青い空はどこに | てっちゃんのまったり通信

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yahooブログから引っ越してきました。引き続きよろしくおねがいします。


「来た!あそこあそこ・・・・。」

誰が最初に見つけたのかは分からないが、

その声と指さす方向に一斉に群衆は引き付けられる。

ほとんどあっち向いてホイ、の状態。

私の目も当然あっちに向かう。

その方向には、脚を下ろし着陸灯を輝かせた6機の航空機が

まっすぐこちらへと向かってきている。

パラリンピックの展示飛行以来のブルーインパルス。

あの時も今にも泣きそうな天候だったのを思い出す。

背景は残念だったが、この姿を目にするたびに何故か感動で

目が潤んでしまう。

何回も思う。

「すごい、本物だ」

と。

日が差していない曇天の空に着陸灯が映える。

「スモークオン」

こちらへ向かってきた6機が白い尾を引き始める。

カラースモークではないが曇天の空にも鮮やかにその軌跡を

見ることが出来る。

テレビや、youtubeなどでは味わえない爆音とともに

6機の編隊はあっという間に頭上を通り過ぎていく。



川崎市制100年のイベントにブルーインパルスが展示飛行をする。

お祝いの中心になるべき川崎市役所上空は羽田の航空管制区域なので

ブルーインパルスは飛べないらしい。

そこで、お祭りのメイン会場を等々力緑地の球場に持ってきた。

「等々力ってどこだ。どうやって行くのか。」

もろもろの情報を入手したのは、イベント前日。

天気予報は微妙だったが回復傾向。

うまくいけば、いい形の雲と青空の背景で・・・。

などと、都合のいいことを考えては自らで打ち消す。

今までの経験上、そんなにうまくいくはずがない。

航空写真は専門外で、しかも足場もおぼつかない状況。

大雑把な飛行ルートは発表されているが、鉄道と違い

空に線路があるわけでもなく、全くイメージが湧かない。

緑地の近くには多摩川が流れている。

多摩川の河川敷なんかが、空が広がっていていいかもしれない。

とも思う。

どちらも当日はすごい人手になるだろう。

考えた挙句、やっぱりメイン会場中心の飛行となるだろうと考えなおした。

現地に土地勘がない以上、メイン会場が一番安全なような気がする。



やっぱりの曇天。

それでも、昨日の大雨よりは良く回復したと言えるだろう。

一部広がった青空部分にいいタイミングで飛行してくれればと願うばかりである。

確率はかなり低いが・・・。

会場は、お祝いムード一色のフェスティバル。

気温もうなぎのぼりで、いろいろな要因で目が回りそうになる。

肝心のブルーインパルスの編隊は、どちらから来てどう行くのか

皆目見当もつかず、その手掛かりすら聞こえてこない。

そんな状態でしばらく会場を彷徨う。

いつもであればこの道を究めたであろう趣味人がそこらここらにいるのであるが、

この日は、少なくとも私の目には写らず、フードショップの屋台に群がる

多くの一般人ばかりに見えた。

やはり、メイン会場の球場のステージの後ろ当たりが望めるところがいいだろう。

何となく、時間待ちをしている人に話しかける。

「ブルーインパルスですか?」

「どちらから来るのでしょうねぇ。」

等と話し始めると、周囲にいた同じ思いを抱いていたであろう趣味人が集まり

しらずのうちに5~6人のグループになった。

皆、同じように足場に困っている風情に何となくおかしみを感じる。

しかし、こうなれば仲間である。

自衛隊から出ているルートマップを手に意見交換。

中には思い余って市役所に電話した方も。

もちろん、「さぁ、分かりかねます」という結論であったらしい。

しかし、この待ち時間が楽しかった。

「昨日の予行飛行が荒天中止になったのが痛かったねぇ。

必ず、予行を確認している人っているんだけど。」

喧々諤々(けんけんがくがく)、右往左往(うおうさおう)と

四文字熟語が飛び交うような状態でそれぞれに、あちこちを指さす。

結論の出ない作戦会議。結局は、出たとこ勝負。

いつもと違ってフェスティバルの一環なので、ピリピリした人がいないのが良いねぇ。

とはこのグループの共通意見。

「のんびりと待ちましょう。」

鉄道にしても、航空にしても皆様ご苦労は一緒のようだ。



始めに声をあげたのは、一般とみられる人だった。

「来た来た、あそこ、ほら、見えるでしょ。ああ、すごい・・・。」

まず、どこだと目を凝らす。

私は、多分見張りの当直業務は失格だろう。

やがて、目標物は、私にも分かる位大きくなり、あいさつ代わりなのだろうか

着陸灯の輝きにまず、感動する。

後で知ったが、これは、デルタ ダーティー ローパス という演目らしい。

つまりは、低高度でパス、目の前を通過するということ。

そして、6機分の爆音。

頭の上を低空で通過し、そのまま多摩川の方面まで直進した後に左に旋回を始める。

360度ターンをして、そのまま直進して去っていく4機と、さらにターンする2機とに分かれる。

去っていった4機は多分渋谷、新宿方面へ向かったのだろう。

残った2機が左右にに分かれて弧を描き始める。

東京オリンピックの五輪を描いた時の飛び方を思い出したが、

今日はスモークの航跡がおおきなハートを描き出す。

「これが、テレビで見たアレか。」

現物のハートに感動しきり。

下でクロスする場面は建物の影に隠れてしまったが、

大きなハートは、しっかりと形作られた。

今日は、それを射抜く矢は描かれなかったが、それは次の機会に

私のハートごと射抜いてほしいものだ。



やがて、渋谷、新宿方面へと去っていった4機が戻ってくる。

4機編隊でのダイヤモンド ローパス。

残っていた2機と合流し、再び6機編隊で旋回。

「これで終わりですねぇ。」

編隊が旋回していった方向は、入間基地を目指しているように見えた。

球場の中からも再びライブの音楽が聞こえて来る。

プログラムは先に進んだと言っていいだろう。

その音楽を聴きながら。

「天気は回復しませんでしたね。」

「じゃ、また基地でお会いしましょう」

と解散。

いつもの通り、喫煙所で、撮影後喫煙を行っていると・・・・。

まさかの爆音が。

空耳などではなく、いきなり6機で最後のローパスが空に展開される。

時すでに遅し。

喫煙所の上には樹木がおおいかぶさっており、

カメラを構える余地などなく呆然と見送る。

航空写真はこんなことが起こるのかと呆然とした。

行ってしまえば、帰ってこないのが鉄道写真。

航空写真はこんなことが起こりうるのかと、改めて勉強になった。

「結局、肉眼で見るのが一番心に残るよね。そ、肉眼レフ(笑)。」

等と待ち時間に戯言を言っていたことを思い出す。

今回の最後はまさに肉眼レフ。

煙草一本分くらい前まで一緒にいた趣味人の面々はどこで

このローパスを見ただろう。

きっと腰を抜かさんばかりに驚いたに違いない。

そんなことを思いながら面々の表情を想像して一人でクスクスと笑った。



先日の鳥取、島根の撮影遠征もなかなか天気に恵まれず。

青い空はいったいどこへ行ったのだろうか。

次回こそは、青く染まった空を背景に文字通りの

ブルーインパルスを味わってみたいものだ。

帰り道に覗いた売店で、ブルーインパルスの今年のカレンダーを

500円で入手しホクホクして帰宅の途についた。


撮影日:2024年6月29日
撮影地:等々力緑地 等々力球場付近