航海日誌Part12『波の狭間で』vol.2 | 航海日誌&船用品ご紹介&航海で役立つアドバイス広島市宇品船田船用品blog

航海日誌&船用品ご紹介&航海で役立つアドバイス広島市宇品船田船用品blog

広島市宇品にある船田船用品 船用品の事ならお気軽にお問い合わせください。
安全な航海をしていただくために各種商品を完備しております。航海前・航海後に立ち寄っていただけたら弊社staffが対応させていただきます。
http://www.funada-ship.com
電話082-254-2727

『波の狭間で』vol.2

5月1日 
早朝から雨がザアーザアー降りキャビンの中まで雨が入り込んできた。
雨音はどんどんひどくなる。
暗雲立ち込める空模様に陽の射す気配は無い。


「こりゃお父さん、こんなドシャ降りでは
金比羅山に行くのは無理かねぇ」
ところが朝食の準備をするころには雨音が弱くなり
午前9時にはすっかり雨が止み予定通り金比羅山に
行くことになった。

「お義兄さん、雨が止んだから金比羅山に行けるよ」
「俺は行かない、歩きたくないよ」
と言い出した。

義兄を励まそうと広島に来る事を勧めたが
義兄にとっては群馬で誰にも邪魔されずに好きなだけ
酒を飲み寝たいだけ寝ていたほうが良かったのだ。

「ウン、好きに過ごしていてね」
もう同情なんかするもんか、私の心に三メートルを
越す怒りの波が怒涛の如く押し寄せた。

港の近くに駅があると行動範囲がグ~ッと
広がりご当地名物や観光地を訪れ易くなり
旅の楽しみがグンと増す。

9:30 多度津駅から20分で琴平駅に着いた。

金比羅宮は海の神様。
象頭山(海抜521m)の東腹に建立されている。

石段は中腹にある本宮迄785段、山頂近くの奥社迄は
1368段有る。

痛めた右足首がジンジン痛む。

客待ちしていた籠に乗ろうと近づくと
二人の担ぎ手はお年寄りであった。

とても申し訳ないので自力で歩くことにしたもののふと、
彼らにとっては仕事なのだから乗ったほうが
良かったのだと階段の途中で気付いた。

始めは段数を数えながら登っていたが足が重くて
しんどいので数えるのを諦めた。

5人百姓の飴売りのところで一休み。
シンボルの紅傘は1軒お休みなのか4本しか開いていなかった。
気を取り直して先に進むと宝物館があった。

入館料500円を払い一歩足を踏み入れるといきなり雅な
36歌仙が目に飛び込んできた。

36歌仙は、読みやすい大きさの字で1首ごとに額に
入れられ入り口正面の壁面全体に飾られていた。

平安時代中頃に藤原公任が「万葉集」「古今集」「後撰和歌集」
から36人の歌人を選んだのが始まりで金比羅宮の絵は
狩野探幽3兄弟が描いた物を慶安元年(1648)
讃岐高松藩主松平頼重公が奉納したものであると
所縁が記されていた。

2階に上がると重要文化財の11面観音立像も拝観する事が
出来る。

しかし、照度が極端に落とされているせいか10個の
顔が確認できない。

「お父さん、正面のお顔の他に10個の小さな
お顔がある筈なのよ、でも私の目では確認出来ないから
良く探してみて」
「ウン、でもワシも目が悪くなったのか見えんよぉ」
階下に下りると受付の人が
「11面観音像のお顔は一つしか有りません、
10個のお顔は全部外れています」と
言うではないか。

「無いお顔を捜していたのだから見えない筈よね」
夫と顔を見合わせ大笑いした。

日本の油絵の父と言われる「高橋由一油絵展」を
見ようと学芸参考餡にも足を運んだ。

痛む足を引きずっても行く価値のある27点の作品に
出会えた。

中でも明治18年に描かれた「鯛」は今にも額縁から跳ね上がって
来そうな勢いである。

どの作品も構図が面白い。浮世絵を彷彿させる由一の作品は
ヨーロッパでは観ることの出来ない独特の画風を編み出していた。 

石段下で六人は合流し、昼食は名物の
讃岐うどんを食べる事にした。

二軒のうどん屋が軒を連ね、店の前で
お客の呼び込みをしている。

「お客さん!皇室ご一家もお立ち寄りになり、
雑誌、テレビでも紹介されている店ですよぉ!」

隣の呼び込みはその声に負けじと
「こっちは出来立ての手打ちだよぉ!」
と更に大きな声で叫ぶ。

その内、お互いを牽制するつばぜり合いが始まった。

ご近所付き合いは大丈夫なのだろうか?と
心配するほどヒートアップしていく。

14:26 琴平駅発の電車に乗り一駅で善通寺駅に着く。

善通寺のお堂の中にあるご本尊様の周りには、
様々なお顔の石仏が所狭しと並んでいた。

中には悪戯されたのか黒く太い眉が描かれた石仏がある。

世の中には罰当たりがいるものだ。

ご利益のある「足、腰守り」を買い、おみくじを引くと
末吉で
健康運の欄に「さわり有り」と書かれていたのだが
既に遅しの感である。

帰りはマリーナまでタクシーに乗り、料金1780円を支払った。

「お義兄さん、シャワーが、
とても気持ち良かったよ!入っておいでよ!」
と促すと
「ウウン、行かない.風邪を引いたみたいで
寒気がするから。」

「薬を飲む?」
「いらないよ、寝ていれば直る」
「寝袋も出しましょうか?」
と夫が優しく言うと
「いらないよぉ暑いから」
さっき寒いと言ったじゃないか!
もう義兄に対して私の心の波は漣も立たなくなっていた。

続く

船田 和江

http://www.funada-ship.com

船用品のことなら船田船用品へ
お気軽にお問い合わせください。

$航海日誌&船用品ご紹介&航海で役立つアドバイス広島市宇品船田船用品blog