当局が怒る「書面のコピー量産」 | 新労社 おりおりの記

当局が怒る「書面のコピー量産」

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雇用関係助成金には、申請書や計画書の他に、いろいろな添付書類が必要です。それらの書類について虚偽や2重帳簿などはもっての外ですが、それほど悪質ではない「グレー行為」も存在します。

 

それが表題の「書類のコピー量産」です。これが発覚すると不正行為で摘発されることがなくても、労働局はじめ当局は態度を硬化させ、要件の厳格化やブラックリストの“整備”など、助成金実務に悪い影響が出てきます。いくつかの事件を拾ってみると・・・

 

・OJTカリキュラム

教育関連の助成金で、OJTでもカリキュラムが必要です。これを業種、職種に関わらず、同じものもしくはちょっと体裁を替えたものを出して、助成金の件数を稼いだ研修会社がありました。当局は最初は黙認していたのですが、別な不祥事がきっかけでやり玉にあげられ、この会社の研修はブラックリストに載ることになりました。OJTとは先輩が後輩に教えるワンツーマン。何百社の何千人の研修が、A4用紙一枚で済むわけないでしょ?というわけです。

 

・訓練日誌

同じく教育訓練で受講者がその訓練の成果を書く訓練日誌のことです。これはカリキュラム通りやるのは良かったのですが、支給申請の時に出す訓練をした証拠となる日誌が、10何社もあるのに、違うヒトが書くのに、内容が全部同じという事態に当局は怒りました。以来その助成金の訓練日誌は「手書きでないと受け付けない」ということになりました。ワープロでコピペして出していたのですね。

 

・労使委員会の議事録

これは時短の助成金で、時短の措置について労使が話し合った記録のことです。これも違う会社で同じ体裁のものを出した社労士がいたようです。当局はこれについても「同じようなものを出すと受理しない!」という通知を出しました。

 

労働契約書や就業規則のフォームを使うなというのではありません。守るべき法律や、公文書に書くべき記載事項は日本全国どこの会社でも共通です。ただ、私文書で、会社によって訓練や話し合いなどの様子は違うはずなのに、製造A社も、サービスB社も、建設C社も、まったく同じフォームで社名や業種だけ変えている、というところがおかしいのです。当局は何千何万件と助成金を処理しています。審査の担当者が違うとしても、分かってしまうのです。

 

同じような議事録や感想でも、真実に近いかも知れないし、研修もそれを受けるヒトも、また時短の事情もそんなに会社によって違わないことがあるかも知れません。しかし、何十何百の会社が同じようなことを「守る」のではなく「やる」のは、たとえ現実に近いとしても「ずるい」のです。何がずるいのかというと、助成金の肝心要である要件としての制度施策の実行がおろそかである、ということが分かるから怒るのです。

 

雇用関係の助成金の本質は、時短でも研修でも制度でも、その実を上げることです。実を上げるというのはちゃんと学んだよね?ちゃんと話し合ったよね?ちゃんと活用したよね?ということです。それができれば助成金は有効に使われたということになり、当局も持って瞑すべしなのです。

 

国民の拠出したおカネを返済なしにくれるものですから、実を上げないと当局としてはやるせないのですね。故意の不正には腹を立てますが、このやるせない「グレー準不正」も助成金を悪くするモトになるのです。こういう不正の対処がAI化を遅らせている原因の1つかも知れません。