Massive Attack - 100th Window | NOTRE MUSIQUE

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Elle est retrouvee.
Quoi? - L'Eternitee.
C'est la mer alleee
Avec le soleil.

Massive AttackMassive Attackの2003年にリリースされた約5年ぶりの4枚目のアルバム。
メンバーの一人だったDJのMushroomが脱退し残された3D(Robert del Naja)とDaddy G(Grant Marshall)の2人体制になって初めての作品となるが、実際にはDaddy Gもほとんど製作には関わっておらず、実質的には3Dのソロアルバムといえるだろう。
このアルバムはこれまでに作られた100曲以上ある膨大なストックの中から名曲だけを厳選されたており、ゲストにはSinead O'Connor、そしてHorace Andyがヴォーカルで参加している。アルバムのタイトルの"100th Window"とは、「我々は、第三者が侵入出来得る全ての窓(Windows)を閉ざすことは出来ない」というコンピューターソフトを例にとった原理に由来している。つまりインターネットからのハッキング、クレジットカード等に関して情報漏洩が起こり、人々のプライバシーを保つためにソフトウェアや法律などいかなる手段を用いても、決して閉めることのできない「100番目の窓」がテーマとなっており、すなわち現代情報社会の危険への警鐘を暗喩したタイトルである。
このアルバムがリリースされた頃には既に彼らの提唱したブリストルサウンド、トリップホップという言葉もすっかり使われなくなっており、サウンド的にはダブやヒップホップとは距離を置き、エレクトロニカに傾斜し、その洗練されたサウンドはストイックなまでに潔癖であり、隙のない印象を与える。彼らのサウンドの特徴でもあった、重く太いベースラインとビートはさらに重さを増して、リスナーを有無を言わさずに深く暗く沈みこませる圧倒的なパワーがある。
あくまでゲストではあるがほぼマッシブの顔で準メンバーであるHorace Andyの祈りにも似たクールでありながらもゴスペルのような精神性の高さを感じさせるスピリチャルなボーカルと911からイラク戦争についてまで言及する政治的なメッセージを含む現代社会へのメッセージとが、その重いビートに内包され、彼らのサウンドはさらにダークにパワーアップしていく。かつてブリストル系の草分けであった彼らではあるが、もはやそんなカテゴリーに属している必要はない。極めて都会的で無機質なビートでありながら、どことなく平穏な雰囲気さえも感じさせるスケールの大きい音楽である。なお、このクールなサウンドを上手く表現したアルバムジャケットはヨウジ・ヤマモトとの仕事で有名なNick Knightが担当している。