む、む、無麻酔で歯石除去!? | Useless Monologue

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小動物獣医師(フリッパー動物病院@神奈川県逗子市)による日々の雑感覚書。


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最近、なかなか怖いことが一部の病院やペットショップで行われている。
なんと無麻酔で歯石除去処置をするというのだ…。

実はこれ、最近に始まった事ではない。
昔は動物病院でもこのような処置を行っている病院が少なからず存在した。
割と有名な病院でも以前は無麻酔でやっていたという話を聞いたことがある。


しかし、様々な情報が得られる現在でこのような方法で行うのは如何なものか…。


近年の主流は、動物の歯科処置は麻酔を掛けて行うという物だ。
動物は人間のように口を開けて大人しくしていないので麻酔を行うという理由はある程度は理解していただけると思う。
しかし、実はこれには大人しくさせるという事と同じくらい重要な意味がある。

それは気管チューブを気管に挿管しておくことで、気道確保を行うこと。



歯石というのは歯垢の石灰化したもので、それ自体も異物となり得る上、その周囲には多数の細菌が付着している。基本的には処置をしている術者ですら、破砕した歯石を吸引しないようにしっかりとマスクをして行わなければならない。

そのような汚い物を無麻酔の状態の口腔および咽頭に広げてしまうというのがどういうことか想像していただきたい。

人の場合は歯石を除去している最中、興奮して暴れるなどということはしない。
それどころか、多少緊張して咽頭部を狭くして、口腔内に広がるミスト状の破砕物を吸い込むことを防ぐことが出来る。
ちょっと不快感を我慢して、終了後にうがいをして破砕物を出してしまえばOKだろう。

だが、動物にはそのような認識はない。しかも、歯石除去自体が多かれ少なかれ不快感を伴ったり、ミスト状の水分が口腔内に広がることに嫌悪して、興奮して吸い込んでしまうことがある。
咽頭に付着したものも、うがいして除去することができないため、処置後に吸い込んでしまうことがあり得る。
これがどれだけ危険な事かは分かっていただけるだろう。


実際、過去には無麻酔での動物の歯石除去中に破砕した歯石や除去した歯垢を吸引させてしまい、それによる誤嚥性あるいは感染性の肺炎を起こさせてしまうという事故が少なからず起こってきた。
無麻酔ではなくとも、注射麻酔のみで気管確保しないで行っている病院でも、同様の事故はあった。
(後者はおそらく麻酔を掛ける事が重要なんだと勘違いして、気道確保の重要性に気付かなかったのだろう…。残念である)

そうした業界的な痛い経験と、海外の獣医歯科学に関する豊富な情報の流入が、現在の「動物の歯石除去は破砕片や汚染したミストを誤嚥しないように気道確保して全身麻酔下で行う」というコンセンサスを形成してきている。
歯科処置で全身麻酔を掛けることには非常に重要な意味があり、それだからこそ全身麻酔のリスクが認識されているにも関わらず、一般的に採択されて来ている。



是非、無麻酔、あるいは気管挿管しない麻酔下での歯科処置の危険を認識していただき、このような危険な治療行為は受けないように注意していただきたい。

また、もしも、それを行っている当事者であれば、今すぐに考え直すべきだろう。事故が起こっていないとしたら、それは単にラッキーなだけである。起こってからでは遅い。これはあなたのためでもある。

まぁ、こういう人たちの中には事故が起こっても、そのせいとは認めず、その動物がアンラッキーなだけと思う人もいるのかもしれない… もっと命の重さを感じようぜ… 反省しようぜ…。
直接関係無いけど、十分な麻酔前検査もしないで麻酔を掛けて、事故が起こったら「麻酔が合わなかったんでしょう」と言ってしまう人に近い臭いがプンプンする…。




※因みに麻酔が掛けられない子には「リーバⅢ」という歯石をじっくり地道に溶かしていくためのデンタルケアアイテムがある。動物病院やデンタルケアグッズに力を入れてるショップにおいてあるはず。
ハーブ系の薬で、これを口腔内にスプレーすることにより唾液を増強し、歯石を付きにくく、あるいは歯石表面を融解させる作用をもたらすという物。
作用に個体差はあるが、大きな変化を示す子もいるので、何も出来ないなら使用してみるとよいだろう。

もちろん、まだ汚れて無い子には、毎日歯磨きしてあげましょうね。生涯のうち歯科処置ゼロ回で済むのが理想ですから。

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