いきなり「たつ」と漢字の「龍」の関連についての解答を
示しても面白くない。もう一つ脱線させていただく。それ
は、よみの国の「よみ」だ。

この日本語の当てはめられている漢字は「黄泉」である。
こう書くことは、もはや教育の賜物でしかない。この漢字
が解答であることを知らない人間が、よみという言葉から
これを類推するのは不可能である。

せいぜい「夜見」か「妖見」あるいは「陽未」が限界に違
いない。

名詞の場合だと、ほとんどがその日本語と意味の等しい漢
字を当てはめている(もっとも動植物には日本人がこしら
えた国字や、こじつけて漢字を当てはめたものもあるので
注意を要する)とみて間違いない。

空や月や星や雲、頭や手や腹や胸、川や水や土や石、中国
と読み方は違うけれど意味は一緒だ。

こう説明すると、なんでもないことのように思われるだろ
うが、実はこれが古代の日本人の考えを解明する重要な手
掛かりとなる。その一例が「よみ」である。

この言葉の意味についてはこれまで様々な憶測がなされて
きた。それこそ夜見という漢字を無理に当てはめて、闇の
世界だと説明した学者も居る。

答えは目の前に最初から存在していたのに、一人として気
付かなかったらしい。

よいという日本語と黄泉という漢字が同じ意味を示してい
るのであれば漢和辞典で黄泉を調べてみればよかっただけ
のことなのである。

黄泉とは地下深くに存在する湖だと明瞭に説明されている。
つまり鍾乳洞などに見られる美しい地底湖のことなのだ。
古代の日本人はそういう大きな鍾乳洞を「よみ」の国と称
していた可能性が強い。いかにもぴったりのイメージだ。

神話に登場するよみの国は地下に広がる魔界で、そこから
短絡的に地獄をイメージする人が多かったと思うが、もっ
と現実的で神秘な世界であったのである。

もし古代人がよみを地獄と同一視していたなら、必ず、
よみに地獄の漢字をダイレクトに当てはめていたはずだと
私は考える。


そこで「たつ」と「龍」の問題に移る。

龍は想像の動物で中国から概念が移入されたとされている
のだが、それなら「たつ」という和名が存在するわけがな
い。

十二支に辰があるから、そちらの読みを当てはめただけだ
と反論する向きもあろうが、この漢字とて中国では絶対に
「たつ」とは発音しない。

中国では龍と辰は同じものであり、だからこそ日本でも龍
と同様の読みを振り当てたに過ぎない。

もうご理解いただけたはずだ。日本にもちゃんと「たつ」
が居たのである。漢字が移入されたとき、日本人はその言葉
に対応する龍の漢字を当てはめたとみるのが正解であろう。

となると「たつ」とはなんなんだろうか?



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