【世にも恐ろしい恋愛物語 その四 「杉並区の女」】 | 占い師 富士川碧砂オフィシャルブログ「神さまを100%味方にする!『開運』ブログ」Powered by Ameba

占い師 富士川碧砂オフィシャルブログ「神さまを100%味方にする!『開運』ブログ」Powered by Ameba

占い師 富士川碧砂オフィシャルブログ「神さまを100%味方にする!『開運』ブログ」Powered by Ameba


テーマ:

杉並区は、不思議な街だ。


降りる駅によってまるで表情が変わる。


売れない役者やバンドマンが集まるような庶民的な町もあれば、驚くほどの高級住宅街もある。同じ種族が集まる村がいくつも存在しているかのようだ。


わたしが二年ほど住んだ街は、駅前は庶民的な商店街が続いていたが、一歩中に入ると、大きな邸宅が並ぶお屋敷街だった。


どの家も、広い庭を持ち、よく手入れされた草木が育ち、歩いているだけでも気持ちの良いところだった。


わたしの住んでいたアパートは、広大な敷地の角に何軒かのアパートや建売住宅を立てたのだろう。背後は鬱蒼とした林。その奥に地主の家が建っているのも見えないくらいだった。


最初、内見に訪れたとき、そのむせるような緑の匂いが、まるで、森の中にいるようだった。私は借りることを即決した。


部屋は一階の角部屋。家賃102000円。駅徒歩10分の1LDK。それまで、声優としての収入が少なく、10万円を超える家賃の部屋に住むのも、一部屋以上あるところに住むのも初めてだった。


ウキウキしながら引っ越しの荷を解いていたら、呼び鈴がなった。


「はーい」


若い男女のカップルが、ドアの前に立っていた。


「隣に住むものです。大丈夫ですか?」


言いにくそうに「大丈夫ですか?」と聞かれても、何のことかわからない。荷ほどきを手伝うという意味だろうか


「はい。今日引っ越してきたばかりでよろしくお願いします。」


と、当たり障りのない挨拶で返したら、そのカップルが驚くべきことを伝えてきた。


「この部屋最近泥棒が入ったばかりなので、心配で。一人暮らしですか?」


そんなことは何も聞いていなかった。とりあえず、礼を言ってカップルには帰ってもらい、 眠れぬ一夜を過ごした。


翌日、そのアパートの前に、何人かの中年女性が集まって井戸端会議をしていたので、捕まえて聞いてみた。


このアパートは、一年間で3回も泥棒事件が起きたこと、私の部屋の泥棒騒ぎの前は、3階の部屋に宅配業者を装った押し込み強盗が入ったことなどを教えてくれた。



「ぎゃーってすごい悲鳴だったのよ」

「後ろが林だから、逃げこむとつかまらないのよー」

「人通りも少ないから、泥棒に狙われやすいのよね」


わたしは不動産屋にクレームをつけ、全額返金で引っ越しをすることで話をつけた。


ところがなかなか良い物件が見つからない。防犯グッズを揃えて、怯えながらひと月ほど暮らした頃だったか、不動産屋から電話が入った。


「二階の入り口のちょうど上にあたる部屋が空きました!


そこなら、よじ登ることもできません。家賃も安くします。そちらに移りませんか?」


そして、わたしはその部屋に移り住むことにした。


自転車置き場など、死角になるところには人感センサーの照明を付けてもらった。


夜でも煌々と明るくなったせいか、泥棒も寄りつかなくなった。


ところが、それから一年ほど経った頃だろうか。わたしは、今でも忘れられない現場に出くわすことになる。


ある夜、帰宅して家に向かうわたしは、隣の家のブロック塀から男がよじ登って来るところを目撃したのだ。


その男は私に気づいたが、わたしは逃げたらかえって危ないと思い、咄嗟に、何も見なかったフリをして、男の横を通り過ぎ、急いでアパートに入った。


背が高く細身の男だった。こざっぱりと髪を切り、泥棒という雰囲気はどこにもない。青いポロシャツに、下は覚えていない。ちょっとイケメン風の40代くらいの男だった。



心臓がバクバクした。やはりこの一帯は危ないのだろうか。


翌朝、隣の家の呼び鈴を押した。


「おはようございます!」


出てきたのは、いかにも主婦といった感じの小太りの女性だ。50代のようにみえた。井戸端会議メンバーには見たことがない。


「昨夜、ブロック塀をよじ登って出てくる男を見たのですが、被害などなかったでしょうか?」


「いやー別に


怪訝そうな顔をされ、私の方が不審者と思われているような気がして、早々に退散した。


「何かありましたら、男の顔は覚えていますので、証言します。声をかけてくださいね。」


そして、それから一年くらい経った頃だろうか。大事件が起きた。


帰宅すると、隣の家の前にパトカーと救急車が止まっていた。


いつもの井戸端会議メンバーが集まっている。


「何かあったんですか?」


「泥棒よ。帰宅した旦那さんが、ブロック塀をよじ登っている男を見つけたんだって!」


「それでもみ合いになって、旦那さんに殴られて、泥棒は頭に大怪我をして運ばれていったのよ」


「血だらけだったわよ」


「ぐったりして、死んでるかと思ったくらい」


聞けば、隣の旦那さんは、空手だか、ボクシングだかのアマチュア選手だったらしい。相当な腕前で、 泥棒は逃げようとしたところを、一撃で気を失ったらしい。


私は慌てて尋ねた。


「泥棒ってどんな人でしたか?」


「ちらっと見たけど、40代くらいの男性かな。細身の


あの男かもしれない…。私は近くにいるおまわりさんに、以前ブロック塀をよじ登る男を見たことがあると告げ、何かあったらと、自分の電話番号も伝えた。


ところが、事件は意外な顛末を迎えたのだ。


その泥棒は、実は奥さんの愛人だった。


時々訪問しては、旦那さんが帰る頃になると、窓から外に出て、ブロック塀をよじ登り、逃げていたらしい。


井戸端会議の情報によると、泥棒の証言に奥さんは、最後まで「そんな男は知らない」と言い張ったらしい。


現場検証などから、奥さんが嘘をついていることがわかり、泥棒の冤罪は晴れたという。


私は、あの小太りの中年女性が、どんな経緯で、愛人と関係を持つにいたったかは知らない。


また、あの細身の男が、どこの誰なのか、井戸端会議のメンバーも知らないそうだ。


でも、わたしは考える。


もしも、男の言い分が通らなかったら


あるいは、殴られて、証言などできない状態に陥っていたら


そう考えると、どこにでもいる中年の小太りの女性の中にある、わけのわからない闇を感じる。


どこまでも嘘をつき通そうとした、普通の主婦の、女の顔。


あの家庭がその後どうなったのか、わたしは知らない。それからすぐに引っ越したからだ。


先日久しぶりにその近くを通った。


そのままの風景がそこにあった。


夕刻の鉛色の空の下、暗い森のような草木が、風に揺られて、ざわざわとざわざわと、葉擦れの音を立てていた。



世にも恐ろしい恋愛物語 その三
練馬区の女

ミサさんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

SNSアカウント

Ameba芸能人・有名人ブログ

芸能ブログニュース