NHK、ザ・データマン「サッカー日本代表」(9/21、22放送)まとめ | サッカーのための筋トレと栄養(since 2010)

サッカーのための筋トレと栄養(since 2010)

15歳以上のサッカー選手向けトレーニング情報

(青字の部分は、当ブログによる補足情報・メモとして追記)

ザ・データマン~スポーツの真実は数字にあり~ 第6回「サッカー日本代表」
http://www4.nhk.or.jp/dataman/x/2013-09-22/11/9275/

数字から競技を奥深く探る!トップアスリートも驚く意外な切り口!日本サッカーは持久力!?長友が世界で注目浴びる理由に迫る。

【ゲスト】名良橋晃、勝村政信
【出演】安岡直、日村勇紀、浅井武、鍋倉賢治、石井直方、安松幹展、木場克己
【司会】設楽統、竹中三佳


■サッカー日本代表の驚きの進化。2014年ブラジルW杯を含め5大会連続出場。海外の強豪チームで活躍する日本人選手も多いが、彼らの多くは体格で劣るのに、なぜ大柄な外国人選手と互角に渡り合えるのか?
 その典型は長友選手、彼の持ち味は走って走りまくる運動量。長友の強靭な肉体を支える体幹トレーニングの秘密とは?そしてとにかくタフな日本人代表のスタミナの秘密とは?なぜ、日本人選手はこのように強くなったのか?
 体の強さを示すデータは、最大酸素摂取量68.8ml。その数値を徹底的に掘り下げると、体が小さくても強くなる秘密が見えてきた!サッカー日本代表の“からだ”の強さがここにある。

■日本代表が走れていることのデータ
<1試合あたりの移動距離の国別順位~2010南アW杯>
選手1人あたり平均で何m走れているか

01.オーストラリア 11,025m
02.スイス 10,699m
03.イングランド 10,294m
04.アメリカ 10,287m
05.メキシコ 10,282m
06.ドイツ 10,260m 第三位
07.スロベニア 10,218m
08.セルビア 10,184m
09.南アフリカ 10,153m
10.日本 10,140m
11.アルジェリア 10,094m
12.スペイン 10,044m 優勝
13.韓国 10,027m
14.ウルグアイ 9,951m 第四位
15.パラグアイ 9,931m ベスト8
16.北朝鮮 9,915m
17.ポルトガル 9,910m
18.スロバキア 9,881m
19.イタリア 9,833m
20.コートジボワール 9,768m
21.デンマーク 9,768m
22.ニュージーランド 9,750m
23.フランス 9,707m
24.ガーナ 9,684m ベスト8
25.オランダ 9,654m 準優勝
26.チリ 9,540m
27.カメルーン 9,532m
28.アルゼンチン 9,389m ベスト8
29.ブラジル 9,363m ベスト8
30.ナイジェリア 9,289m
31.ギリシャ 9,161m
32.ホンジュラス 9,075m
JFAフィジカルフィットネスプロジェクト調べ
青字は大会順位。よくよく順位を見てみれば、走行距離とサッカーの強さには相関性がないことは誰にでも分かることなのですが・・・

日本代表が何故これだけ走れているのか、その裏づけとなるデータ数値が、最大酸素摂取量(Vo2max)68.8mlである。この数値を、データマンこと安岡直が分析する。

日本サッカー協会フィジカル定ガイドラインの中に、選手の体力・身体力をまとめたデータがあり、その中にも最大酸素摂取量がある。

日本オリンピックU23(人数33人、有酸素性最大スピード19.4、最大酸素摂取量68.0)
日本A代表(人数22人、有酸素性最大スピード19.66、最大酸素摂取量68.8)
仏国オリンピック(人数113人、有酸素性最大スピード17.5、最大酸素摂取量61.2)
仏国A代表(人数68人、有酸素性最大スピード17.6、最大酸素摂取量61.6)


■最大酸素摂取量のスペシャリスト、鍋倉賢治(筑波大学教授、教育学博士、専門分野は体力学、マラソン、フルマラソン2時間29分完走記録保持)に質問。最大酸素摂取量測定の実験として、筑波大学サッカー部に協力を依頼。Jリーグのクラブチームと契約している選手も在籍し、プロ並みの体力を持つと言われている。

※筑波大学サッカー部、2012年の成績
関東大学サッカーリーグ戦6位(1部)
総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント・・・ベスト8


人は運動を続けると、必要な酸素量が増えていく。心拍数を限界近くの200付近まで上げる。そのとき、体重1kgあたり1分間にどれだけの酸素を摂取しているか。それが最大酸素摂取量。
サッカーのための筋トレと栄養(blog版) サッカーのための筋トレと栄養(blog版)


鍋倉「スピードを上げるときつくなるから、酸素の消費量は多くなる。どこまで運動を上げられるかということで、最大酸素摂取量とは酸素を使ってどれだけエネルギーを作り出せられるかという能力なので、持久力の指標になる。」

つまり、最大酸素摂取量が多ければ多いほど、より長く走り続けられる。

・一般男性の平均は、40ml
・筑波大サッカー部員の平均は、68.6ml
・日本代表の平均は、68.8ml
・スペインのプロは、66.4ml
・フランスA代表は、61.6ml
・イングランドプレミアは、59.4ml
・イタリアのプロは、58.9ml
・マラソン川内優輝選手は、82ml。これはマラソンの世界記録保持者、パトリック・マカウと同じである。なお基本的に最大酸素摂取量は、体重が減少すると、高くなるという性質があり、一般的なマラソントップ選手より体脂肪率が5%以上も高い川内選手(体脂肪率10%)が上手く体脂肪を下げることができれば、それだけで世界のトップを取れると考えられている

■最大酸素摂取量をもっと上げれば、日本はもっと強くなるのか?

鍋倉「この考え方は、間違いである。最大酸素摂取量を高めるために体重や筋肉を減らすと、逆効果になる。最大酸素摂取量を高めるためにスプリント能力が落ちてしまい、サッカー選手として使えなくなる。最大酸素摂取量65~70mlが日本のサッカー選手の適正な数値と考えられると思う」

奈良橋「最大酸素摂取量を最優先に上げようとしたら、体重を落として、マラソン選手みたいな体型になる必要があるが、サッカーはそれだけじゃない。ボールを使うスポーツ。バランスが非常に大事」

奈良橋「サッカー選手の理想は、長友選手が良い例。ガッチリしている。」

勝村「長友選手がヨーロッパで相対するFW選手は、190cmで100kgぐらい。」

設楽「長友選手は身長が大きくない(170cm)。大きな選手とぶつかるということは、大変なことですか?」

奈良橋「自分は166cmだが、Jリーグは172cmで登録してサバを読んでいた。大きく見せるため、6cm盛ってた。セットプレーでは背のハンデを補うため、体の使い方を考えながらやっていた。サッカーは色々な動きが必要なスポーツなので、長友選手もそうやっていると思う。予測と判断が大事。相手が来ると思ったら、あらかじめ体をぶつけておいて、主導権を奪う」

・乾貴士 166cm
・長友佑都 170cm
・岡崎慎司 174cm
・内田篤人 176cm

上記の海外で活躍する日本人選手は、日本代表の平均身長は178.9cmより低い。低いから負けるというわけではない。

背が低くて上手い選手は世界にも多い。メッシが169cm、シャビが170cm、ネイマールが175cm。マラドーナ、テベスも低かった。

■サッカーでは、背が低い選手の方がテクニックが上手いのか?背が低いことは有利なのか?

筑波大学大学院、浅井武教授(サッカー選手の身体能力を映像解析するスペシャリスト)に質問。

浅井「背が低いと、サイズが小さいので、アジリティ(敏捷性・俊敏性)が非常に優れていて、どうしても素早い動きがしやすい。ステップも細かく踏めるし、体重も重くない場合が多いので、早く動きやすい、出足も早い。そういう良さが出しやすいと思う」

安岡「足が短い方が、ステップが速いということはありますか?」

浅井「大きい人は1mで行くところを、50~60cmで行くわけなので、ステップが細かくなる。なので、そういう細かいステップをボールタッチなどに活かせられれば、テクニックが上がっていく。」

では背の低い名選手、身長169cm、メッシの上手さの秘密とは?

浅井「1対1のスタートはゆっくり歩いて、そこから急に加速する。そのとき足からボールが離れない。普通、急激に加速するときは、どうしても体からボールが離れる。ただしメッシは、横をすり抜けていくときでも、何回も何回もタッチして進んでいく行く。そういう細かいステップがボールコントロールに活かされている例だと思う」

浅井教授による映像解析の結果、メッシのボールと足元との距離は平均45cm。これがボールが足に吸い付くドリブルという所以であった。
サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

安岡「日本には、メッシのような素晴らしいテクニック・アジリティを持った選手はいますか?」

浅井「たとえば日本では、長友。細かいドリブルで上がって行くし、スピードもある。アジリティがないとできないと思う。クイックネスの上がるトレーニングを繰り返し繰り返し行っていくことで、素早い敏捷性が高まっていく。そのために鍛える部位は、脚だけ鍛えればいいと考えられがちだが、そういう動きは体のブレ・バランスがトータルで出てくるので、体幹・コアな部分が重要」

$サッカーのための筋トレと栄養(blog版)



■体幹

体幹、まさに体の幹となる筋肉、インナーマッスルのこと。大腰筋や腹斜筋などを鍛えることにより、アジリティ、すなわち素早い動きが可能になるという。
→この“体幹の定義”について、木場氏は「内側だけでなく、外の筋肉も体幹の筋肉である」という見解を示している。製作スタッフが十分にリサーチしていない、もしくは体幹について誤解していると言える。

長友選手はいかにして体幹を鍛え、アジリティを高めたのか?その秘密を、長友選手の個人トレーナー(木場克己氏)に質問した。
サッカーのための筋トレと栄養(blog版)


まずは、体幹トレーニングを行っていない、安岡のアジリティテストを実施。60cm間隔に置かれたマーカーをジグザグに5m走って、タイムを調べる。

長友選手は2.3秒でこれを行うが、安岡の1stテストは4.1秒。
サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

木場「(安岡の問題点について)頭のブレが大きい。ということは、上半身がブレ過ぎ。」
サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

(安岡は)頭と体が左右に大きくブレている

(長友は)上半身はブレずに、下半身だけ左右に動いている

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)


体幹を鍛え、ブレない体を作る。それがアジリティを高める道。体幹トレーニングで、安岡の肉体改造を実施(体幹トレーニング9種、10回1セットとして、1日に3セット・朝昼晩行う)
サッカーのための筋トレと栄養(blog版)


サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

アマゾンでこの商品をチェックする
(↑アマゾンでチェック)

アマゾンでこの商品をチェックする
(↑アマゾンでチェック)

安岡、2週間の体幹トレーニングの成果報告。安岡の記録が2.5秒に短縮。
$サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

また、ブレない体にはもう1つメリットがある。ブレない体は、当たりの強さにつながる。
サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

背が低くても、体幹を鍛えれば、大きな外国人に負けない。
→これは体幹トレーニングの効果を盛り過ぎの印象。単に体幹を鍛えるだけで、大きな外国人に負けないようになるとは限らない。っていうか、外国人選手も体幹トレーニングやってます。残念ながらそこだけで大きな差はつかないと考えるのが妥当


■ACTN3遺伝子とは?

最大酸素摂取量68.8mlは心肺の持久力だが、もう1つ大切な持久力がある。それはACTN3遺伝子と呼ばれる、筋肉の構造に関係するタンパク質をつくる遺伝子である。

筋肉の種類
・瞬発的に大きな力を生み出す速筋
・持久的な動きが得意な遅筋

ACTN3遺伝子には3タイプあり、どんな運動が得意なのかを司っている。
サッカーのための筋トレと栄養(blog版)

・瞬発力に秀でたRR型遺伝子
・持久力に秀でたXX型遺伝子
・瞬発力と持久力の両方のバランスに秀でたRX型遺伝子

筋肉研究の第一人者、石井直方教授(東京大学大学院)に質問。

石井「(持久系の)X型遺伝子を持っている人の割合は、欧米の型よりも、日本人を含めてアジア圏の方々の方が多い。日本人のXX型は全体の3割だが、欧米では10~15%ぐらい。日本人はXX型が多く、どちらかというと持久系に向いている。」

安岡「日本人が持久系の筋肉の遺伝子が多い理由には、どのような背景があるのですか?」

石井「生活の糧として食料を確保するため、同じ人間でも、狩りで瞬発力にモノを言わせて獲物を獲るタイプの暮らし方をする場合と、もっぱら農耕のような延々と地道な作業を続けるタイプの生活をする場合とで、要求される筋肉の性質が違ってくる可能性がある」


■ならば、日本代表にも持久タイプのXX型遺伝子を持っている選手が多いのか?

安松幹展教授(立教大学コミュニティ福祉学部スポーツウェルネス学科、日本サッカー協会フィジカルフィットネスプロジェクト)

安岡「日本サッカーは、持久力に優れているから強い!そういうことでいいですか?」

安松「いいえ、一般的な持久力だけでは、サッカーは語れません!」

安岡「では、サッカーで本当に必要な体力とは?」

安松「それを考えるときには、サッカーの動きって、どういうものなのか考えなければならない。歩いている時もあるし、ダッシュしている時もあるし。サッカーの動きを大体3つぐらいに分けるられます。」

・ロー(Low Intensity Activity)歩き、ジョギング
・モデラート(Moderato Intensity Activity)ジョギングより速い走り
・ハイ(High Intensity Activity)15km/h以上のスプリント

安松「例えば試合の中でダッシュが何%走れるか、というところで今サッカーに必要な体力が考えられています」

安岡「持久量が高いから凄い、というわけではないんですね」

安松「その通りです。“ハイ・インテンシティ・アクティビティ持久力”っていうことなんです。この持久力を測定する良いテスト方法がありまして、“ヨーヨー・インターミッテント・リカバリーテスト”というのがあります」


■ヨーヨーテストとは?
往復40mを制限時間内に走り、それを何回繰り返せるかを測定する。休憩はわずか10秒。息が上がった状態で、またダッシュ。しかも制限時間は回を重ねる毎に短くなる。制限時間に間に合わなくなるとそこで終了(脱落)。これがハイ・インテンシティ・アクティビティ持久力の指標となる。





筑波大学サッカー部のヨーヨーテストに安岡も参加。安岡は280mで終了。この終了時点での距離が、ハイ・インテンシティ・アクティビティ持久力の指標となる。筑波大学サッカー部員は、1000mを超えたあたりから徐々に脱落者が出てくる(1080mでアウト、1140mでアウト、1160mでアウト・・・ベストは1240mでアウトの選手)。

筑波大学サッカー部のヨーヨーテストの平均は1150m。日本代表は1190m。これは世界と比べてどうなのか?

安松「エリートのサッカー選手の基準は、ヨーヨーテスト1000m以上っていうのがある。平均で1000mなので、選手によっては1200m走る人もいると思う。それを考えると、日本代表はヨーロッパのトップ選手と数値的には変わらない」

安岡「では、やはりハイ・インテンシティ・アクティビティ持久力においても、日本は強いということですね?」

安松「そうですね、やはりテストの結果からすると、決して劣ってはいないです」

■サッカーに必要な力、それはダッシュを何度も繰り返せる筋肉の力。ならばACTN3遺伝子は、瞬発系?それとも持久系?

筑波大学サッカー部員のスタメン選手の遺伝子チェックを研究機関で行ったところ、

・持久系(XX型)は0人
・バランス系(RX型)2/3
・瞬発系(RR型)1/3

このデータは何を意味するのか?

石井「RRが多いというのは、(被験者らが)瞬発力やパワーに優れた人が多い集団である、ということが言えると思います。サッカーの場合は90分間走り続けなければならないので、少し筋肉とは無関係に心臓や呼吸循環器系とかをキチッと鍛えていて、十分な持久力もあり、その中でパワーや瞬発力を発揮するための筋肉を兼ね備えている集団なのかな、という気がします」

遺伝子が持久力向きじゃなくても、心肺の力、あの最大酸素摂取量の力で走り続けているのだ!


奈良橋「98年フランスW杯で、初戦がアルゼンチンだったので、その前にスカウティングビデオを見た。すると、アルゼンチンは鬼のように走っていた。攻守においてプレスとか。でも、いざ開幕してアルゼンチンと試合すると、明らかに走ってる量が少ないところがある。だから走るメリハリというか、いつ走るのかというのが、しっかりとチーム全体で出来ていると思う」

勝村「そういう戦い方もあるんですよね。戦術。走る走らないじゃなくて、走らないように、コンパクトにまとめる。長い距離を走らないように、全体をまとめて戦う戦術とかもありますし。でそれを耐えて、長いボールを出して、長い距離を走るっていう速攻重視の戦い方もありますし、全体的なこと(を考えることが重要)」

奈良橋「本当に勝村さんのおっしゃったとおり、強い国というのはメリハリというのがしっかりできている。そういうパーセンテージはあればあるほどいいと凄く思うけど、それやったからといって(監督がその選手を)“使うか?”っていうのが選手にとって非常に大事になってくる。なので1人の選手だけではダメだと思う、サッカーは11人とサブ選手が絡んでくるので、その辺のサポートをしっかりしてあげたい」


-------------------

以上、まとめでした。

この番組の感想は、次回のブログ記事で紹介します。


(⇒当ブログ目次)