「ケルソス駁論」第1巻を拾い読みして | 無駄話。

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鬱病・適応障害持ちが書く与太話です。「下劣な党派心」による「あら探し」が多いので、合わない方はご遠慮願います。

 

 

 ヤフオクで版元ではオンデマンドしかないオリゲネスの「ケルソス駁論」の第1巻を落札して届いたので拾い読みする。去年の年末に3巻目が出たので、1巻目は昭和年間、2巻目は平成年間、3巻目は令和年間に出て、文字通り世紀を跨いだ翻訳だ。第1巻を見ていると、秦剛平の「ヨセフス」にあるオリゲネスが使っている「ユダヤ古代誌」には所謂「キリスト証言」なるものがない記述が出て来た。オリゲネスが使ったか記憶していた「ユダヤ古代誌」のテキストには「キリスト証言」なるものはないのは確かだが、「ケルソス駁論」の写本まで「キリスト証言」なるものと同化させなかったとも言える。これはこれで面白い。

 「ケルソス駁論」にはナザレのイエスの父親としてパンテラなるローマ兵について反論がされている。そういう名前のローマ兵の墓石があるので、彼がイエスの実父だと言われるけれど、本当の事は分からない。ただし、ケルソスはオリゲネスより先に故人となっているから、伝承自体は結構古い事は分かる。ユダヤ教徒が「処女懐胎」を批判する形で、このネタを伝えていたから、元はユダヤ教徒なのか、それともキリスト教を批判する「異教徒」が生み出したのか。

 アーマンの「書き換えられた聖書」に引用されている個所もあったが、オリゲネスはマルキオンやヴァレンティノスなどが改竄していると反論しているのを取り上げないで「キリスト教徒の書記」が改竄しているとあるだけなので誤解してしまった。マルキオンはルカ伝を自分なりに本文批判して「不用な」テキストを削除した形で構築して、パウロ書簡と並んで自派の教典としたのが新約聖書への道だから、ここは分かるが、ヴァレンティノスについてはグノーシス主義者の福音書を指すのだろうか?

 「ユダヤ古代誌」にしろ福音書にしろ、今伝わっている形と元々の原稿が一致しているとは誰にも分からないので少しでも近づけるように研究されているのだが、「ケルソス駁論」は元々、ケルソスによってキリスト教を「愚民が崇拝する新興宗教」とこき下ろす形で書かれた反駁書に対する反駁だが、今となっては窺い知れない事柄を取り扱っているので、面白いと言える。