56点。

「回路って適当に作っても、何となく動いちゃうもんだよね。」

～あらすじ～

一人暮しの平凡なOLだったミチ。しかし最近、彼女の周囲では同僚の自殺、勤め先の社長の失踪など無気味な事件が相次いでいた。友達が、恋人が、そして家族までが次々と消えていく。時を同じくして、大学生亮介の自宅のパソコンには、インターネットにアクセスしてもいないのに「幽霊に会いたいですか」という奇妙なメッセージが浮かび上がり、黒い袋に覆われた異常な人の姿が現れた。次第に廃虚となる町で、ミチと亮介は出会い、迫り来る恐怖に挑むのだが……。

（※映画ドットコムより抜粋）

以下、ネタバレ。って言うか、感想。

□オカルトにテクノロジーの要素が加わった、テクノホラー。

魂は輪廻転生するし、あの世は物質世界では無いので、パンクしない説があるけど、それって誰も知り得ないことだからね。当映画の設定では、あの世は魂がいっぱいで溢れていて、この世に留まる幽霊が増えて、視えるようになって来たってのと、それとは関係性が薄いけど、インターネットのサイト内にも幽霊が居付いていて、そこに繋がったら襲われちゃうというか？徐々に進化して、テレビやラジオ、電話も危険になるって言うんだから、最早、何でもアリ。設定もだけど、他にもいろいろあるの。

□この映画で表現したのは兎にも角にも、徹底した〝違和感〟だわ。

例えば、加藤晴彦の演技。例えば、細かい矛盾が散見するストーリー。テーマですら整合性が危うく、どの方面からの考察でも、正直、無理が生じるんだよね。

ストーリーで解り易いところだったら、同僚が死んですぐ、お茶しに行くとか、川島が脈絡も無く、春江を呼び捨てにし始めるとかね。春江の

「幽霊は人を殺さない。」の台詞も不思議よね。直接の描写が無くて、人間が消えるか自殺するかだけど、間接的にでも幽霊が人を殺してるようにしか見えないもんね。春江が自殺する前の「一緒に？」の台詞もとっても変だし、給水塔から人が飛び降り自殺するところもCGに頼んなかったのに、ラストの飛行機事故でチャチなCGを採用してるんだもん。

つまりこれ、気付かない程度に抑えた違和感の集合体なんじゃないの。当記事上から３つの写真も、映像に詳しい人なら、どう撮ったのか頭を悩ませるショットらしいよ。隠した鏡を効果的に使って、不可思議な映像を撮影してるんだとか。私はそっちの方面に明るく無いから、詳しく触れないけどね。

□多分、恐怖の本質を追求したと言うよりは〝何か怖い〟を体現したんだと思う。

当映画の一貫しているところは、終始、不気味な音響効果で視聴者に漠然とした恐怖感を与えているのと、映画全体に漂う薄暗い色調であったり、幽霊自体は唐突に現れているけど、ぼんやりとしか見えないところだ。ジャンプスケアなんて一切無い。

テーマは人間が本質的に恐れる死の恐怖だとか、孤独のように見せてるけど、例えば「タクシードライバー」での孤独の理論を参考にすると、他者が居なければ、孤独の定義すら危ういというか、それってもう無でしかないじゃん。「死は永遠の孤独」であるならば、劇中の人間が死ぬことや消えることに何の意義があると言うの。一番の恐怖に向かって行くとか矛盾してるし、みんな死んだらどうなるかなんて解ってないでしょ？それって誰も知り得ないことだからね。

となると、真の恐怖は取り残されること？ゲームセンターでメダルゲームやってて、ふと気付くと自分以外、誰も居ないとか。マジ、怖いもんね。

～総括～

劇中で消えて行く順番は、他者との繋がりを大事にしない人間から。次に、繋がりを断ち切られた人間。そして、ある時期を境として、加速度的に人間が消滅して行く。例えば、ミチは最初こそ孤独を感じていないけれども、彼女を取り巻く周囲の人々が次々と消えていったことで孤独感が増していく。結局さ、人間の存在って自己以外の他者が居なくちゃ成り立たないんだから。生きて行くのと同義だと思ったよ。

みんなで助け合っていかなければ、つまんないじゃん？人生ってさ。

回路 (2001)