905年の5月24日(延喜5年4月18日)仮名序によれば、「古今和歌集」が編纂奏上されたと言われています。
醍醐天皇の勅命により、紀貫之らが『万葉集』に撰ばれなかった古い時代の歌から撰者たちの時代までの和歌を撰んで作られました。
新元号「令和」が「万葉集」を典拠にしたことから、昨今では、にわかに古典ブームに沸いているようです。
それでは「古今和歌集」から読人知らずの「夏の歌」をひとつご紹介しましょう。
「五月(さつき)待つ 花橘(はなたちばな)の香(か)をかげば 昔の人の袖の香ぞする」
「(ホトトギスのやって来る)五月を待って咲く橘の花の香りをかぐと、今はもういないかつて親しくしていた人が袖に焚きしめていた香りがするようで、ふとその頃の事が脳裏によみがえり、懐かしく想う。」というもの。
「五月」は陰暦の五月ですから、今の暦で言うと六月頃になります。
入梅の前後ですから湿気が高くなっていて匂い立つのでしょう。
香りや匂いが記憶を呼び起こす力というのは、とても不思議なものがありますね。
この橘を含むミカン科の類似植物の熟した果皮を乾燥させたものを「橘皮(きっぴ)」といい、漢方の生薬原料になります。
血圧降下、健胃、鎮咳、去痰などの作用があり、高血圧、慢性的な頭痛に効く釣藤散(ちょうとうさん)などに含まれます。
橘皮を数年間寝かせたものを陳皮(ちんぴ)といい、気を巡らせる作用を持ちます。


