「ふじこは私を憎んでるよね!」
母はそう叫んで泣いていた。
私が小学生のときに離婚して
家を出て行った母。
物心ついた頃から
両親はケンカが絶えず
母が家を出るのは時間の問題だった。
離婚したこと自体は受け入れていたけど、
母が出て行き、父子家庭となってからは、
私は、父の女性問題や病気に長く苦しめられ、
とても辛い10代を過ごした。
母に会いたかったけど
父も祖母(母にとっては姑)も
それを許さなかった。
母には憎しみというより
側にいてくれなかった寂しさがあったと思う。
大人になって、
母と再会してからも、
母が家を出たこと、離婚したこと
再会するまで、私がどのように育ってきたのか
についてはお互いにとってタブーの話題だった。
でも、
出産後、夫が亡くなり、
母が息子の子育てに深く関わるようになり、
お互いのストレスが高まってくると、
とうとう、避けていた昔の傷について
ケンカの際に口から出てくるようになってしまった。
その後、私と母の
息子の取り合いともいえる対立は
さらに激しくなっていった。
私は、
夫を亡くした悲しみに浸るどころか、
実母との確執に苦しみ、
仕事と育児の両立の日々に
体力的にも精神的にも
疲れ切っていた。