古を訪ねつつ、見ているのは今 平安京と貴族の住まい | 医療事務会社のサラリーマンのブログ

医療事務会社のサラリーマンのブログ

医療事務業界(会社の仕事です)や読んだ本、日々気になる出来事について綴ります。
なお、このブログに記載していることは、あくまでわたくし個人の意見であり、会社の意見を反映したものではありません。

平安京と貴族の住まい  
出版社 京都大学学術出版
編者 西山良平、藤田勝也 
出版年 2012/6/30
価格 4,200円(税別)


もう大昔の事ですが、
編者の一人の授業に出てたことがあります。

京都は、1200年の歴史があります。
何か新しい建物を建てる度に、
発掘をします。
発掘をすれば、必ず何かしらの遺物・遺構が
現れます。

その遺物・遺構と文献上出てくる記載を基に
地図上に古の京都を再現する…。
確かに面白いだろうなぁ、と思います。
してる作業自体はものすごく地味そうですが。

本著作は、平安時代の貴族の邸宅とされる
寝殿造
について、文献や遺跡を通して、その実像を探ろうとするものです。

正直書いてある内容は半分も理解できてないと思います。
でもこの著作を通して、興味深いなぁと思ったことについて
いくつか触れてみたい。

1.意外と初めの説に引きずられる
「寝殿造」は左右対称。
これは定説っぽくなっていて、学校の教科書にも
それを反映させた、略図が採用されていました。
これは江戸後期の沢田名垂の家屋雑考が基になっている様です。
ただ、江戸後期の研究が今の時代に耐えうる精密さを備えていたのかは
疑問なのですが…。
本著作では、「寝殿造」は確かに寝殿を中心として広庭を
取り囲むように、庭と建物群を一体とした空間を形成している
ことを特徴としている。
でも左右対称を必ずしも絶対的な条件とはしていない、としています。

2.変化は周縁から、アメーバのように
歴史上の変化は、“直線的”には推移しない。
日本の建築様式も、
「寝殿造」⇒「書院造」
と直接的に変化したわけではなく、書院造が主流となった後も
寝殿造自体は、生き続けている。
また、書院造は全く新しいものから生まれたのではなく、
それまで寝殿造りから見たら、辺縁的な部分から生まれた、としています。
これは日本における色んな事象の変化を見るうえでも参考になるのではないかと
思います。

3.権威は権力から少し遅れて
時の権力者が建てる建物や遺構も実は新たに生まれたものではなく
何かを参考にしてできたものであることが多い。例えば
鳥羽殿⇒宇治平等院を模倣
でも藤原摂関家と鳥羽院は対立していたはずなのですが、
それでも、藤原摂関家が権威化していたと言えるのではないでしょうか?

内容的には難しかったですが、面白かったです。

平安京と貴族の住まい/京都大学学術出版会

¥4,410
Amazon.co.jp