ドイツ阿呆紀行 第一回「泥船、ドイツへゆく。その前に上野のTGIフライデーズにゆく」 | 地球はお祭り騒ぎ

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栃木県大田原市を拠点に活動する「映画制作集団 大田原愚豚舎」の映画監督・渡辺紘文のブログです。


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5月27日~6月1日までドイツのフランクフルトで開催された映画祭ニッポンコネクションに参加してきました。



この映画祭は海外で開催される日本映画祭では世界最大の映画祭だそうで、僕たちは映画が出品されるだけでも光栄なことなのですが、約1週間、ホームステイという形でドイツに滞在し、素晴らしい出会いやら、面白い経験やら、狂った観光やら、またしても海外でいろいろしてきました。

いろいろしてきましたので記録としてここに「ドイツ阿呆紀行」と題した連載的ブログをまた性懲りも無く書き綴ろうと思います。

あの一応書いておくんですが、この連載には社会性や批評性は無く、人生のためになるようなことは何一つ書かれていません。

なのでこの文章を読んで時間を損することなどはあるにしても、得することは何一つありません。

あと、ここに書かれていることはすべて事実です。

書かれていることは僕がドイツへ行ったときのことを思い出しながら書いている事実ですが、事実は小説よりも奇なり、というような期待に沿える面白おかしい劇的展開などは何もありません。

ご了承の上、暇つぶしにでも読んでいただき、大田原愚豚舎という映画製作集団や、そして泥船はゆく、という映画に少しでも興味を持って頂ければ幸い、と思います。


さて、僕らがドイツへ行くために故郷である栃木県大田原を出発したのは5月の26日のことです。

成田空港近くのビジネスホテルに前泊して翌日の11時30頃に日本を発つというスケジュールです。

今年3月にフィンランドへ行ったのが僕と弟の人生初フライトだったわけですが、今回は2回目の海外ということで、この前のような海外へ渡航することへの緊張感や恐怖感はさほどありませんでした。

むしろ緊張感が無さすぎて荷造りを前日までほとんど手をつけていないというひどいテイタラクぶりであり、人間慣れというものほど恐ろしいものはなく、この辺りのことは反省してしかるべき僕の憎むべき悪癖であるといえると思います。

本番直前に何かを準備するというのはやはり何か間違いを伴うものであります。

僕は成田へ向かう日の昼過ぎごろまで大田原で買出しをしていました。

衣服が足りない、下着が足りない、靴下が足りない、洗面用具が足りない、充電器忘れた、カメラはばあちゃんちにある、飛行機で読む本は何冊もってゆこうかこれ重過ぎるよな、あ、パスポートどこだっけなど、出発当日になりそんなことで慌てている僕をみて家族は呆れ返っていた様子でしたし、ぼくも今後はこのようなことは無いように何事も早め早めに準備しようと思いました。



大方の準備も整い東京へ向かったのはもう夕刻近くでした。

夕刻近くでしたので、デイサービスから戻った「そして泥船はゆく」にも出演しているおばあちゃんに

「おばあちゃん、一週間くらいドイツいってくるよ」

と、挨拶をしました。

「ああ行ってきな、どこいくんだ」

と、おばあちゃんは言いました。

「ドイツ、外国だよ。おばあちゃんが出てる映画をドイツの人たちがみてくれるんだよ」

と僕がいうと、

「嘘だろ」

と、おばあちゃんは言いました。

「本当だよ」

「ドイツってどこだい」

「ヨーロッパ」

「ふうん」

「おばあちゃん、ドイツのお土産楽しみにしててね、それじゃ行ってきます」

と僕が言うと、

「ああ、行ってきな。気をつけてな」

と、おばあちゃんは言いました。



さて、夕刻ごろ大田原を出ると、成田へ着くのは夜の9時から10時頃です。

僕らは新幹線で東京へ向かうことにしました。

僕は新幹線の中で缶珈琲を飲みながらベートーベンの音楽などに耳を傾けました。

はっきり言って僕はクラシック音楽が大好きです。

クラシック音楽をペダンチックに語る知識も趣味も持ち合わせてはいませんが、大好きです。

ドイツではどんな素敵なことが待ち受けているだろうか、とドイツの作曲家たちの音楽に耳を傾けながら胸が躍りました。



東京へ到着し、前回の経験から成田で食事するより上野あたりで食事してから成田へ向かったほうがいいだろう、と僕は弟と話をして京成上野駅近くで食事をすることにしました。

ここでフツーの人であれば、海外にいったら暫く日本食が食べられないなあ、日本を発つ前に蕎麦でも食べようか、などと考えるのかもしれませんが、あまりそのような思考が働かない僕たちは、

「何食べようか」

「何でもいいけど」

「上野ってなんかイイ店あったっけ」

「天丼屋とか」

「あそこうまいけど暫く改装工事中だって、武骨とかは?」

「ラーメンの気分じゃないなあ」

「あ!!あそこは」

「どこ」

「この前みた映画でいってたとこ、日本にもあるんだよな確か、ケンタッキーじゃなくて・・・」

「どこ、それ」

「なんとかフライデーズ、TGIだかTJIだか・・・」

というわけで僕らは、ある映画でみてから気になっていたTGIフライデーズで夕食を食べることにしました。

TGIフライデーズは「古きよきアメリカ」をコンセプトとするカジュアルダイニングレストランであり、僕はこの店が日本にあることを知らなかったのですが、ある映画で、日本人が「TGIフライデーズ!!」と騒いでる場面をみてから一度いってみたいなあと思っている店なのでした。



で、調べるとそれが上野にある。

キャリーバッグをゴロゴロと引っ張りながら店を探すと、その店は京成上野駅のすぐ近くのビルにありました。

「ああ、ここだここだ」

キャリーバッグを引っ張りながら階段を登り、店の扉の前に行き、ドアノブに手をかけます。

「あれあかないぞ」

「休みなの?」

店の中を覗くと薄暗く中がよくみえません。

「でも定休日じゃないぞ、今日」

僕はもう一度ドアノブに手をかけ引っ張りました。

「開かないわやっぱ」

すると店の中から男の店員の方が現れました。

「いらっしゃいませ」

「あれ、やってる」

これは僕の単純な間違えが引き起こしたエピソードであり、つまりは僕が押す扉を懸命に引っ張り続けていただけの話で、巨大なキャリーバッグを抱えたおのぼりさんのような僕らをみた店員の方が親切に扉をあけてくれたという素敵な挿話です。

さて入店すると、TGIフライデーズはお洒落な感じ、というか海外のバーみたいなつくりの店で、お客さんは男性よりも若い女性のほうが多い様子でした。

「アメリカのハンバーガーといってもきっと日本人向きに量が少なめなのかもしれないなあ」
と思った僕らは、ハンバーガー二つとフィッシュ&チップスを注文しました。

15分くらい弟を話をしているとまずフィッシュ&チップスが登場。

二人でそれをつまんでいるとハンバーガーが運ばれてきました。

これが超巨大。

大食漢で知られる僕でありますが、このハンバーガーには驚愕しました。

「これ一人で食うモンなのか・・・」




出てきたハンバーガーはどこから手をつけたらよいのかわからないほどのボリュームであり、なんだか半端じゃない種類と量の具財がバンの上にのっかっています。

それを無理やり押しつぶすようにして手にもつと、ほぼ人間の顔ぐらいの大きさで、

「これはもしかして近頃流行りの言葉をあえて使うとするならば“シェア”して食うものなのではないか・・・」

と、僕たちはある種の不安を抱えながらがぶりとハンバーガーに食らいつきました。

・・・

うまい。

たしかにうまい。

肉の味がしっかりしていて食べ応えもあるしすごくおいしい。

しかし、これ食いきれるか・・・?

僕たち渡辺一族の人間というものは基本的に食事を残すということは絶対にしない人間です。

それはおばあちゃんに教えられたことです。

おばあちゃんは昔よく僕たちに言いました。

「ごはんを残すとバチが当たる」

また敬愛する水島新司のドカベンの山田太郎も、ごはんを残した妹サチ子のお尻を叩きながら

「ひとつの米粒の中には七人の神様がいる」

と言っていました。

おばあちゃんの言葉もドカベン山田太郎の言葉も米に関する発言ですけれども、僕にとってこの二人の言葉はことあるごとに思い出す言葉でありまして、食べ物というものはやはり色々な人への感謝の気持ちを忘れずに食べなければいけないものであるぞ、と思っています。

しかし30分後、超絶巨大ハンバーガーを完食した僕たちは、食べ疲れによって動く気力を失っていました。

「すげえなこれ」

「もう食えない、動けない」

「ハンバーガーの肉、あれ5人分ぐらいあるんじゃねえの」

「おれ、観察してたんだよ、女性客がこんな量を食べることができるのかって」

「シェアして食べてたんべ、みんなで」

「そう、シェア」

「おれたちはどうやら食い方を間違えたみたいだな」

「ああ、やっぱり時代はシェアなんだよ、ここは皆で楽しくハンバーガーをシェアしてパーティー感覚で楽しむようなお洒落な店なんだよきっと・・・」

「ハンバーガーをシェアか・・・生まれてはじめて聞いたぜ・・・やっぱり東京っつーところは先進的な都市なんだな」

「これも経験だよ。次からは俺たちもシェアしようぜ」

そんな進歩的な会話を交わしながら会計を済ませた僕らは重い足取り、というか明らかに重くなった体を引っ張るように京成成田駅に向かいました。

食後、きっと体重は2、3キロ増えていたように思います。

誤解のないように言いますと、TGIフライデーズのハンバーガーはとてもうまいですし、食べ応えは十二分にあります。

また店の方も親切でとても感じがよく、帰り際には

「これからどこかへ行かれるんですか」

と、話しかけてくださいました。

「成田に。ホテルに一泊して、ドイツで開催される映画祭へ行くんです」

「ドイツですか。それではお気をつけて、帰りにまた寄ってくださいね」

と笑顔で話しかけてくださいました。

僕たちは、動く気力を失うほど食べたにも関わらず、また優しい店員の方がいるこの店にくることもあるだろうなあと思っています。

さて、夕食を済ませた僕らは京成上野駅から電車に乗って成田空港へ。

お金が勿体無いから鈍行でいこうぜ、と話していた僕らでしたが、京成スカイライナーは遅い時間になると特急料金がかなり格安になるらしく、僕らはそれなら、と特急で空港へ向かうことにしました。



1時間弱ガラガラの電車に揺られ空港についた僕たちがバスでホテルへ向かう頃にはもう夜の十時近くでした。

ホテルは以前泊まったホテルと同じ空港近くのホテルです。

まだまだまだ全然食い物を消化しきれていない重い体を引きづりながら、遅めのチェックインをした僕たちは、部屋に入り、ドイツ行きの荷物の最終チェックを行いました。

幸い忘れ物は無い様子でした。

「パスポートと多少の銭があればどうにかなるべ、あ、あれ忘れてた!!」

僕はドイツで使う変圧器をまだ買っていなかったので、ホテルにあるコンビニエンスストアで変圧器を購入、シャワーをあびてさっさと眠ろうと思いましたが、やはりなかなか寝付くことができません。

「静かな音楽でも聴ききながら眠ろう」

と有線をかけると、中学校の運動会の練習時のような超巨大な音量でいかれたようなJ-POPが部屋の中に鳴り響きました。

「なんだよこれ!!」

ホテルの部屋のスピーカーが壊れていたのか狂っていたのか、苦情がきちまうだろ、と思うほどの大音量で流れたJ-POP。

僕はこのショックでふたたび眠りにつくことが難しくなってしまいました。

それでも少しくらいは眠らないといけないよなあと思い、僕は有線をあきらめベッドに横になりました。

外は雨が降っていました。

けっこうな強さで雨が降り注いでいます。

「なんだかおれたちがどこかへ行く時はいつも雨だなあ」

「ドイツから戻る頃には日本は梅雨入りの季節だなあ」

「飛行機の中では映画なにをみようかなあ」

「ドイツのビールってどのくらいおいしいのかなあ」

「ドイツのひとたちは泥船をみて笑ってくれるのかなあ」

「ドイツは肉料理の国なのに、おれはどうして今日あんなにたくさんの肉を食ってしまったのかなあ」

「明日は下のコンビニエンスストアでおにぎりでも買おうかなあ・・・」


そんなことを考えているうちに僕はいつしか眠りに落ちてゆきました。




→ドイツ阿呆紀行第2回へつづく


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