交渉期限を過ぎても表立った動きが見られず、やきもきするのみというところです。海外メディアは、この事件を一面記事としては取り扱っていません。特にBBCはトップページではほとんど扱わず、中東版の中に記事を押し込めています。もちろん自国に直接関係しないということもあれば、特段の進展が見られないということもあるでしょう。
しかし、これはニュースバリューがないことを意味するのではないと思います。BBCにしてもCNNにしても、記事の内容を読めば相当の取材勢力をつぎ込んでいることが明らかです。BBCの特派員の分析が掲載されており、ISISは世界に対してどうプレゼンスを保つかを常に意識しており、「無視するには危険過ぎる」存在であることを知らしめることが目的の一つであるとも指摘しています。なるほど、「その手には乗らない」という暗黙のメッセージをISIS側に送っているようにも感じます。
また、BBCはISISは実際にはリシャウィ死刑囚を奪還したところで軍事戦略上のさしたる価値はなく、昨年末にパイロットが拘束されるまでは開放を求めて来なかったということを指摘しています。ISISにとっては、ヨルダンの刑務所に収監されている他の多くの戦闘員の開放の方に意味があるはずで、なぜ彼女なのか?の疑問は拭えません。
この点、彼女を分かりやすい「シンボル」としてISISの要求に有志国連合側の国家が屈したという構図を世間にさらしたいのではないかと指摘しています。現実の身代金の獲得よりも、有志国連合に要求を飲ませるというメリットを優先しているのです。また、自らの存在を誇示するだけでなく、戦闘の長期化で消耗している戦闘員の士気向上も目的の一つに含まれるでしょう。
この場合には、ISISと敵対していない後藤さんの開放との交換にはメリットはあっても、パイロットとの交換にはメリットは少ないということも理解できます。そもそも安否が確認出来ていないということは、既に殺害されていてもおかしくない状況だということでしょう。BBCは、何らの取引もない中でパイロットを殺害することはないだろうと述べていますが、現実に湯川さんは殺害された可能性が高いわけで、後藤さんともども無事であって欲しいと切に願うばかりです。