キリスト教徒でもカトリックの

信者とは同じ日本人でもお会いしたことが

あるのだが、今まででプロテスタントの

信者とは一度しか会ったことがない。

 

それほど信者の数が日本では少ない

のだと思う。

 

そのプロテスタント教徒の彼女と

出会ったのは、フランスで暮らしていた時代で

もうずいぶん昔のことだ。

 

まだ私も彼女も若くて、1日を過ごすのが

精一杯の時代だった。

それでも彼女は、私とは違い家からの

援助があったので、フランスには

留学業者を通して留学していたと思う。

 

いかにも品がよくて優しそうで、

育ちの良さが顔の表情に

表れているようなべっぴんさんだった。

 

人の表情というものは面白いもので、

その人の顔を見ると、本当の本心というものが

透けて見えるようによくわかる。

そうして歳をとっていくと

その人の人生そのものを語るようになる。

 

厄介なことに、そうした表情は、

どうやっても隠し切れない。

心が冷たく、人のことをいつも

呪っているような人の目は

氷のように冷たい。

 

人生でひどく悲しい目に遭った人の瞳は

輝きというものが全くなく、暗いものだ。

そういう人に出会うと、

こちらも言葉を失うほど悲しさが

伝わってくる。

 

...........いや、

プロテスタントの彼女のことだった。

 

彼女がプロテスタントになったのは、

両親の影響からだった。

いわゆる信者2世ということになる。

 

彼女の妹は心臓が悪く、小さい頃に

生死をさまようことがあり、

その時に両親はプロテスタントの

教会に行って一心に祈りを捧げた。

 

そうすると、

奇跡的に妹さんは助かったそうだ。

以来、家族そろってプロテスタントの

信徒になった。

 

彼女はフランスでもきちんと

教会に通っていた。

 

なんでも、プロテスタントとカトリック教徒とは

かなり違いがあるそうだ。

プロテスタントの家には、祭壇とか

マリア様の像とか全く置かないらしい。

クリスマスの飾り付けとかも

あまりしないようなことを話していた。

 

でも、カトリック教徒の家になると、

いろいろと飾りがあるという。

 

プロテスタントの方が慎ましいのかもしれない。

その慎ましい彼女と私は、なぜだか気があって

時々あって話をするようになった。

 

当時彼女はまだ大学生だったのだが、

もう婚約者がいた!

相手も大学生くらいだったと記憶しているが、

結構なお家柄で裕福な家庭だった。

 

でも、なんとなく彼女を見ていると

その裕福な彼をものすごく好きな感じ、

つまり、卒業してすぐに結婚したいと

思えるほどの愛情を抱いているようには

思えなかった.....

そのうち、婚約は彼の方が熱心に迫った

ためだったと話してくれた。

 

そう.......彼女は

同じ信者の中に気になる男性がいたのだ。

ずっと慎ましく、決して彼女を追って

パリにまで来るほどの財力がない男性だったが

そういうところが

彼女はかえって気になるようだった。

 

ただ、その慎ましい彼の方も

本当に彼女が好きなのかはっきりしなかった。

それでも、2人とも気持ちが通じるところが

あって、気になる存在になっていったようだ。

 

彼女のお母さんでさえ、

“本当は(信者の)彼の方がいいんじゃないの”

と言い出すほどになっていた。

 

でも、彼女としては、どうにも決断が

難しそうだった。裕福な彼の方に

決定的な欠点がなかったせいもあった。

 

しかも同じ信者の人とは果たしてちゃんと

暮らせるのか不安な気持ちもあった。

 

そのなんとも言えない心情を

私にこっそり打ち明けてくれた....

 

今でも、彼女の品のいい笑顔を

時々思い出しては、懐かしくて胸がいっぱいになる。

どっちつかずの気持ちを精一杯話してくれたのに、

私には、何も答えられなかった......

ごめんね.......

 

今なら、少しは気の利いたことが

話せるかもしれない.......

 

私よりも早く帰国した彼女が、

その後どんな選択をしたのか、

残念ながら知らない。

 

いや、積極的に知ろうとしなかった。

なんだか......、

知らないままでいたかったのだ.....

 

聞かなくてもわかっていることは、

彼女は今でも敬虔なプロテスタントの

ままだということだ。

 

でも......

彼女がどんな選択をしたとしても、

彼女の表情が今もずっと

品の良い優しさをたたえていることを

願っている.....

本当に心から....

そう願っている.....

 

彼女が今も大好きだから.......

 

 

アフリカに行った友人とお寺参りに

行った時の写真。

リュックを背負っています。

後ろ姿だけでもけっこう

迫力を感じますダッシュ