先日、在仙台カンボジア王国名誉領事の田井進氏との面談の機会がありました。
 カンボジア王国は、面積18.1万㎢、人口1,607万人の小国で、1970年3月に起きたクーデターにより、外遊中のシハヌーク国家元首が解任・追放され、無政府状態となり、内戦が始まりました。ポルポト政権に代わると、カンボジア国民にとって不幸なことに、原始共産制を目指すクメール・ルージュ政策が始まり、教師、医師、公務員、資本家、芸術家などありとあらゆる知識人が強制収容所に送られ、収容所から生きて出られたのはほんの一握りだと言われています。死者は200万人以上、当時のカンボジア人口はおよそ800万人、ほぼ4分の1の知識階級の人々が殺害されたことになります。


 技能実習生を見ても、ベトナム人と比べ身体は平均的に小さく、言われたことに柔順で、創意工夫の才に乏しい傾向があると言われるのも、「目立つと収容所に入れられてしまうから、言われるままに生きよう」という精神風土が受け継がれてきた歴史があるからかもしれません。


 当社グループのジャステックは、現在40名余りのソフト開発会社ですが、人手不足で伸び悩んでおり、田井名誉領事とお目にかかった折、IT人材募集の対象にカンボジアも考えているとお話しし、日本とカンボジアの民間レベルの国際協力についての提案書を提出しました。その内容は、日本が少子高齢化や労働者人口減少に伴う人手不足の改善策として、外国人、高齢者、女性の労働力の活用が今後必須である現状と、カンボジアの大学卒の優秀な理数系人材は就業の機会が少なく、能力開発の機会や自身の成長チャンスを逃している現状をもとに、両国の行政担当者、IT系企業や専門学校・大学の関係者をつなぐマッチングイベントを開催したい、というものです。日本は不足人材の調達、カンボジアにおいては有為な5~10年先の未来を担う人材の教育と外貨(円)の調達、そして未来に必ず押し寄せるであろう、日本と同じ悩みを解決するスキル・ノウハウを持つ人材の育成。そんなアライアンスを考えてみました。

 

 名誉領事は、「ソフト開発会社などカンボジアにあるのかな、業界団体など無いのでは」とおっしゃっていました。ほとんどがODAで日本や他の国から資金援助を受け、資金を出した国から来た技術者がソフト開発を行い、建設した後オペレーションだけが残るという流れで、創意工夫する仕事のない現状を嘆いていらっしゃいました。そこに日本とカンボジアの相互交流の意義、妙があるのです。先進国の人口構造は、多くが安定した釣り鐘型で、若年層はある程度維持できていますが、日本は菱形で、子どもと若年層が極端に少なく、今後は菱形が上に持ち上がり、逆三角形に近づくのです。栄養不良で亡くなる人はほぼ無く、感染症や循環器病で亡くなる人も、そして細胞変性で起こる悪性腫瘍も、日本はiPS細胞で解決されようとしています。今世紀中には、平均寿命は100歳に近づくと言われる日本。確実に長寿世界一の国になり、新興国のみなさんが学ぶことは山ほどありそうです。

 

 菊地寛氏が書いた『極楽』という短編小説があります。主人の宗兵衛が亡くなり、奥さんも亡くなり、極楽に行った。毎日が楽しい。暑さも寒さもない。様々な煩悩もなくなり、心の中まで澄み渡り、毎日が春のような光が空にあふれ、悲しみも苦しみも何もない平穏な日々を過ごすことになった。5年経ち、10年、50年経ち、死ぬこともない。いつまで生きるのか。主人の宗兵衛にそれを聞くと、「いつまでもじゃ。極楽より他に行くところがあるか。自分たちも仏になった以上、それより他になりようがないのじゃ。」と言うお話です。長生きを目指すことは悪いことではありませんが、長生きは手段で、「何を目指すか」がない人生は、長生きをすることが辛くなります。まさに長寿社会の光と影を考える必要がありそうですね。