助成金不正の代償 | 新労社 おりおりの記

助成金不正の代償

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雇用関係の助成金は、企業で行われていることに対して、ご褒美をもらえるという構造が基本です。その元締めの当局は、企業で行われていることについて、貼りついて監視するというわけにはいきません。ここに、助成金の不正が起こる原因があります。

 

しかし国民が拠出した「血の税金」です。そこは当局の措置も抜かりなく、また、こういうものは、発覚するようにできているのです。その要因は以下の通りです。

 

・法律や書面のみならず。経営者のみならず、従業員や「プランナー」など、ヒトを介在するので、どうしても「事実」が表に出る。タレこみや、複数の書面の矛盾など、何百枚と書類を見ているプロが見れば結構分かる。

 

・おカネだけに目が行って、その目に見える福利がおろそかになると、やっぱり不自然な労務形態が、助成金の支給対象期間が1年2年と経つと出てしまいます。(例)単純な書面でも、ハローワークや監督署、労働局の部局など、複数の目があり、最初からチェックする。

 

そうして不正の”匂い”がすると、当局は行動を起こします。

 

★ 調査

 

企業に当局のヒトが乗り込み、書類を見せていただいたり、話を聞いたりする「調査」。最初は予告なしの1人ないし2人連れ。名簿に基づいてランダムに行くようです。窓口のヒトが当番で回る場合もあります。もっとまずいとなると予告のあるなしがありますが、5~6人連れで来ます。それで能率よく、長くて2時間ほどで結構膨大な書類を手分けして調査し、あっという間に書類を持っていき、精査して今度は関係者を呼び出すことになります。

 

★ 出頭

 

こちらは逆に企業のヒトが当局に行くもの。調査の後、呼び出しは数度になることもあります。その中身は、申請・調査その他で提出した書類の内容について、細かい点を具体的に尋ねられることになります。主として労務の”法定3帳簿”出勤簿・賃金台帳・労働者名簿に関することで、残業代の計算方法や、雇用契約書との労働条件の相違、対象者の資格などについて、尋ねられます。

 

★ 助成金返還と処罰

 

不正受給が明らかになった事業主については、不支給決定を行い、書面を交付します。すでに助成金が支給された場合は返還を求めることになります。返済に時間がかかる場合は利子がつくこともあります。例えば、教育や訓練など、やってないのに、やったことにする、などは代表的なものです。返還額が巨額に上る場合は、分割払いも認められることがありますが、「返還計画」などの提出が必要になります。

 

昨今は事業所にしても社労士にしても、社名氏名をネット上に「さらす」こともやられます。これは別に裁判の判決ではない、当局の「やり方」で処罰の1つです。

 

ちなみに、労働・社会保険、年金等の決定には「不服審査請求」という、裁判の前段階がありますが、助成金にはありません。当局がやった決定に不服なら、一足飛びに裁判に訴えるしかありません。強制力が強いのです。

 

★ ブラックリスト

 

不正行為が特に悪質なものについては、すべての雇用関係助成金が以後5年間の支給停止となります。例えば2重帳簿(合法帳簿と違法帳簿両方ある状態)、出勤簿を偽造し、事実と異なる、などは代表的です。証拠がバッチリ残るからですね。

 

★ 詐欺罪

 

さらに悪質なものについては、詐欺罪で告発され、司直の手にゆだねられて、罰金や懲役も含めた刑事罰を受けることになります。ホントに悪いことをしようとしたヒトはもとより、不正の件数が数多かったり、額が多い場合は,、逮捕、送検され、罰金懲役の実刑の憂き目に遭うことになります。

 

不正はなぜ起こるか?やっぱりおカネ目当て、というところですね。おカネ稼ぎの一般的な方法は無数にありますが、助成金の要件というのはそれよりはるかに狭いものです。その要件と企業の独特の事情とを、合法的にうまくつなぎ合わせて、福利にごほうびのおカネが出るようにするのが、専門家の役割です。