向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療 12 | 藤原航太針灸院

藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

炎症性サイトカインの誘発イベントの継続で、血液脳関門のサイトカイントランスポータのアップレギュレーションによる脆弱性、グルココルチコイドレセプタのダウンレギュレーションによるHPA軸のネガティブフィードバック、炎症カスケードへの抵抗性の弱体化、セロトニン合成能低下等の弊害が示唆され、症状も相応に拡がります。

 

人間の身体は一分節で機能せず、1つが崩れるとその先もドミノ倒しのように崩れます。それを少しでも食い止めようと機能もしますが限界もあります。閾値を超えて初めてエラーが生じていると自覚する人間は、それらに応じた各種現象を踏まえ、食餌、運動その他で様々な対策が古くから行われています。

 

問題はその対策に効果や持続性があるか否か、対策をした上でも個体差が生まれる理由は何か、その対策が原因部位を捉えているか否か、その行為が中長期的に渡り安定性を保持する事が出来るかが課題となります。また、それ以前に原因部位は何処か、そして原因部位の機能/器質的な回復はどのように目指せば良いのか、それに伴う安定性や安全性の確保、リスクは何かを考える必要があります。

 

度々述べている、ベンゾ離脱の急性期以降に残存する遷延性を持つ症状群が、断薬後も数年来に渡り継続するニューロンやグリア細胞のアポトーシスを示唆する状況への対策にも繋がるか等、ハードルの高さが中枢神経症状では伺えます。

 

セルフケアで出来る行為と範囲には限界があるかもしれませんが、症状増悪のリスク回避は出来るかもしれません。長期戦になりがちな中枢神経症状との対峙は、増悪因子を知り、出来るだけ日内日差変動を狭め、今以上に傷を拡げない事で、僅かでも前を向けるかもしれません。

 

1)ストレス脆弱性モデルの成り立ちを、自然発症例とベンゾ離脱由来例で考える

 

前項ではベンゾ離脱によるストレス脆弱性モデルの成立に、チャネルの開口頻度をベンゾ薬に依存した、継続的なGABAのエンハンス(※正確にはCl−流入 以下も表現は同じく)後に生じる自己分泌能の低下と、当該レセプタの機能/器質面の脆弱性が、罹患層の実数として数多く存在する可能性を考えました。

 

ベンゾ部位はベンゾ薬のみでGABAのエンハンスが行われる事はなく、身近な物としてエタノール(アルコール)や身体/精神/環境ストレスで分泌されるコルチゾル(グルココルチコイド/ステロイドホルモン)でも各々の部位に結合し、鎮静/抑制反応へ繋がる働きかけがされます。

 

チャネルの開口から抑制反応が機能し続けた結果、時としてベンゾ薬と同様、継続的なエンハンスによる当該レセプタの機能/器質異常と自己分泌能の低下を生じ、ベンゾ薬が絡まない脆弱性モデルの成立と過程を述べました。

 

また、上記2つの事情が相互に絡み合う弊害に、ベンゾ離脱を基礎に抱えた状態で、更なるストレスに暴露する事で生じる症状全般の増悪理由に、ベンゾ薬の継続的な暴露による自己分泌能の低下が必要以上の症状の底上げ(抑制出来ない/脱抑制)と、症状の持続性や増悪度合い、増悪後の自律性も、非薬物の比ではない印象を持ちます。

 

脆弱性モデルは一般的に統合失調症の陽性/陰性症状がモデルになりますが、全て軽重はあると思いますので、思い浮かぶ如何なる症状でも同様な説明が出来ると思います。

 

只、ベンゾ離脱の急性/慢性症状と大半は合致するのと同時に、是非はさて置き多くがメジャーに良い反応を示す場合も多い事を逆説的に捉えれば、どのような興奮性神経伝達物質がベンゾ離脱時に惹起されているかも捉えられます。

 

冒頭のように、何らかの契機で神経伝達物質や内分泌に異常を来すと、受け止めるレセプタ、トランスポータの増減や異常を来す例はベンゾ薬に限らず起こると思われます。

 

何故かベンゾ薬で起きる事象が否定的な意見、無き物として捉えられている事態は、医療薬としての立ち位置だからかもしれませんが、認知度の問題もあるでしょう。ステロイド薬の離脱時の問題やメカニズム等は古くから知られています。

 

只、上記幾つかの現象を知る事で、出来る限りの増悪リスクを回避する手段も思い浮かびますし、どの部位の回復が結果論として訪れる改善自覚へ繋がるかも見えてきます。

 

GABAの前駆体、グルタミン酸の過剰流入(正確にはCa2+の過剰流入 以下も表現は同じく)によるニューロンやグリア細胞のアポトーシスが、ベンゾ離脱の急性期で不可避とした場合の対策は現状でも様々あるかもしれません。只、上記現象はGADの機能が介入する為、一概にシーソー現象/拮抗反応と表現するには難しい側面もあります。

 

仮にNMDAやAMPAレセプタがグルタミン酸の過剰流入によってアップレギュレートされたとしても、GADが相応に機能し、GABAの合成を果たしてくれれば、アポトーシスの度合いも軽減されると推測されます。


2)グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD65/67)の欠損マウスから見えるGABAの機能的な役割を、ベンゾ離脱を交えて考える

 

GADのノックアウトマウスから得られた情報a)b)を搔い摘む限り、GAD65と67の両者欠損で脳内GABAは消失した事から、GABAの合成はGAD以外に存在しない事が示唆されました。

 

また、GABAの単独欠損による脳神経細胞の器質性の異常の確認がGABAそのものがニューロンやグリア細胞を破壊する訳ではなく、BDNFに代表される神経栄養因子も持ち合わせていない事が示唆されています。

 

GAD65の欠損で痙攣、不安感、恐怖感等の惹起、GAD67の欠損で口蓋裂等の奇形の他、呼吸や眼球運動異常、聴覚異常を来した例からも、人間も似たような過程を辿る事が伺えます。

 

GADの欠損マウスからの情報を元に、ベンゾ離脱を惹起している人間にフィードバックして考察した場合、神経細胞の主となる破壊因子は経路的にもグルタミン酸が濃厚となり、GABAそのものの増加を見越す行為が回復に直結する事はなく、GADの重要性が高まる印象も受けます。

 

いずれも選択的且つ標的とする治療手段は存在しない事を前向きに考える必要はあり、事後の遷延化を示唆する症状はGABAやGADの直接的な由来ではなく、グルタミン酸の過剰流入による興奮性細胞死と推測する事も可能で、

 

自己分泌能の問題やGABAレセプタ、ベンゾ結合部位、GADに原因解決の糸口を見つけるよりも、既に傷めた神経細胞の回復を見込む必要性が生まれ、神経新生や血管新生等も含め、細胞そのものの回復の必要性が示唆されます。

 

3)HPA軸が機能している段階でのコルチゾル増加 = 炎症メディエータの発動 = 身体/精神/環境ストレスの暴露中である可能性を知る

 

グルタミン酸を始めとした諸々の興奮性神経伝達物質の継続的な亢進が、既に当該者にはストレスの対象となる事もコルチゾルの数値から分かりますが、コルチゾルの上昇は炎症メディエータの発動も意味します。

 

追加的な炎症がベンゾ離脱を増悪する事は多くの方が既に経験しています。女性であれば生理中等が顕著でしょう。また、炎症性サイトカインは神経新生を抑制する事も知られており治癒遅延を促します c)。

 

これらの理由から、ベンゾ離脱中は既にコルチゾルの分泌が著しい = 炎症メカニズムが非日常的に既に起きている可能性がある為、追加的に炎症を促す食餌や運動内容/身体ストレス、精神的緊張や環境ストレスを避ける事で、曲がりなりにも安定性が保持出来るかもしれません。

 

サーカディアンリズムも崩れていると捉えると、コルチゾルの基礎分泌の日内変動も既に崩れている可能性もあり、日内変動を読み難い側面もありますが、随時高ストレスに暴露している体内環境では、CRH→ACTH→コルチゾルの過活動でネガティブフィードバックが掛かり、下垂体前葉機能の低下→以後の追加的な炎症イベントに備える抗炎症機能の低下が見込まれる為、一層の脆弱性が惹起される可能性も考えられます。

 

いずれもベンゾ離脱を抱えると寝たきりレベルまで急速に持ち込まれ、1人では生き難くなる為、多くは周囲の人間(家族など)と接点を持たざるを得なくなり、理解の有無も大きく精神ストレスを左右すると思います。只、理解が有るとしても、その関係性が共依存、イネイブラーの存在ともなれば状況は別です。これらの人間関係は妥協に妥協を重ねる存在同士となり、症状の改善に悪循環を構築します。

 

また、ベンゾ離脱は多大な疼痛を全身に齎すケースも多く、入手し易いNSAIDsの常用からベンゾ結合を外し、離脱症状の増悪を未知既知問わず経験している場合もあるかもしれませんd)e)f)。

 

4)急性期以降に残存する症状群と既存治療手段の反応性から基礎病態を考える

 

急性期の栄養補充は神経細胞保護の観点からもVB1や6、12、アミノ酸、葉酸の類が一般的と思います。後は前項でも述べたtnf-α阻害薬、ステロイド、その他免疫抑制剤、NSAIDs、その他解熱鎮痛剤、各種循環剤や拡張剤、抗認知症薬、β遮断薬、神経細胞保護薬、時期が経たものは免疫グロブリン療法、血漿交換療法等です。脊髄刺激療法や迷走神経刺激療法、TMSやECTも用いられるでしょう。

 

また、グルタミン酸過剰説/興奮性細胞死の観点より、上記でも僅かに触れた、抗認知症薬で標榜されているNMDA受容体拮抗薬のメマリー/メマンチン、ALS(筋萎縮性側索硬化症)治療を標榜するリルテック/リルゾールの応用もされています。

 

受傷由来や症状の内容、治療タイミングにより手段は変化するかもしれませんが、脳炎脳症の類が見られる(見られそうな)状態では一般的かもしれません。只、上記手段を見ると分かる通り、他の由来を持つ症例でも同様かもしれません。

 

しかし、手段の多くのネックに「標的が急性期では良いかもしれない」であり、大概は事後となる既にアポトーシスが惹起したタイミングからの手段としては意味をなさない例が殆どになるのも実際です。

 

持続性も期間限定となる手段も上記にはある事から、そもそもの原因部位の機能回復が得られている可能性は低いと捉える事も出来ます。傷は少しでも小さいほうが以後を考えても良いとは思いますが、あくまで「今以上に受傷度合いを高めない対策」であり、「既に受傷した部位の回復手段ではない」です。

 

マウスベースではベンゾ離脱にSSRIのパキシルや(冒頭でも述べた通り、ベンゾ離脱又は強ストレスの持続的暴露により、トリプトファンからセロトニンが合成し難くなる為、改善自覚を得る事が出来るのかもしれない g))、

 

メジャーが奏功する例から、GABAレセプタの機能回復が行われている状況を示唆した実験も存在しますが、実際の臨床像は「全体的に凄く削られた人間が出来上がる」印象も否めません。

 

GABAの生合成が追随出来ない事から、結果論で生じる興奮性神経伝達物質をメジャーで抑えると、全体の機能が落ちる気がしてならず、それに好感触を得たオーバードーズ症例はカタレプシーへの発展など、先々を考えると難しさがあります。

 

「出たから抑える」は対処療法の筋ですが、それと回復は別の話です。勿論薬物は増える為、デメリットもあるでしょう。これらの繰り返しにより、極端な例では「症状は分からない(分からなくなった)が自分も誰だか分からない」に陥りますが、類似例は少なくないと思います。

 

パーキンソン症候群やジストニア、ジスキネジアのような、自分の目にも見えているのではないかと思われる身体症状も本人が気付かない例も散見され、薬物由来の概念が存在しなければ、それらも〇〇病、〇〇障害、〇〇症候群の枠内で起きている事象として片付けられるかもしれません。
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参考症例 age 15 sex f

 

同級生にいじめられていた為、言動に問題があるのではないかと心配され心療内科を受診。発達障害と診断され中枢神経刺激薬を処方されるも、飲むと吐き続けた為に再受診。D2受容体遮断薬を処方される。

 

それから間も無く 親に暴力が向けられる 家の窓や壁を壊す 車道に飛び出す 走行中の車から車外に飛び出す 歩行者に棒を持って殴り掛かる 行方が分からなくなる 等が見られる。

 

上記以外には 後弓反張 Camptocormia Antecollis(dropped head syndrome) 四肢のジスキネジア Trichotillomania 食欲亢進により20キロ増 大量のニキビ(その後、食事量の減少と共にニキビもキレイになった為、食事によるものかもしれない)口喝 知力低下(小学1年生の問題集が解けなくなる) が目立つ。これらの症状を抱え再受診するも「発達障害だから」と診察を終えられる。

 

※服薬前には上記諸々の症状はなし 
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参考症例2 age 75 sex f

 

5年前に主人と死別後、不眠ぎみになった為、Z薬を処方され服薬を続けている。既往として関節リウマチがあり、ステロイドも服薬中。風邪を引いた折、PL顆粒とマクロライド系抗生物質を処方されたところ、両手指の振戦 不眠 不安 が亢進する。

 

Z薬が原因ではないか(週刊誌に「飲んだら危険」と載っていた)と家族に言われて休薬。後日、上記症状の増悪他、両手指、両肩関節部、両下腿に疼痛 顔面から項部に掛け硬直感と疼痛 嘔吐 血圧上昇 頭痛 両耳難聴(スケールアウト)

 

理由が分からず家族が内科に連れていくも「歳のせい」とされ、納得がいかず異なる病院を受診したところ「不安神経症」と診断。各種症状に応じた薬物を処方されるも改善に至らず。

 

※マクロライド系の服薬、Z薬の断薬前は上記諸々の症状はなし ※補足しておくと、マクロライド系がベンゾ結合を外した離脱症状に対し、Z薬が原因と推測した家族が断薬を促した事で、離脱症状の増悪を招いたと思われる 
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参考症例3 age 〇 sex 〇 

 

ベンゾを服薬し始め1年。1ヶ月程前に内科的疾患を煩い外来で通院治療。その際にキノロン系抗生剤を投与。

 

諸症状は点滴と抗生剤投与で軽快したが、約3週間後より 右上肢、右下肢の感覚鈍麻と痺れ 右上肢が挙上し難い(脱力感) 舌の痺れ 味覚脱失 嗅覚過敏 不眠 食欲減退 不安 離人感etc…を発症。

 

これらの症状から脳卒中を疑い救急を受診。検査の結果陰性。原因不明と告げられる。また、内科受診、及び慢性的に患っていた他疾患も有していた為に他科へも受診。各々の科では身体的所見が乏しい理由により、精神的な問題でしょうとされ帰される。

 

「(抗生剤を)飲めば飲むほど具合が悪くなる」と言っていた事から、正確には抗生剤投与間もなく違和感を覚え始め、上記症状に至る迄が3週間とする見方が正しいのかもしれない。

 

※キノロン系がベンゾ結合を外した離脱症状 ※上記のマクロライド系やNSAIDsによるベンゾ結合を外した事から始まるベンゾ離脱の発症も比較的多いかもしれないが、見方を変えれば既にベンゾの薬剤耐性が付いている事が示唆される
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参考症例4 age 20 sex m

 

コミュニケーションに少々問題があると同僚から指摘、職場の掲示板に「発達障害とは?」と書かれたポスターを提示され、閲覧を強要され続けて職場に居ずらくなり退職。

 

その後、確実に死ぬ高さの建物の屋上から飛び降り自殺を図るも、発見した住民に事前に通報されており、警察に保護された後に精神病院に入院。

 

退院後、大声で叫ぶ 幻覚か幻聴か常に目の前や腕、足を手で振り払う 新品の石鹸がなくなるまで身体を洗い続ける その他も極めて潔癖が目立つようになる 軽度の頸部ジストニア

 

※当該患者は入院前から知っていたが、退院後に見られた症状は入院前にはなし
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他の事例も多くあるかもしれませんが、いずれも本人が今の異常を異常として気が付けない例まで発展させるのが、中枢神経を弄る向精神薬由来の恐怖です。上記症例を見ても分かる通り、副作用や離脱症状以前の大きな問題に、既存傷病名(「歳のせい」を傷病名として良いかは分かりませんが)が極めて邪魔をしながら話が展開されている事に気付く必要があります。

 

5)既存傷病名ありきのネックを考える

 

大方は検査しても原因不明(原因があるからと、その原因が症状の根拠になるとも断定は出来ませんが)の為、症状の内容やスクリーニングテストから搔い摘んで診断をすると思いますが、傷病名は服薬歴等の時系列が無視される可能性もあり、原因を見失う懸念もあります。離脱症状の概念が無くても同様です。

 

また、事例1は2016年の発達障害者支援法が改正されて間も無く、事例2は週刊誌に掲載されていた事が契機、事例2と3は主にベンゾ結合を外す懸念のある薬剤によるベンゾ離脱の発症。事例4は嫌がらせ(いじめ)となり、何処にトリガーを引いてしまう要因が転がっているかも分かりません。

 

講演会や書籍が契機となる例も少なくありません。後は「減薬や断薬したい団体」に絡んでいる人間の死亡事例(自殺/不審死 ※急減薬や一気断薬を推奨しており、惹起された自殺念慮や希死念慮による末と思われる)が、真偽はさて置き何件も情報として入っているのですが、何とかならないでしょうか。急減薬や一気断薬の推奨は人殺しと同じです。

 

このように、薬物が現在を大きく変動させてしまう最大リスクには変わらないのですが、どうしても法制度改正時は熱を帯び、関係者は躍起になって動きますし、情報提供の在り方もセンセーショナルにしたいのかもしれませんが、こればかりは自衛するしかありません。

 

よくあるエピソードも参考までに添えると、「しばらく飲み続けたけど最近は飲んでも効かないから止めようかな」ほど止めると危ない状態を示唆しています。薬剤耐性と常用量離脱症状の概念を知る事で避けられるリスクもあります。

 

「薬効自覚なし = 一気断薬は問題ない」「ベンゾ以外は離脱症状がない」「2~4週間の漸減を経れば離脱症状は出ない」「〇〇病は治ったから薬は要らない」「離脱症状は良きものだ」の誤った理解も多くが悲惨な結果を残しますh)。いつの時代から離脱症状の成り立ちと我慢を美学にし始めたのか分かりませんが、その押し付けは危ないだけにしか見えません。

 

これらの人為的な問題も乗り越えての上ですが、GADのノックアウトマウスの例とベンゾ離脱を交えて考えても、極めて当たり前かもしれませんが、度々述べているベンゾ薬そのものが症状を惹起している理由も見当たりません。自己の興奮性神経伝達物質のエラーを皮切りに表現される状態と思われる為、「離脱症状だ」「だから減らそう」の直結的な思考と行為の危険性が明確になります。

 

作用/副作用の反応はあるにしても、時系列や薬効自覚の内容を追えば誰でも分かります。逆を言えば時系列を追わず、薬効自覚の有無を問わず、離脱症状の概念を無視して病名探しをすると、一層の増悪リスクが高まる行為を拾い集める可能性が高くなります。

 

6)飢餓反応と網様体のGABA作動性ニューロンの動態からベンゾ離脱とsplit hand syndromeを交えて考える

 

ベンゾが絡む痩せ現象は様々な要因が考えられます。嘔吐や下痢、便秘等の他、胃腸機能障害も目立ちます。問題は部位毎、臓器毎に理由があり発症しているのではなく、ベンゾ離脱の罹患部位となる中枢神経(脳神経含む)が影響を齎している事が濃厚に考えられます。

 

延髄及び当該部位派生の脳神経と推測される為、逆説的に捉えれば、胃腸に優しいと言われる物の飲食も効果をなさず、栄養になり難い為、当該部位が安定するまでは、痩せ易く太り難い状態が継続する意味も分かります。余談ながら未知既知問わず、ベンゾ離脱は食欲を落とし、痩せ易く太り難い身体環境が構築される為、メジャーの処方理由の多くにもなっています。

 

飲食物が全て素通りしたり、腸閉塞を起こす例も少なくありません。また、通常は空腹時、網様体のGABA作動性ニューロンが賦活化し、交感神経の抑制から褐色脂肪組織の熱産生の抑制が示唆されています。

 

しかし、ベンゾ離脱でGABAの分泌能低下により、空腹時も交感神経が抑制されず、褐色脂肪組織の熱産生も抑制されず(エネルギーが節約されず)、それは即ち空腹時の代謝カロリーが健常以上に高くなるだけに留まらず、ケトン代謝への移行を早期に促進し、脂肪や筋肉を燃焼して中枢神経に栄養を送ると考えられる為、その抹消部(栄養を取られる側)の痩せ速度も著しく速いのかもしれません。

 

飢餓反応 = 飢餓状態でも、人間の身体は生命維持の為、脂肪や筋肉を燃焼させてグルコース以外での栄養を中枢神経が利用します。代謝経路的には絶食状態と同様になり、これらの理由からGULT1の脆弱や、耐糖能異常が惹起され易くなる理由も、以後の太り難い身体状態へ影響を及ぼすのかもしれません。

 

  

 

病態的に運動ニューロン疾患のALSで時に見られるsplit hand syndrome(※写真1~2 短母指外転筋の痩せが著名に認められる) を例に挙げる方もおられますが、母指や示指の代謝要求が日常的に高い事、且つ視覚的認知が高度な部位である事から、類似現象が顕著に発生していると伺う機会もあります。

 

只恐らく、当該現象で起きうる痩せの部位は、抗重力筋や関節回り、その個の日常生活で使用する部位も好発している為、手の周りだけの問題ではありません。以下に当該症状を含む症例を参考に挙げます。
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age 50 sex f (経過不明)

 

人間関係から 不眠 うつ症状 を発症。ベンゾ、SNRI、NaSSA、オレキシン受容体拮抗薬を順次処方され、継続的な服薬で約4か月後に改善自覚。その後ベンゾの有害性を知り、且つベンゾ以外は離脱症状がないと何処かで聞いた事により、ベンゾを残し他の薬剤を2週間の漸減を以て断薬。

 

以後、両前腕と両下腿に熱感(CK値異常なし) 頭部、顔面部、胸部、背部に皮膚感覚鈍麻 両手指、両足趾に激痛 頻脈 踵部の角質の菲薄化 split hand syndrome 全身の痩せ 脱力 客観的評価不能の身体全体の揺れ ファシクレーション が惹起(神経内科的に運動ニューロン疾患は否定)。
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本態性ALSとは似ても似つかないのですが、本人はALSと診断してくれる大病院を幾つも探していたのは印象深いものです。

 

このあたりはどの疾患/症例でも同様で、幾ら異なると伝えても、患者側も病態推測した上での情報収集や行為行動、感情がある為、良いも悪いも含め納得のゆくまで委ねざるを得ませんが、結局は全病院で否定されています。また、他の神経内科的疾患も否定されています。

 

しかし、筋肉(脂肪)の痩せは上記の通り、ベンゾ離脱を抱えると速度は異常性を持ち、代謝要求の高い部位は更に顕著に目立つ為、不安を煽る事態に陥ります。ベンゾ離脱を抱えれば、情報収集はスマホやパソコンが中心になると思います。

 

拇指や示指、手関節がよく使われ、このような動作も当該部位の痩せを早める要因と思われます。それでも尚、メカニズムを理解出来れば、仮に痩せたとしてもそれほど不安に陥る事はないと思います。

 

また、今症例の症状群を抽出する限り、踵部の角質の菲薄化は上記理由の代謝障害ですが、頭部、顔面部、胸部、背部に皮膚感覚鈍麻や脱力など、延髄に著名にダメージが集中している事も分かります。

 

それがノルアドレナリンの作動性ニューロンが延髄に存在する事と、SNRIやNaSSAの一気断薬に近しい急減薬との関連性は推測を超えるものではありませんが、何かを意味しているのかもしれません。只、諸々含め今症例は単回治療で終えていますので、その後の経過は不明です。

 

他、類似理由を抱えた随伴的合併となる患者表現も参考までに抽出します。「使用部位から筋減少が起こる」「強い疲労やストレス、睡眠不足で筋減少が起こる」「朝起きたら痩せていた」「食べても痩せる」「爪の菲薄化や変形、伸びが悪い」「髪質の変化、伸びが悪い」「肌質の変化、保水機能の低下」「傷が治りにくい」が目立ちます。

 

7)ベンゾ離脱の基礎病態を知り、一旦はベンゾを味方にする事は出来るだろうか

 

見方を変えれば、この病態は前向きに捉える事も出来ます。症状の数や度合いは極めて広範で激しいかもしれませんが、その薬物が何処に反応を示し、耐性獲得後の現象を知っていれば、ある程度は掴めるかもしれません。

 

謎めいた症状は数多いかもしれませんが、有限の体内で起きている事には変わらない為、罹患部位が明確である事、遺伝子の問題や感染症、自己免疫疾患でもなく、ニューロンやグリア細胞の特定的且つ不可思議な経年脱落もなく、特異的なタンパクの発現も見られません。

 

脳萎縮の問題はエタノール(アルコール)や加齢、自然発症の高ストレスの継続的暴露でも認められる現象ですが、ベンゾの成分ではなくベンゾ離脱による高ストレスの継続的暴露によるものと推測されます。寧ろ脳萎縮はメジャーでリスクが高い印象を持ちますi)j)(実際のとこ様々な要因が絡み合うので因果関係を掌握する事は難しいと思います)。

 

体内備蓄のグルコースが枯渇し、ケトン代謝へ移行し易い飢餓反応を示すかもしれませんし、他の栄養も多く消費され続けるかもしれませんが、ベンゾそのものが栄養の代謝経路で発現する(邪魔をする)可能性も限りなく低いと思います。強いて言えば上記理由から、GLUT1に脆弱を持たせたり、耐糖能異常を起こさない食事は必要かもしれません。

 

その個が保有する構造及び生理上、脈管の脆弱部位、又は継続的なストレス暴露部位に症状が目立つのも、考え方によっては上記理由を除外出来る要因になります。

 

k)でも僅かに触れましたが、「知ったばかりに」の弊害は、精神衛生の悪化や以後の薬物コントロールに影響を与えます。様々なニーズがあって治療を受ける方はいるかもしれませんが、「ベンゾを知らない人にベンゾの話は危な過ぎて出来るものではない」のスタンスでいると色々見えてきます。

 

飲んでいたい人、飲んでいたくない人、知らない人、知っている人、様々です。病名や薬物に対しての捉え方や考え方も様々ですが、こちらは常に同じ事を行い経過を見させてもらっているに過ぎない中、その個の捉え方や考え方も異なれば色々と途中で起きうる事も様々です。

 

それらの治療経過や治療反応性も踏まえ、仮にベンゾ離脱を既知とした上でも、服薬中なら尚更、ベンゾを一旦味方と捉えて支えとするか、敵と捉えて早期に手放す行為に走るかは個人の感情の問題となりますが、飲んでしまったなりでの改善や安定性の保持を見込む為には、今以上に傷を拡げない手段を先ず考える必要があります。

 

a)H. Asada, Y. Kawamura, K. Maruyama, H. Kume, R-G. Ding, N. Kanbara, et al ., Cleft palate and decreased brain γ-aminobutyric acid in mice lacking the 67-kDa isoform of glutamic acid decarboxylase, Proc Natl. Acad. Sci. USA , 1997, 94 , 6496-99.

 

b)H. Asada, Y. Kawamura, K. Maruyama, H. Kume, R-G. Ding, F. Y. Ji, et al ., Mice lacking the 65 kDa isoform of glutamic acid decarboxylase (GAD65) maintain normal levels of GAD67 and GABA in their brains but are susceptible to seizures, Biochem. Biophys. Res. Commun ., 1996, 229 , 891-95.

 

c) 2013 Nov; 5(11): 2227–2240.Published online 2013 Nov 19. doi: 10.3390/toxins5112227 PMCID: PMC3847723 PMID: 24257035 Impact of Antidepressants on Cytokine Production of Depressed Patients in Vitro

 

d)Wong, PT (1993). “Interactions of indomethacin with central GABA systems”. Archives internationales de pharmacodynamie et de therapie 324: 5–16. PMID 8297186.

 

e)Delanty, Norman (November 2001). “Medication associated seizures”. Seizures: Medical Causes and Management. Humana Press. pp. 152–153. ISBN 0-89603-827-0.

 

f)Green, M. A.; Halliwell, R. F. (1997). “Selective antagonism of the GABAAreceptor by ciprofloxacin and biphenylacetic acid”. British Journal of Pharmacology 122 (3): 584–90. doi:10.1038/sj.bjp.0701411. PMC 1564969. PMID 9351519.

 

g)2016 Jun;22(6):586-97. doi: 10.1038/nm.4106. Epub 2016 May 9. Type I interferons and microbial metabolites of tryptophan modulate astrocyte activity and central nervous system inflammation via the aryl hydrocarbon receptor.

 

h)https://ameblo.jp/fujiwaranohari/entry-12424752015.html

 

i)http://neurowiki2013.wikidot.com/individual:brain-morphology

 

j)http://schizophrenia.com/family/disease.htm#history

 

k)https://ameblo.jp/fujiwaranohari/entry-12370067071.html

 

画像)https://casereports.bmj.com/content/2014/bcr-2014-207647

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