2021年を迎え、昨年を振り返ると、新型コロナ一色の1年でした。このコロナ禍で特にダメージを受けたのが、社会的弱者と称される外国人、女性、子ども、そして障がい者の人たちです。その中でも非正規労働市場、飲食サービス業に従事する割合が高い女性の自殺者が急増しています(図1)。厚生労働省によると、特に2020年10月の40代女性の自殺者数は前年同月比で約129%増、30代は約93%増と大幅に増加しているとのことです。なぜ30代~40代の女性が死を選ぶのでしょうか。新型コロナ禍で今後も引きこもり傾向が続くことは間違いなく、失業、残業カット、友人等との外出の自粛、リモートワークやリモート授業などで1日中家に居る家族…それはストレスも溜まりますよね。しかし、男性も女性も同じように引きこもっているのに、女性だけがなぜ追い詰められるのでしょうか。内閣府男女共同参画局によると、2020年4月から9月のDV相談件数は、前年同期比で約2割増とのことですが、DV被害者等の保護施設を行政が建設したという話を私は聞いたことがありません。「自己責任」で片付けられ、行き場を亡くした人々が追い詰められた結果が現在の日本社会なのかもしれません。
 

 一方、この未曽有の経済危機にもかかわらず、日本では企業の倒産件数は増えていません(図2)。完全失業率も2020年11月時点で2.9%に収まっています(図3)。これには緊急避難的な持続化給付金他資金繰り対策が効いています。経営者仲間では、「『コロナ対策』と言って2,000万~3,000万円の融資をお願いしたら5,000万円出た」などという話が当たり前に飛び交っています。加えて、雇用者向けに雇用調整助成金、新型コロナ支援金、給付金他県単位にも助成措置があり、実体のない雇用を下支えしています。コロナはいつまで続くのか。助成金が息切れした時、コロナ禍で甚大な被害を受けた運送業、小売業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、医療・福祉業は、この春以降債務返済が困難となり、倒産や廃業が頻発することでしょう。企業も個人も格差はより一層広がる兆候が出ており、歪な社会に移りつつある(悪い意味での)社会の変革期を感じさせます。
 

 他方で、この危機を追い風にして業績が好調な企業もあります。今後企業が生き残り、発展していくためには、現状を認めながら、新たなビジネスモデルから新たな産業の創生に向け、歩みを進めていくことが重要になりますね。