・・・?だめなの?」
おわかりだろうか。
コピー。
模倣。
版権。
オリジナリティー。
彼らにはそういった見識が無いのだ。
しかし。
しかしだ。
我々日本人が、コレを一方的に糾弾する事は出来ない。
なぜなら、彼等にその“生き方”を擦り込んだのは、誰あろう我々日本人なのだ。
今から数十年前、世に初めて<通信販売>なるものが登場した。
そのカタログに載っていた¥3,980のバッグに、何かを感じた。
ルイ・ヴィトン・・・・・ならぬ、ルイ・ヴァトン。
シャネル・・・・・ならぬ、チャンネル。
ディオール・・・・・ならぬ、ダイオール。
これら似て非なるものは、全て日本人が発注し、日本人が買い付けたものに他ならない。
「中国は安い金額で人を雇えるから」
「お前らはどうせいい加減な仕事しか出来ないんだから、この金額で充分だろ」
「どうだ?お前らが一生掛かっても稼げない金を、今ここでくれてやる。だから俺の言う事を聞け」
こうして彼等を蔑み、まるで人とは思えぬ扱いを繰り返すうち、彼等は彼等で“生き方”を学んだんだ。
それは単に「ソレが何であっても構わない!わが国の反映のため、しいては家族を幸せにするためなら、
他国のいい所をどんどん取り入れよう!」
これに関しては、微塵の“悪意”も感じられないではないか。
決してコピー品や、キャラクターの模倣を肯定するものではないが、彼らがここへ至るには
それなりのプロセスがあったのだ!という事は知っていて欲しい。
最後に。
これは中国に発注製造した、フランクリン・ミント社製のミニチュアである。
同社は発注時、工場責任者にこう言い渡したそうだ。
「私たちは、あなた方民族の手先の器用さに悉く感服した。これはどう頑張っても、我が国民性には
発揮できないものだ。お金は幾ら掛かってもいい。その代わりに、他所では真似できない
素晴らしいものを作って欲しい」
中国人はきっちりとその期待に応え、クライアントとの約束を守ったんだ。