花水木ちゃんのママと出会った時の事
お墓参りで、声をかけられた私は、
声をかけてきた女性をまじまじと見ました。
顔色は悪く、目の下にはクマ、
必死の笑顔、
ピンクのコスメケースを抱きかかえていて、
出会った場所は墓地… .
何もかもが不自然でした。
女性が言いました。
私ずっと見てました。
すごく素敵なお線香ですね。
ほとんどの人は墓地で売ってるお線香なのに、
持ってきていましたよね。
わざわざ準備してくださっていると思って…
私は変な奴だけど、普段はこんなふうに
人に話しかけたりはしないんですよ。
手を合わせる時間も長くて、
すごく思っている感じがしたんですよね。
私はそれに答えました。
お線香は好きで自宅に山ほどあるんですよ。
その中から選んだだけですよ。
思っているといっても、
全く心配していません。
彼はもう天国にいます。
その様子も夢で見させてもらいました。
ここに来ると、天国を感じられるから、
私が好きで来てるだけですよ。
その時、死んだ魚の目のようだった彼女の目が、
大きく見開き、
目を輝かせながら、
天国のことを次々質問してきたのです。
そして、
お時間ありますか？
あそこでお茶が飲めるんです。
喉乾きませんか？
私のお線香もいっぱいあるので、
よかったら交換しませんか？
と言い始めました。
そして彼女は、
自分の愛娘も
ここに眠っていると
教えてくれました。
いつの間にか私は
部分胞状奇胎でた亡くした
梨花と亮輔のことを
聞いてもらっていました。
時間があっという間に過ぎ、
私たちは翌週も
同じ場所同じ時間に会う約束をしました。
花水木ちゃんのママと私の
3年間の付き合いの始まりでした。