“混沌の時代”をキーワードで解く

12月第二週に入り、忘年会ピーク期を迎えるが、外食関係者の口からは、「今年は異常。街に人は少ないし、予約で埋めるのも非常に苦労している」と溜息が聞こえる。一般景気の落ち込みよりも先に、外食市場は"底割れ"の予兆を見せている。



2009年末~2010年の飲食マーケットは一言でいえば「混沌の時代」ではないか。政府は「緩やかなデフレ宣言」をしたが、現実のマーケットは「ハイパーデフレ」といわれるほど「値下げの消耗戦」を強いられている。外食でいえば、「均一低価格」を打ち出す店が花盛り。「ドバイショック」が引き金となった「円高」によって、さらに「円高還元セール」「値引きの連鎖」が起こり、「デフレスパイラル」が現実に。「可処分所得」が減って、ますます「節約ニーズ」が高まるという悪循環が繰り返される。

「節約消費」の打撃を最も強く受けるのが外食。ただでさえ「草食男子」が増えているのに、職場には「弁当男子」まで増殖、外食といえば「マック」に「サイゼリア」「さくら水産」が三大アイテム、たまに酒を飲むのも「すき家」や「餃子の王将」で済ます。一方、「肉食女子」の財布の紐も固い。最近はネットで松坂牛や白金豚などの「ブランド肉」や割安の「わけあり食材」を取り寄せてホームパーティーという名の「内食」を決め込む。ワインもネットで「アウトレットワイン」を注文。

こうした「デフレセール」をテレビは煽る。デザインと品質で売れまくるユニクロに絡めて「ユニクロ型デフレ」という言葉も登場。飲食でいえば「良かろう安かろう」である。この「安旨志向」は「女装する女たち」の特質のひとつである「ノスタルジー志向」とシナジーし、「大衆酒場」「古典酒場」がブームになる。1000円でベロベロに酔える「せんべろ」族や女一人でホルモンを食べに行く「ホルモンヌ」も増え、「オヤジ市場」に堂々と女性が姿を現すようになった。

さて、2010年はどうなるのか。『文藝春秋』新年特別号で、エコノミストの浜矩子氏は「値引きの消耗戦から脱却する知恵を出せ」と訴える。ポイントはここだ。飲食は「一物多価」の世界である。知恵を絞れば、「単価アップ」も可能である。それは食材調達、調理技術での戦いだけでなく、「顧客心理」と戦う情報戦も重要になってくる。「節約モードから消費モードへのスイッチチェンジ」を促す戦略戦術。他店をフッて自分の店を選ばせる動機をどうプッシュするか。

「個店の時代」から「固有店の時代」へ移るといわれる。同じホルモンの店でも、「○○精肉店の○○ホルモンを食べたい」という「固有の選択」が始まっている。また「時間との戦い」も始まる。「twitter」「amebloなう」など「つぶやきサイト」の登場で「いま食べたい」ニーズを取り込む「いまだけ市場」も生まれるだろう。「節約できない私」をいかに創るか、2010年はその腕の見せ所であり、そこで勝敗が決まるのではないか。

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