短編小説 真夏のトライアングル
作:NaNa
★33
すれ違う人々の顔はかき消されるように過ぎて行き、車のライトはフラッシュのように光った瞬間に遠ざかる。
まるで私達だけ別の時間の感覚を身につけたように自転車は速い。
私はリツにしがみついた。思いのほかごつごつとした背中に頬がぶつかった。リツが再び、私をどこか知らない場所に連れて行ってくれる気がした。
大きな公園の真ん中を貫通する道に差し掛かると、ネオンの群れは消え、通り沿いに茂る木々の間に、深い群青の空が開けた。
「見て。星が見える」