54点。

「心はいつもぉ清らかにぃ〜」原作は古谷実の同タイトルの漫画から。全4巻。

〜あらすじ〜

15歳の住田祐一の願いは“普通“の大人になること。同じく15歳の茶沢景子の夢は、愛する人を守り、そして守られて生きることだった。そんなふたりの日常が、ある事件をきっかけに180度変わってしまう。罪を犯し、破滅へと向かう住田を茶沢は救おうとするが……。

（※映画ナタリーより抜粋）

以下、ネタバレせずに、感想。

□原作は超えてないけど…。

根幹の大きな違いは、住田にだけ視える化け物が存在していないこと。なので、結末は正反対。その描写に頼らないがために、住田のキャラを過剰にして、それでも茶沢が付いて行けるように、彼女の境遇を同じく不幸にして若干、異常にした。そこまでしてたけど逆効果、何故、ここまでに彼女が尽くせるか説明が出来たとは思えない。だけど、結末はこれで良い。人間は、これで良いんだと私は思うから。

「住田、頑張れ！頑張れ、住田！」

□「行けよ、おい！行けって！」

顔を出す度に家の中のお金を奪い、住田に暴力を振るうアルコール中毒親父。住田はコンクリートブロックを手にしたものの、ここは踏み止まる。

機嫌が良い時は暴力こそ振るわないものの、頼むから死んでくれと住田にお願いする始末。それも、すっかり言ったことを忘れて、繰り返すのだから性質が悪い。ボート小屋の赤いトレーナー客とのやり取りは、原作では住田を気に掛けるお巡りさんとの問答。キャラが違えば意味合いも変わり、それを悪意に変える。

□「歩け歩け地獄」

原作にも出て来る言葉なんだけど…「居ても立っても居られない」という言葉があるように、人間ってどうしても、それをしないといけないのに、自分の力で出来ることを超えていたりして、どうしようもない場合に取る身体的行動が「歩く」ことだったりする。体を酷使して感覚を麻痺させて、自己効力感を高めるといったある意味自傷の一種みたいなもので、それで解決はしないんだけど。

これって理には適っていて、歩くと無理矢理にでも、頭が回るように人間の体の構造はなってる。リアルさを感じさせるひとつの要因だと思った。

□「タクシードライバー」のデ・ニーロ。

原作にしか出て来ない言葉なんだけど…。考え方の飛躍はこういうこと。デ・ニーロとの違いは、彼を気に掛けて介入する存在の有無だ。

□「住田ってガキには未来がある。俺はこの金で、あの子に未来を託したいんだ！」

それが正しいかどうかは置いといて。原作では同級生で友人だった夜野を大人に、元社長で震災被災者、ホームレスの設定に変えた。

彼の行動に説得力を持たせた悪くない変更だと思う。住田は自分の所為で、周りの人に迷惑を掛けることを極端に嫌う。普通に生きたかっただけだからだ。だけど、まだ子どもじゃんか、笑ってる方が可愛いよ。

〜総評〜

原作の住田の本質は優しい。映画はそれが見えないレベルで、周りに人が集まる理由が薄くなってる。ただ、原作には無い、茶沢のあのしつこさが無ければ、彼は救えなかったと考えた時、あの二階堂ふみの大袈裟なうざったい演技が、私には愛おしくて愛おしくて堪らない。大体の人は普通では救えないから、普通じゃなくて救うお話は嫌いでは無いのかも知れない。

二階堂ふみが主役だと思って見ると、切なくて良いんです。

ヒミズ (2011)