あのワインマンガ『神の雫』が完結したので久々に”実際に読んでみた!” | フライハイトぷらす

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 昨年は春頃からずっと、新型コロナウィルス感染症ことCOVID-19が猛威を振るい続け、クリスマスも年末年始も例年のように楽しめなくても、せめてSTAYHOME中に「おうち時間」の一環として、「せっかくだし”家呑み”、”宅飲み”で久々にヴォジョレー・ヌーボーを嗜んでみよう。」と思ったりする人や、同じような考えに行きつく人が、世の中には意外と多いのでしょうか。

 

 ここ数年ですっかり赤ワインヴォジョレーのブームが下火になったと言われていたのに、前回(昨年)はいつもなら余っているはずのヴォジョレーが不意に売り切れている光景を目の当たりにして、驚いた人も多かったのではないでしょうか?

 

 今更ながら赤ワインヴォジョレー(=新酒)だからといって、それがワインの全てではなく、むしろ熟成感や深みのあるワインの方が好きという人には、ヴォジョレーは新酒であるが故の軽さ・若さに物足りなく感じる場合があることも知られ、ブーム期のように飛びつくように何本も買う人は減った印象でした。

 

 一方で赤ワインワインの本場のように、ヴォジョレーは新酒(=初物)として解禁日に味見する感覚で一口ほど飲み、残りは保存しておく間に熟成が進み、一月ほど経つ頃はちょうどクリスマスツリークリスマス頃なので、そこで飲む(クリスマスヴォジョレー)という飲み方も徐々に広まっているみたい。

 

 

 

 ところで何故、このブログで時期外れのヴォジョレーの話題かって?

 

 それは、赤ワインヴォジョレーを買わずに迎えた昨年のクリスマス時期、ちょうど12月23日に『マリアージュ~神の雫 最終章~』 26巻(完結)が発売されたから。

 

 往年のワインマンガの完結巻の発売日がクリスマス時期とは、意図して合わせたのか?・・・と、邪推したくもなりましたが、よくよく思えば「読んでから飲むか、飲んでから読むか、或いはクリスマスヴォジョレーをしようと思ってヴォジョレーを残しておいた人は、まさにワインを飲むタイミング」なのだから、ワインマンガの発売日には相応しい日だったのかも目

 

 そして発売から一月ほど経ちましたが、ようやく読み終えたので久々に「実際に読んだ上でのオススメ」として感想を交えながら、作品紹介を投稿したいと思います。

 

 

 

 

 ちなみに下矢印コチラは2017年、まだ店舗があった当時に書いた『神の雫』のオススメブログです。

 

 

 

 まず、マンガのタイトル名でもある『神の雫』と呼ばれるワインは、作中で世界的ワイン評論家として名高い神咲豊多香が、その人生を賭けて選りすぐった1本のワイン。

 

 そして、その神咲豊多香の死後、コレクションを継ぐに相応しいか試練を与えられた主人公たちが世界中のワインの中から「十二使徒のワインと、その頂点に君臨する”神の雫”と呼ばれるワイン」を探し求めて世界中を飛び回り、テイスティングバトルを繰り広げるワインを巡る壮大な人間ドラマ。

 

 

 注目すべきは、主人公の神咲雫自身は神咲豊多香の実子でありながら、ビールメーカーに努めるワイン初心者という点。

 一方で、ライバルとして登場する遠峰一青は、国内でも有数の天才と呼ばれるワイン評論家で、神咲豊多香の養子として、「神の雫」を巡る相続バトルに身を投じるが、どうやら因縁浅からぬ身のようで・・・。

 

 そして勝負の判定方法は、生前に神咲豊多香が遺した”「神の雫」の記述を読み上げ、それを聞いて二人が推察し、「コレだ!」と思うワインを持ち寄り、オフィシエの立会いの下でテイスティングする”というもの。

 

 ワインの表現は、ただでさえ味や色、香りを言葉で伝えても、相手が同じ感性とは限らないので、同じものを想像できるか・・・という点もあって表現すること自体が難しいのに、作中では主人公たちはソムリエだったり同等の技量を持っているので、ワインを絵画や音楽に譬えているので、「このワインは”モナリザ”である」とか、謎かけのような難解な表現内容に。

 

 そうしたワインの表現だけを頼りに、実際には飲んだことも、香りを嗅いだこともないワインの銘柄を当てる勝負・・・というのは、天才ソムリエでも至難の業で、だからこそ探し求める道中での彼らの体験や出会いや別れ、ふとした瞬間に、たまたま飲んだワインまでもが国境を越えて人との繋がりのドラマ(伏線)になっているので、最初はワインを巡る相続バトルミステリーだと思って読んでいたけど、とんでもなく奥深い物語だと思い知らされた。

 

 

 ちなみに黒猫ワタシはワイン初心者で、この漫画を読もうと思ったきっかけは「マンガで覚えるワイン入門書」のように使って、安くて美味しいワインが気軽に楽しめたらいいなぁ~くらいの軽い気持ちで読み始めたんだけどね。

 

 そして前述のように絵画に譬えられて「モナリザ」っていわれても・・・「美味しそう」とか「どんな風味?」よりも、そもそもワインを”モナリザ”に譬える感覚が理解できなくて、味のイメージよりも「それ飲めるの???」という疑問が先立ってしまったょあせる

 

 

 だからといって、全編がワインの表現だけを頼りに、そのワインの銘柄を当てるテイスティングバトルだけのグルメ漫画ではなく、主人公や周辺人物の紆余曲折ある人間模様に加えて、途中で経営難に陥った店を救うべくワインの選定や仕入れの助言して会社を再建したり、登場人物の人生の節目に飲むワインや人生最期に飲む一杯のワインなど、人に寄り添う1本のワインを探したり・・・と多種多様なワイン選びを経験しながら、ワインの目利きや表現の腕を上げ成長していく主人公たち。

 

 その過程で登場するワインは、どれも値段が高いモノや複雑な味わいが特徴なモノばかりで、ど素人には良さが分からなさそう汗・・・黒猫ワタシもそう思ってました。

 

この『神の雫』という作品を通じて下矢印このワインに出会うまでは。

カサーレ ヴェッキオ モンテプルチャーノ ダブルッツォ [ 赤ワイン フルボディ イタリア 750 ]

 

 

 『神の雫』19巻ではワインフェアにブース出展し、隣の中華料理店とコラボすることになった雫たちが、高級ワインを出す他の店(会社)に客を奪われピンチに、そんな状況を打破するべく価格も味のバリエーション豊富なイタリアワインと中華料理のマリアージュを展開し、ライバル店が打ち出してきた16000~20000円くらいのワインに勝ったのが、上記の「カサーレヴェッキオモンテプルチャーノ ダブルッツォ」という1800~2000円くらいとコスパ抜群で、安くて旨いの代名詞のようなワイン。


 

 作中でも生産者が、1本のブドウの樹から僅か2房しか身を付けさせず、他の房を間引くことで栄養も旨味も凝縮させる、というこだわりの栽培方法をとっていることがあげられ、それ程の手間をかけて品質を絞っていながらのコスパ、という点でも探して飲んでみたくなった。

 

 そして価格面だけでなく、実際にカルディなど輸入ワインを扱っている店やAmazonといった身近な所で手に入る点でも、気軽に飲めるワインとの出会いを提供してくれたありがたい作品だと思った。

 

※お酒は二十歳になってから!(法律により未成年者の飲酒、および酒類の購入は禁止されています。)

※『神の雫』に登場したものとは、ヴィンテージが異なります。あくまでも参考程度に。

 

『神の雫』 19巻

 

 

 作中で語られる生産者の「こだわり」と「凝縮感」という言葉から、「とにかく”濃い”ワインだろう」という想像し、先に『神の雫』を読んでいるが故に”先入観”を持って飲んでしまうと・・・「え? 意外と軽い?? 薄い???」と驚くほど、飲み口のあっさり加減に軽薄さを感じるかも目

 

 そして、後から味と香りを感じて、「きっと本物って、こういうのを言うんだろうなぁ~。」と。

 

 さらに作中の主人公と違って、素人なので「海外の景色は浮かばないなぁ~、国内の他所の風景ではなく自宅の一室、見てのままだなぁ~。」と、プロの漫画家の表現の巧みさと個人の表現力の格差を実感しながら飲むのも、作中の赤ワインワインと同じモノを嗜む醍醐味だろうかwww・・・いや違うよねあせる

 

 まぁ、その後『神の雫』は44巻(完結)の後に、『マリアージュ~神の雫 最終章~』が出ているので、本編のラストは想像できると思うけど。

 

 そして、その後の『マリアージュ~神の雫 最終章~』の26巻(完結巻)が前述のとおり、2020年12月23日に発売され、シリーズ開始から16年・・・ついに『神の雫』の正体が―――――。

 

 ・・・といってもネタバレするわけにはいかないので、勝負の行方を書くのは控えるとして、それでも今までの傾向から、きっと『神の雫』は、お高くて庶民には手が届かないようなワインなんだろうなぁ~とは思ったけど。

 

 ・・・で、最終候補に残ったのが、この2本下矢印

 

 まず、雫が選んだ『神の雫』の最終候補:シャトー・シュヴァル・ブラン 1982年は、作中のオフィシエも”突出したヴィンテージであることは間違いない”そして”他のどの年の「シュヴァル・ブラン」とも異なっている”とコメントしているシーンから、1982年というヴィンテージが特別に貴重で希少性から入手困難なようで、Amazonで探しても同じヴィンテージのモノはなく、翌1983年のモノでこのお値段びっくり

 

 シャトー・シュヴァル・ブラン 1983

※『神の雫』の最終候補とはヴィンテージが異なるモノです。あくまでも参考程度に。

 

 同じヴィンテージを探して、ワイン専門店の通販などで探すと10万円を超え、とても庶民の飲み物とは思えないと思った・・・まぁ、『神の雫』の最終候補だもんねあせる

 

 そのシャトー・シュヴァル・ブランを選び抜く際に、迷って混同してしまい、表現しようとすればするほど、ミスリードに陥る罠として恐れられたのが、神咲豊多香が残した「シャトー・オーゾンヌ 1982年」の表現。

 

 作中で神咲豊多香は、あまりに素晴らしいワインと出会い、究極の1本に匹敵する存在と認め、逡巡した経験から彼にとっての『神の雫』にたどり着くことが出来た・・・と語られているからには、これが最後まで雫の最終候補選びに残り迷わせた1本、その意味では「本物の”シャトー・シュヴァル・ブラン1982年”を入手できなくても、それに匹敵するものを味わってみたい。」と思った時に試しに飲むと良いのか・・・いや、とても代替品で選べる値段じゃないけど汗

 

 シャトー・オーゾンヌ 1982年

 

 

 そして、一青が選んだ『神の雫』の最終候補:ジャッキー・トルショー作 クロ・ド・ラ・ロッシュ 2002年、作中では雫も一青も自らが選んだ『神の雫』を飲んだ瞬間に、球体に包まれている感覚やワインが生まれる自然環境、人の営み、生命・・・といったものを「イリュージョンとしての完全」だとか「ワインという名の美しき幻影だったのだ」と表現している。

 主人公2人が別のワインを候補にあげながら、それを「イリュージョン」、「幻影」と表現するからには、どちらも幻のようなワイン―――ということなのだろうか。

 

 ちなみにジャッキー・トルショー作 クロ・ド・ラ・ロッシュ 2002年Amazonで探しても、出てこなかった。

 作り手とヴィンテージの両方で絞るのは無理と諦めて、クロ・ド・ラ・ロッシュでもヴィンテージ違い、作り手違いでも高価なモノのようです。

 だから、主人公たちは「幻」に譬えたのか?!

 

 ドメーヌ・デュジャック作 クロ・ド・ラ・ロッシュ 2018年

※『神の雫』の最終候補とは作り手、ヴィンテージが異なるモノです。あくまでも参考程度に。

 

 

 どちらも最終候補として二人の主人公が携え、そして「幻」と評されるワイン・・・果たして、どちらが『神の雫』だったのか―――。

 

 

 結末は・・・想像できるという人も、自分で見たい(読みたい)人もいると思うので、詳細は書かずに置きますが、黒猫ワタシの感想としては「大作でありながら、伏線を回収しきったなぁ。」と思った。

 

 途中の「え?そこは無理に完全回収しなくてもいいんじゃない???」と思うところもあったけど、それがあったからラストに繋がったんだと思えるし、伏線と言えば・・・最初の頃のエピソードでは本編の初期の頃にヒロインがうっかりミスで割ってしまったワイン、覚えていますか?

 

 ソムリエとして社会人として新人だったヒロインが、ある貴重なワインを割ってしまったことでクビになるシーンがあったのは覚えているけど、何のワインだっけ?

 

 まぁ、あの時のワインは別に『神の雫』とは関係ないワインだったはずだけど・・・それでもシリーズ開始からでは16年前に遡るというのに、ヒロインが悔しくて手元に残していたあの時の割ってしまったワイン、そのコルクまでもが16年の時を越えて、完結巻で伏線回収されるのは本当に見事というしかないと思った。

 

 見事な完全回収が見れる、という意味でも『神の雫』『マリアージュ~神の雫 最終章~』を実際に見てみてはいかがでしょうか?

 

『神の雫』 1巻

 

 44巻(完結)

 

『マリアージュ~神の雫 最終章~』 26巻(完結巻)

 

 

『神の雫』の最終候補はとても手が出せないので、この作品で知った安くて美味しいワインのカサーレヴェッキオ(以下略)だけでいいや~と思ったコミック担当:NUKO黒猫