邦題:家族を想うとき 原訳:(宅配事業者の不在届の文面)

55点。

 

邦題からのイメージに加え、ジャケットの写真を見たら、家族をテーマに据えた感動映画を想像させておいて、大枠で社会経済システム、取り分け、ギグ・エコノミーに従事する労働者階級の家族が直面する苦悩を描いた内容で、人によっては特別、憂鬱にさせられるかも知れないドラマ映画。

こういう、イメージとの落差で、鑑賞後の爪痕を残そうとするのってズルい。ホラー映画のジャケットだって、内容通りに怖くしてるんだからさ。

 

ただ、私、当映画が響かなかった層に居て、そんな(冷たい)人間がレビューなんか書いて良いの?って結構な期間を悩んでいたんですが、そもそも、結構な数の映画をバッサリ切っていたので今更ですね。何故、響かないかの意見だって参考にする方がいらっしゃるかも知れませんし…。ただ、評価高いんですよね、この映画…。

 

 

~あらすじ~

イギリス北部の都市ニューカッスル。ふたりの子供を育てるリッキーは、マイホーム購入のために、大手配送業者のフランチャイズの下請けとして働き始める。妻アビーも介護福祉士として忙しく、息子セブと娘ジェーンと過ごす家族の時間は減っていくばかりだった。

(※映画ナタリーより抜粋)

 

 

以下、ネタバレ。って言うか、感想。

 

 

□問題の本質をやや、一面的に捉えていないかなって思ってしまったこと。

このような不安定な労働条件をもたらした歴史、経済的な背景を掘り下げていない、さらっと表面に触れるだけでも良いから、判断材料として提示しなければ

 

①この家庭だけの不幸の結果に見えるかも知れないかなって。同じ理由で逆に、

②ゼロ時間契約が家族に与える直接的な影響として強調していると感じるなと。

 

①については当然、当映画のテーマについて充分に理解が進まないものでもあるし、②については、根本的な制度問題に対して微妙な理解を促すことなく、視聴者を特定

の視点へと誘導していると感じる。

 

 

 

「問題アルよ!不憫よ!みんな声を上げるアル!」…私は私で考えたいの。

 

 

□付随して、雇用主と雇われ社長の間では純粋な敵対者として描かれていること。

ギグ・エコノミーにおける複雑な関係を単純化しているので、問題の一面的な見方を助長するかも知れない。

 

③については、契約の内容の詳細が劇中にて開示されない以上、一方を悪く見ることが間違っていると思うから。もう、その考え方が資本主義に迎合するものって言われたらその通りでしか無いけど…。劇中でも同じような他の労働者は無理をしていない描写もある。これって、会社経営したものと同一に考えたなら、全てのリスクは負うことになるのは当たり前って言ったら叩かれるんだろうな、やだ、怖い。

 

 

 

 

□いったい何と闘えば、家族を幸せにできるの?というキャッチ・コピー。

この映画は今から5年前の作品ですが、ここ、日本に当て嵌めた場合には、認識にズレが生じると思います。マイホームを持ちたい、良い車に乗りたいとか、今の若者には夢の又、夢のようなもの。それもそうですが、仕事づくめの生活よりもプライベートの時間を大事にしたいという人も、大いに居ます。

 

「キーさえ無くなれば―戻れると思ったの」

「昔の父さんに戻ってくれ 昔の生活に 俺の望みだ」

 

アレです。〝敵は居ない〟んですよ。資本主義って良くも悪くも流行り廃りなので、そんな業務形態を誰も相手にしなければ、露と消えて行くんですけどね…。

 

 

借金があるにしても、切り刻まれるわけでもないから、たぶん貧乏生活でも、家族が一緒に居ることを子供たちは望んでいるだけなので、とりあえずはリッキーの認識を変えて欲しいって思いました。でもこれも、どうなんだろう。送り出す側の気持ちで見てしまうから、こういう感想なのかも知れませんけど…。

 

 

傷付いているパパを仕事に行かせたい家族なんて、絶対に居ないよ?

 
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