[特集]これからの「働き方」考

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 現代キャリアには何が求められるでしょうか。キャリアの語源はラテン語の「Carrus(車)」「Carraria(轍)」です。その意味は「生涯にわたって運転し続ける車とその軌跡」という意味ですね。キャリアと聞くと専門的な仕事をするばりばりのキャリアウーマンのようなキャリアを思い浮かべがちです。それはそれでいいのですが、ここではもっと幅広くキャリア論を考えたいと思います。

 仕事上のキャリアが人生に占める割合は極めて大きいのが現状です。しかしそれで各自の人生は満足なのでしょうか。幸せといえるのでしょうか。キャリアはその意味を問う道、あるいはプロセスとも言われてきました。仕事を一本道と考えれば、趣味や旅、あるいは各種の文化的な集まりに顔を出すなどの横道や寄り道にさく時間はどうなのか。どうも私たちは受動的な意識下で自分の生き方を狭めがちです。「そうはいっても、上司の言うことだから…」で自分を殺してしまう。果たしてそれで今日求められている人材たりえるでしょうか。

 

少し前の話になりますが、私のところに就活中の4年生のゼミ生がやってきました。ウェブで自分にあった会社はどこかと探しては、エントリーシートを書く日々だと言います。彼女は国際協力のボランティア活動に熱心で、カンボジアの子どものために活動をしています。明るくて前向き、人見知りもしない性格で、今は広告業界を中心に就職先を考えているのだそうです。

近況を聞いていると、こんなことを言い出しました。 

「前向きな性格なんですけど、今はそれがかえってよくないみたいです。一つ会社説明会に行くと、その会社がいいかな、次の会社に行くとこれもいいかもとなる。自分がどの会社に行きたいのか、何を基準に考えていいかわからなくなるんです」。彼女は春休みごろから自己分析もやっていました。母親に聞いたり、友達に聞いたり、私にも分析協力してくださいとアンケートを送ってきたりしてもいました。しかし実際就活になってみると、何を基準にしていいのかわからず、選択肢ばかりがどんどん広がり、定まらなくなってきてしまっているようでした。

就職は仕事の価値観だけで決められるものではありません。自身を取り巻く状況とともに予想される転機を見据えるのはもちろん、働くことを通して人生の幸せをどうつかむかも考えられなければならないことでしょう。迷って当然なのです。

 

とりあえずここではサニー・ハンセン博士の「統合的人生設計」という理論を紹介しておきましょう。以下はその要点で、詳しくは後述することとします。

簡単にハンセン博士のことを説明しておくと、氏は女性で、アメリカのミネソタ南部の田舎町で育ち、母は専業主婦、父は精肉工場で働いていました。中学時代に「世の中をよくすること」に興味を持ち、高校ではジャーナリズム、とくに政治問題に夢中になる。そうして次第にカウンセリングに興味を持ち、放課後に学生たちと話し込むようになって次のようなことに気付いたそうです。「これまで、人と職業の出会いは非常に個人的なものであった。それは自分の満足や生計のためだけに焦点を当てる考え方でしょう。しかし、現代もそれでいいのだろうか」と。

現代、世界レベルで労働や家族のあり方や教育、あらゆる状況における男女の役割が激変をしています。従来の職業選択では、人生の途中で自分の職業や働き方に疑問や限界がやってきます。とくに女性は従来のモデルでは不十分で、今日は仕事も家庭もなのです。

ハンセン博士はそんな女性たちの声に耳を傾けながら、主に大学での学生たちとの経験から「統合的人生設計」という理論を構築し、その中で人生の7つの重要課題を提案しました。

その趣旨を項目ごとに列記しておきます。

 

一つ目の課題は「グローバルな視点から仕事を探す」、二つ目は「人生を有意義な全体として織り上げる」、三つ目は「家族と仕事を結びつける」、四つ目は「多様性と包括性(inclusivity)を重んじる」、五つ目は「個人の転機と組織の変革に対処する」、六つ目は「内面的な意義や人生の目的を探る」、七つ目は「健康に配慮する」です。

 

学生が何を軸に仕事を選んでいいのかわからなくなったとき、この理論は有用です。とりわけ就活時に役立つでしょう。就活は焦りとの闘いでもあります。学生にとっては、学ぶ世界から社会と連動して動く自分を連想するのは難しいかもしれません。しかし周りに流されず、立ち止まって考える。自分に足らないものは何だろうと考える。自分って何?と自分自身と議論もする。そして、一体、自分は何に向いているのかと自らを見つめる。キャリアロードのスタートにあたって自分自身と社会とのつながりや社会人としての生き方を考えてみてほしいと思います。

 

 

 

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