*** デジタル化 ***
最低でも自分の給料分は売上げるという目標を持つ事になった私。
となればそれをクリアすれば良いわけで、働く意味としては実に明確で良い。
しかも営業が何らかの仕事を取れば印刷物というものはほとんど付くので仕事自体は途切れる事はなかった。
この印刷物制作でもそれなりに苦労はあった。
まず最初に私は印刷の工程自体知らない。
前回すらすら書いた工程の一つも知らなかったのである。
そこでボスは業界や印刷会社が行っているセミナー、講習会、勉強会に私を行かせてくれた。
ずぶの素人がそれで少しづつ覚えていったというわけだ。
そりゃ、何年も同じ仕事していれば知識は増え、スキルは上がって行くわけでスケジュール管理はもちろん、印刷物のイメージをデザイナーとやりとりしたり、最後の頃はキャッチコピーとかも自分で考える事もできた。
履歴書に”アートディレクター”と書けるまでになったのだ。
”石の上にも三年”
恥ずかしながらこの言葉を実感したのが初めてだった。
兎にも角にもそんな状況は結構続いて何か一人前のサラリーマンになったな(笑)。
そうこうする内、”データ処理”の仕事が増えるようになる。
これは時代の流れで、”パーソナルコンピューター(PC)”の文字が巷に溢れ出し、大手企業から始まった業務のデジタル化は徐々に中小まで及んでいく。
最もY社のクライアントは大手が多かったのでもっと早くデジタル化の波が来ても良かったようなものだが、Y社はまだまだ”ワープロ”で企画書を作成していて我が部署にも大掛かりなワープロシステムがあった。
そんな時、ある仕事で
「参加者名簿をデータで渡しますのでそれを元に印刷してください」
という要求が出る。
そこでボスはPCを導入する事になる。
全くの新品ノートPCをポンと私に与えて
「これからは必要になるから自由に使ってね」
ワープロシステムは端末が2つなので必要に応じて順番に使用していたのだが、PCは誰も使った事がないのでまず使えるようし、将来的には他の部署スタッフにも教えろというわけだ。
ここが私のまた一つの分岐点となる。