イスラエル初代首相ベン・グリオンや脳性麻痺のこともたち そして様々な分野の方へレッスンをしたことで知られるモーシェ・フェルデンクライス(1904-1984)注1)。

今から40数年前、

モーシェは来日したことがあります。


そのときのエピソードを

モーシェの最初のアシスタント

ミア・シーガルのインタビューより

少しずつご紹介します。

 

 

........................(つづき) 

 

■ 野口 晴哉先生の一言

 

野口先生のところでのこんな体験を、モーシェに手紙で伝えたの。モーシェが日本に来たとき、すぐに野口先生に会いたいと言ったわ。(略)野口先生が近くで見ている中、300人の生徒を相手に FI と ATM 注2)をやった。 

   

   このとき、モーシェは身体の片側は動かして、反対側は実際に動かさずにイメージの中で動かすように指示したの。野口先生はこのATMについて「おもしろかった。中でも反対側は想像するだけとうのが特にね。新鮮だったよ。」とおっしゃったわ。

   

   FI 注3)については、「あなたのやっていることと、私のやっていることには違いはないと思う。ただ、私は彼らに食べ物を与え傍においておくのに対し、あなたは食べさせて、消化までしてあげている」と言ったの。すごい洞察よ。これは天啓だったわ。

 

                 (略)

 

   私は彼(野口先生)のクラスには全部出て、彼の仕事が終わると、お互いにレッスンをしあったの。私は親しくさせていただいていたけれど、正式に彼の技術を習って練習し学んだわけではないの。でも、感銘を受けたものって身に付いて行くでしょ。おそらく、私は彼の振る舞いや哲学から影響を受けていると思う。”食べさせてあげて、消化までしてあげている”というモーシェに対する彼の見解は、ものすごく衝撃的だった。私は”消化までしてあげる”ことはもうしないと決めたわ。そのかわり、レッスンで分からないところは自分で考えてもらおう、ってね。その後、レッスンを削って短くしたの。

   

   モーシェ自身も野口先生の見解に影響を受けたと思うわ。彼の提案でわたしたちは旅行の予定を短縮して、もう一度野口先生に会いに行ったのよ。

             

 

                (略)

 

  

   彼ら(東洋)の哲学は、モーシェのものと同じものだと思う。つまり、両者とも身体全体をひとつの単位として考えているということよ。両者とも、人を見るときに部分をみるのではなく、全体を見るように促すわ。(略)

   

 

 

■本質を掴みたかった。そのためには全体を見なければ

   

  -質問者–

  あなたはここまで人生における沢山の重要なことについて話してくれました。

 

  結論として、すばらしい先生方に出会った後でも、私はモーシェのやっていることをやっているのよね。彼は私が学んだすべてのことを取り入れたとも言えるかもしれない。彼はそんな様々なメソッドの知恵を、もっとも実用的にかつ効率的に使って、わかり易く明確におしえることができたわ。彼は生徒に必要な要素をすべて与えたの。

 

  ー質問者ー

  彼は、何年も続けたことで得た柔道や柔術に関する知識や修練して身につけたものによって、あなたのいう文化の中に隠された日本の伝統的叡智を見抜くことができたのでしょう。モーシェの洞察力において、こんなところが日本的ですよね。

   

 

   彼は東洋の魂や本質を吸収して、それに西洋的なすばらしい考え方や学問的な鋭さ、理論的な思考法を加えたのよ。モーシェは確かにひらめきをもっていた。彼の目は茶色だったけれど、何かに興奮すると黒くなるの。とても不思議で、鋭くて、すばらしい目だったわ。

 

                       

(つづく).................................

 

(以上、ミア・シーガルインタビュー『Somatics 秋冬号』1985-86年。

日本語訳「フェルデンクライスを継承して」p51-57より一部抜粋)

 

 

 

 

 

最も初期からモーシェの身近で

とともに歩んで来たミア・シーガル。

ミアは日本に住んでいた

1969、70、71年の間に、

野口整体の創始者

野口 晴哉先生(1911-1976)

をはじめ鍼、お能、柔道のなど

々なお師匠と出会います。

 

 

 

 

東洋と西洋がめぐりあうところ。

 

 

 

ミアは東洋と西洋の魂をつなぎ、

80歳を超えた今もわたくしたちに

モーシェの教えを継承し

指導を続けています。

 

 

2010年東京で行なったワークショップの冊子

 

 

忘れられないワークショップのひとつです。

 

 

 

注1)モーシェ・フェルデンクライス

バリのソルボンヌ大学で数学と物理学を学び博士号を取得。

後に、嘉納治五郎からパリで柔道を習い黒帯となり、フランスに柔道クラブを創設。

第二次世界大戦中、イギリスに逃れ、英国海軍省の対独潜水艦作戦の士官。

戦後はイスラエルに帰国して国防軍の電子部門の責任者。

早くからヨーガ、フロイト、パヴロフ、大脳生理学、解剖学、神経生理学など

身体と精神の官営の研究をおこない、東洋の身体メソード研究のために来日したこともある。

(『心をひらく体のレッスン』モーシェ・フェルデンクライス著、安井武 訳 見開きより)

 

注2)ATM 

 ”Awearness Through Movement” 

アウェアネス・スルー・ムーブメントの略。

グルーブでのレッスン。

 

注3)FI 

”Functional Integration" 

ファンクショナル・インテグレーションの略。

個人のレッスン。