毎年熱中症による救急搬送の数が驚異的なペースで発生しており、温暖化の影響を肌で強く感じるようになりました。
そんな中、世間ではとある論争が巻き起こっています。

 

 それは…
「『夏の甲子園』は本当に甲子園球場で開催すべきなのか!?」
というちょっと驚きのテーマ。

 

猛暑を原因とする相次ぐ熱中症により、炎天下の甲子園球場で開催することについて、懸念の声が上がるようになっていると言います。当事務所の田村勇人弁護士が出演した『直撃LIVEグッディ!』でも大論争が勃発していました。

 

 このテーマについて、生放送直後の田村にインタビューしました。
Q.異常な高温の中で行われる甲子園球場での試合開催についてどう思いますか。
A.炎天下でのプレーは避けるべきだと考えています。具体的にはグラウンド上のWBGT(注1)が31以上になるときには試合を行うべきではありません。WBGTは科学的な根拠を元に算出された暑さに関する指数ですので、原則運動禁止とされる31以上では試合を行うべきではなく、28~30でもイニングが長くなる場合にはイニング中でも休息を与えるべきだと思います。

 代替案としては、仮に甲子園球場で行うならば、気温が上昇する前の早朝や日が落ちた後の夜間に開催すべきでしょう。それが難しいのであれば、屋内球場などに会場を変更すべきと考えます。

 

Q.甲子園球場ではなく京セラドーム(注2)で開催するのはどうかという意見も出ていますが、それについてはどう考えますか。
A.京セラドームが利用できるのであれば京セラドームで開催すべきだと思います。京セラドームの経営者としても、「今年は急な事態なので球児たちのためにも無料でお貸しします。その代わり、来年からは毎年こちらで開催してくださいね」と伝えれば営業活動になるのではないでしょうか。また、高校野球期間中は観客席を無料開放して京セラドームの良さをより多くの方にアピールしたり、高校野球安全開催基金をつくって寄付を求めたりといった、猛暑による緊急事態を味方に変えるようなアイディアもあると思います。

 

 また、猛暑と部活動のあり方について、田村は続けてこう述べています。

 

「『生存バイアス』という言葉がありますが、これは生存した人や物のみを基準とすることで誤った判断をしてしまうことを指します。これを教育や部活動に当てはめると、猛暑の中で休息をとらせないなど過激なしごきで亡くなった子・辞めていった子は大勢いますが、その中を生き残った人たちがつくった社会では、『最悪の結末になることはない』と暗黙の了解がまかり通り、その結果また新たな被害者を生む、負の連鎖が続いてしまっているという現状があります。
 部活動中に起こる熱中症事故は単なる天災ではなく人災の側面もあると言えます。過去の判例では猛暑日に部活動を行なった事例について担当教員の過失や学校を運営する自治体に賠償責任を認めたケースもありますし、教員が業務上過失致死に問われた事件もあります。
 今回の甲子園問題もそうですが、どんな暑さにも耐えきれる子ではなく、暑さに弱い子でもベストなプレーができるかどうかを基準にすべきであり、WBGTなど科学的な根拠を厳守し、安全性を確保した上で高校球児たちの熱闘が見られる状況をいち早くつくっていかなければならないと思います」

 

 田村はこのように述べていますが、他にも「甲子園球場をドーム球場にしては?」「開催時期をずらせばいいのでは?」といった様々な意見が飛び交っているようで、猛暑をきっかけに始まった論争で、今後日本の部活動はどう変わっていくのか、注目していきたいと思います。

 

注1:WBGT(暑さ指数)とは、熱中症を予防することを目的として20世紀半ばにアメリカで提案された指標。数値28~31未満で「厳重警戒」、31以上で「危険」とされている。 「環境省・熱中症予防情報サイト」より(http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

注2:「京セラドーム大阪」は大阪市内にあるドーム球場。甲子園球場から直線で10kmほどに位置する。現在、夏の高校野球期間中は阪神タイガースがホーム球場として利用している。