平成13年2月19日
「いまから病院にいって産んできまーす。もうすぐパパだよ」
と離れて暮らす夫にメール。
朝八時半までに病院に入るようにいわれていたので、入院セットを持って母と病院へいく。
うちら三人出産経験済みの母から、陣痛の話を聞きながら病院に到着。
そのまま病室に入るのかと思いきや、まず超音波検診をするというので、いつもの診察室へはいる。
大きなお腹に超音波をあてながら
「んーーーーーんーーーーーー」
と首をかしげている先生。
「待合室に待っているのはお母さんかね?」
「?はい」 なんだ?どうした?
「あーちょっと、待合室の人中に入れてくれる?」
と先生。看護師が母を呼びに行く。
「あのー、なんでしょうか?」
「あのねーこれ、胎児です。これ肺ね。見る限りつぶれてるんですよね。もし、ここで出産されても、うち小児科の設備がないから呼吸ができなくて死んでしまうかもしれないんですよね。だから今から医大に行ってください。」
「はっ?」
「紹介状書きますからね。」
私は頭の中が真っ白になった。エッ?呼吸ができなくて死んでしまう?
「ちょっと待ってください。そんな事、今まで一回も言われたことないですよ。なんで今日になってこんなこと言われるんですか?」
と聞いたのは母だった。私はただ心臓がドクドクしてなにがなんだかわからない。
「医療ミスてことですか?」
「・・・まぁそういうことになるかと思います。」
母と私は絶句し、持ってきていた入院セットを抱え足早に病院を後にした。
医大に向かう車の中から夫に電話。
「なにーもう生まれたん?」
「あっえーとね。なんか、赤ちゃんが呼吸できんかもしれんから今から医大に行くね」
というと涙がぽろぽろでてきた。
「大丈夫やけー。絶対大丈夫」
母は運転しながら私に言っている。自分に言い聞かせているようにもきこえた。
窓の外を見ながらいろんなこと考えていた。
赤ちゃん抱っこすることできるのかな?もしものことがあったらどーなるのかな?
一生懸命編んだカーディガン無駄になっちゃうのかな・・・・
医大に到着。
その日は月曜日ということもあり、患者が廊下まで溢れていた。
よって紹介状をもっているにせよ診察は後回し。
何時間まっただろう・・・
教授の診察があった。
教授によると、赤ちゃんは順調だし、子宮の状態もいい。この後超音波しましょう。
大丈夫ですよ。
とやさしい言葉をかけてくれた。
それから、超音波の検査待ちをしていた。
ふと顔を上げると、場違いな作業服姿のおっさんがうろうろ歩いている。
ここは、産婦人科ですよ。泌尿科は隣ですよ。
なんて思っていたら、こちらに近づいてくる。
よくみると父だった。(私は目が悪い。このとき眼鏡をしてなかった)
血相を変えやってきた。
「どうやったか?」
父の心配そうな顔を見たときなきそうになって、待合室からでて話をした。
泣きたいのを我慢して、今日の出来事を話した。
産んでくるよっとわくわくしながら家をでて、病院でどん底に叩き落された話を。
それから超音波の検査をしたが、いままでの経緯をみていないのでなんともいえないが
問題はないと思われるということだった。
それから、分娩監視装置をつけて、お腹の張りと胎児の心音をチェック。
いい感じで張りがきているので、このまま陣痛につながったらいいですね。といわれた。
今日はこのまま家に帰って、明日また分娩監視装置で様子を見ましょうという結果がでた。
「入院せんでもえーんか?赤ちゃんは大丈夫なんか?」
と父がいう。こんな取り乱している父を見るのは初めてだったな。
そのまま家に帰宅。
布団にゴロンと寝転がりいろんなことが頭に浮かんでくる。よくないことばかり。
夜もなかなか寝付かれずにテレビを見ようと起きていったが、父と母がもしもの事があった場合の
話合いをしているようだった。
部屋に戻って声を殺して泣いた。
どうしよう。ごめんね。何かあったらごめんね。