邦題:オテサーネク 妄想の子供 原訳:(チェコの民話の)食人木
79点。
「FALL/フォール」にて "CG技術の進歩" による弊害についての私見を述べましたが、当監督はCGを毛嫌いしているとの事。曰く
「実生活の感情的な経験を経た事が無い為、現実に触れた痕跡が無い。だから(映像が)死んだまま」だって。そう!私もそれが言いたかったの。否定派ではないけど。
と言いつつ、サクッと裏切って、当映画のどこかで4秒使ったらしい。私は悲しいかな全く解らなかったけど、みんな探してみてね。
~あらすじ~
その夫婦は子宝に恵まれずにいた。ある日、夫は偶然見つけた切り株が子供の形に見えたことから、妻のためにそれを持ち帰る。妻はそれを我が子と信じ、求められるがまま食べ物を与え続けた。やがて切り株の子・オチークは巨大化して食べ物を求め…
(※Filmarks映画より抜粋)
以下、ネタバレ。って言うか、閑話休題。
ひと言でいえば、凶悪な映画です。
当監督は "食べる" という行為を作品の中で頻繁に扱うのに、意図的に食べ物を不味く見せる。理由は「子供の頃から食べるということが好きではなかったからだ」そう。
これは全作品に共通する彼の根底にあるものだけど、当映画は食に執着する食人木の民話がベースで、化け物のはずのオチークの食べ後は綺麗なもの。ちゃんと手も洗います。←これが重要なところです。
最初のシーンのインパクト。赤ちゃんの複数のショットを重ねていって、女性視聴者の母性を呼び起こしておいてからの、存在が許されない赤ちゃんの量り売りに繋ぐ。
(実際には魚と思われるが、明確な描写をしない)それから、赤ちゃんがいやに目について、腰が曲がったお婆さんですら、赤ん坊を背負っているのかと思わされる。
それくらい、カレルも切望している説得力を持たせます。後に劇中で発覚しますが、夫婦ともに不妊症なので、お子を授かる可能性がありません。因みに量りは3.5キロを指します。←無駄に回収してきます。拘り過ぎでしょ。
開始14:30秒で私は泣いてしまい、15分には前が見えませんでした。二人の気持ちを想像してしまうと。…そこからの異常具合の振れ幅でした。右に振れた針は同じ様に左に振れるという事です。
つらつらと書いて、一体何が言いたいのかというと、目を背けたくなる様な事を無理矢理にも見せてくる手腕が凄いのです。アルジュビェトカのスカートの中を含む全てがそう。テレビ的に言うと、チャンネルを変えさせない。でしょうか。
これぞ、シュールレアリスムの真骨頂です。
ラストの管理人さんも最高ですね。結末は解っているんですから、ここが最良で他は蛇足になりますもん。
と言う訳で、響く人には響きまくるであろうシュールレアリスム、ダーク・コメディホラー。この系統で最高ランクの作品だと思うし、お薦め点数との整合性は取れていないんだけど、誰にも全くお薦めしないし、出来ません!