応召義務は絶対なのか!? 患者トラブルを解決する「技術」 | 医療事務会社のサラリーマンのブログ

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医療事務業界(会社の仕事です)や読んだ本、日々気になる出来事について綴ります。
なお、このブログに記載していることは、あくまでわたくし個人の意見であり、会社の意見を反映したものではありません。

患者トラブルを解決する「技術」 
出版社  日経BP
著者 尾内康彦
出版年 2012/7/23
価格 1,800円(税抜)
評価 ★★★★



接遇
について重視しない医療機関はありません。

でもだからといって、患者さんをめぐるトラブルが
減っているかというと決してそんなことはなく、
寧ろ増えてさえいる感じがします。
筆者によれば特に2005年以降(所謂小泉改革後)
増えている様です。

これは確かに患者さんの“権利意識”が高まったことも
あると思いますが、全てが職員に問題があるとも言えません。
そしてトラブルに対する対処にその医療機関の
“組織力”が問われている感じがします。

この本の著者は大阪府保険医協会の職員らしいです。
今も年間に延べ400件程度の相談を受けている、いわば
“トラブル対応のプロ”
この人が、トラブル対応に対する
・原則(12)
・着眼点(9)
・技術(10)
が多くの事例を踏まえて述べられています。

特に自分が興味深かったのは、
医師法19条の応召義務についてです。
『診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、
 正当な事由がなければ、これを拒んではならない。』


本来医師法は、国家と個人の間の関係を規定する「公法」
に分類されるもので、応召義務も患者(私人)に対する義務
ではなく、医師資格を管理・監督する国に対する義務らしいです。

またこの条文自体に罰則があるわけではないのですが、
近年この“正当な事由”がかなり厳格に判定され、救急時に
診療が重なって診察ができず、患者さんの受け入れを断った場合でも
正当な事由にあたらないとされる判例が出たりしています。

このような背景が、医療機関全体を委縮させているのではないかと
著者は感じている様です。
著者は

迷惑行為で診療が妨げられ、注意をしてもそれを辞めなかったりする場合は
当該迷惑行為の内容の記録を残したうえで診療を拒否してもいいのではないか

と言っています。

確かになぜ患者さんが迷惑行為を行うのかは理解しないといけないとは
思いますが、基準を明記したうえで、診療を拒否する旨を患者さんに
伝える場合があってもいいのではないかとは感じます。
そのほうが、他の患者さんや、医療機関で働く職員の為にも
良い場合はあると思います。

本当はこの本のような事態に至らないようにするのが一番だとは
思いますが、トラブル退避のために参考にはなると思います。

以前キャリアブレインで応召義務に関する記事が掲載されていました。

医師は患者を拒めない?応召義務(上) 医療法学塾(2)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36669/page/0.html
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36669/page/1.html
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36669/page/2.html

医師は患者を拒めない?応召義務(下) 医療法学塾(3)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36850.html?freeWordSave=1
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36850/page/1.html
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36850/page/2.html