リストカットシンデレラp21〜22 | ねこぜや

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離婚

父が母のどこを愛していたのか、母も父を本当に愛していたのか、私には分からない。
ただ私がいる限り、2人のリアルは消えない。
父と母は6年生最初の授業参観日に、2人で学校に来た。仲良さそうに寄り添って、教室の後ろに飾ってある私の絵を見てた。
「カイちゃんのお父さんとお母さん、ラブラブだね」
「いいな~」
私は鼻で笑って、父と母は離婚した。


誰にも言ってなくても無神経な世間は見ている。
「あんなに仲良さそうだったのに、なんでぇ!?」
「嘘でしょー!!」
「ホントだよ」
笑って答える私の隣で、代わりに美保ちゃんが、黙って泣いていた。私はそんな美保ちゃんを見て、急いで廊下に出た。

我慢していた物があふれてしまった 。
学校で泣くなんて屈辱的だった。

家族だったんだ。

離婚は
2人だけの問題じゃないよ。




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心臓の場所

母はアパートで一人暮らし。
「もしもしカイちゃん」
「もしもしお母さん?どうしたの?」

母からの電話がとても嬉しかった。

だけど
「カイちゃん、心臓って右と左、どっちにあるの」

こんな言葉が聞きたかったわけじゃない。
私は、母が何を言いたいのか、なんとなくわかったけど、ワザと明るく答えた。
「う~んわかんない、右じゃない?あれー左かな、お父さんに聞いてみれば?」
「もういいよ、知らないなら」
「何でそんなこと聞くの?」
本当は母に言いたかった。
《どうやって助ければいい?》
これはSOSのサインだ。
「もしもしお父さん!」
「おぉどうした」
「お母さんから電話があった」
「ふーん、それで?」
「心臓は右か左、どっちにあるかって」
「はぁ?なんでそんなこと聞くんだ」
「知らないよ!」
「ハハ、そうか」
「お父さん!」
「ん?」
「お母さん、死なないよね」
「あぁ・・・大丈夫だよ、今電話してみるから。ばぁちゃんには言うなよ」
「わかってるよ!じゃぁね」
私は胸に手を当てた。
右も左も、どこに当てても、心臓の音がうるさかった。