原作:西尾維新

作画:岩崎優次

 

第四号「解いて暗号の緒を締めよ」

 

扉絵は、『自己紹介Xワード』徐綿菓子編

 

前回から始まっている『いろは坂いろは対徐綿菓子の暗号対決』のおさらいから始まる。

 

解答時間は30分で、お互いペナルティ付きとなっている。

いろはが勝ったら、徐と夕方多夕の二人は洞ヶ峠凍の追跡をやめる。

徐が勝ったら、いろはは眼鏡を二人に渡した上で学園を退学する。

ただし、現在、いろはの持っている眼鏡はバッテリー切れで使用できない。

 

このピンチに歯が鳴るぐらい震えるいろは。

しかし、「いろはのいだよ、暗号文なんて光らないのが当たり前だもん」と震えを押さえ込んで、眼鏡を床に置く。

この行動を徐は降参の証だと判断するが、いろはは「これは担保だよ」と主張する。

もし暗号が解けなくても、腹いせに眼鏡を破壊しない証拠にするつもりだ。

その代わりに、とヒントを要求する。

徐は「勝手なことを……!」といらだちを隠せないでいるが、後ろで見ていた夕方が「ヒントは星の数ほどあるよ」と言葉を投げる。

これを聞いたいろはは「30分で戻る!」と大慌てで、二人と眼鏡を残して体育館から走り去る。

 

残された徐は、勝手にヒントを出すな、と言わんばかりに夕方を睨むが、徐もヒントを出していたから自分からも出した、と夕方は機先を制する。

ヒントに関して、徐は「妙に調子が狂う奴ですよ」と本来出す予定はなかったような発言をする。

さらに、眼鏡を置いていくだけでなく、あの場面で暗号バトルに付き合わずに『眼鏡を壊すぞ』と脅して交渉もできた、と考えており「いるわけですね。追い込まれても暴力に訴えない男だって」と一旦いろはの戻りを待つ姿勢を示す。

 

その頃、いろはは図書室にいた。

・暗号文の中の☆の数が51個あることから、『星条旗(アメリカの州の数)』を連想する。

・星条旗の星の数が50個なのは、ワシントンD.C.(コロンビア特別区)はどこの州にも属していないため、ノーカウントとなっているから。

・このような50個とされているが、実際の数は51個あるものといえば『あ、い、う~で始まって、わ、を、んで終わる50音表』

 

ここまで行き着いた時に、徐の「お嬢様の暗号を見事解いてみせた、いろは坂くんにとっては悪い条件ではないはずですよ?」という発言がヒントだったことに気づく。

そこには、冒頭の『自己紹介Xワード』にもあった、尊い勉強法の答えの『過去問復習』と、自力で『いろは歌』のパングラムが解けたなら、同じ法則の暗号を解けないとおかしい、という挑発、この二つの意図があるように、いろはは感じ取る。

 

☆の中にはC3やs1といった文字と数字を組み合わせたものが書き込まれている。

これに対しては、州の名前をアリファベット順に並べる。

A1にはAlabama、A2にはAlaskaと文字と数字の組み合わせに当てはめると、すべての州を使い切ることができる。

これに50音表を使用していくと、以下のようになる。

 

いろはは州の名前やアルファベット表記を調べるために地図や辞書を用いて、一旦解読表を完成させてから、暗号文に平仮名を当てはめていく。

当てはめながらも、いろはは、この解読表がそもそも正しいのか、面倒くさい、手間がかかる、と考えている。

ここで、脳裏に2年B組の教室での洞ヶ峠の問いかけが響く。

「(暗号解読は)面白くなかった?」

あの時何も言わずに出て行ったいろはだが「面白い!!」と思いながら、徐から渡された紙に暗号の答えを書き込んでいく。

 

暗号解読を終えたいろはは体育館に戻った。

夕方も徐も眼鏡も出て行った時のままだ。

そこで、暗号をどう解いたのか、細かい部分の解説をいろはは行う。

・塗り潰してあった☆は濁点。

・上述のs1などの小文字が使われているものは拗音や促音。

・やゆよ、わをん、の行の中にある空白に当てはまる州の部分は句点もしくは改行。

 

この解釈に対し徐は「とてもあざやかですよ」と正解を認めつつも、30分の制限時間に対して3時間かかったことを告げる。

この事実に、いろはも天を見上げるしかないが「解けるとは思ってませんでした」と徐からねぎらいの言葉がかかる。

このままでは転校となる状況でいろはは、暗号を解いたことと制限時間をオーバーしたこと、この二つを挙げてスコアは1対1の引き分けだ、と主張する。

徐は「あ?」と怒りの感情を露わにし、夕方は腹を抱えて笑うが、いろはは延長戦もしくは夕方からの挑戦を受ける意欲を見せる。

 

夕方はというと「弱い者が嫌いだから」やらないと言って、普段から片手で弄んでいる知恵の輪を外してみせる。

この発言に息を呑むいろはを尻目に「じゃなかった。アタシは弱い者いじめが嫌いなんだった。あと5つくらいレベルが上がったら遊んだげるよ」と夕方は徐を連れて体育館を去って行く。

眼鏡を残していったことから、二人はいろはの引き分けの主張を認めたようだ。

 

三人のやりとりを体育館の上にある観客席から見ていた人物がいる。

それは、眼鏡の充電器を届けに来た洞ヶ峠だ。

CGは、この結末に「かなりゴリ押し引き分け」だと評するが、洞ヶ峠としては「ドローがベスト」なようだ。

さらに、いろはに渡した眼鏡のチートな点について、暗号を解くための補助だけでなく「使用者すら暗号兵器に促成する凶悪さ」にあると語る。

 

洞ヶ峠がいることに気づいていないいろはは、暗号解読の果てに完成した文章を見返している。

「暗号の答えも暗号みたいな…」文章ができたらしく、隠された意味はないかを考えている。

何気なく、眼鏡をかけて暗号を見ると、バッテリー切れしていた眼鏡が再起動する。

レンズには「現時点デノ解凍不能…」と表示される。

ここで今号のタイトルが出て終わる。

 

その④に続く

 

 

感想

『いろは坂いろは対徐綿菓子』はかなり無理矢理感のある引き分けに終わった。

転校がかかっているからこそ主人公が負けるわけがない、というメタ読みをできるため、どういう形で終結するのかがキモなのだが、時間制限をオーバーしつつも自力解答する、という軟着陸だった。

 

現時点では、クラスメイトの実力のほとんどが謎となっているが、描写だけを見ると、担任も認める実力者の東洲斎享楽は三本の指に入るだろう。

徐と夕方だが、この二人は夕方の方が格上と思われる。

根拠としては薄いが、徐の暗号に出そうと思ったらパッとヒントを出せたことと、今は相手をしないといった発言を加味している。

この場で夕方との連戦になるでもなく、白黒付けずにドローに持ち込むあたり、大金星と言える。

 

いろはは、主人公の分類だと『序盤は下の方でも最終的には最上位クラスになっている』タイプだと思われる。

ずっと眼鏡に頼り切りではなく、今後も眼鏡を使えなかったり、使わなかったり、といった展開が挟まれていくだろうと予想する。

この予想は洞ヶ峠の『眼鏡兵器は使用者を暗号兵器に変える』といった趣旨の発言が根拠になっている。

あの眼鏡を使っていると知らず知らずのうちに、眼鏡が出すヒントを脳内で処理できるようになるのではないか。

東洲斎の暗号の時に、眼鏡は都道府県の名前をJISコード順に並べたり、そこに古典平仮名47音を当てはめたものを作ったり、手書きでやると時間がかかりそうな物を瞬時に作っていた。

今回は眼鏡が思考をまとめることはなく、ノートに手書きで解読表や解答を書く必要があった。

 

どういう時間配分で3時間を使ったのかわからないが、『星の数ほどある』というヒントが出てからすぐに体育館を出たのは、アメリカの州の名前を調べるためだろう。

☆の中の数字や文字の組み合わせについて、州の名前を英語表記したものが関係しているかを調べたり、実際に英語表記したりするのに辞書が必要になる。

英語表記した州の名前に50音表を対応させた解読表を作り、解答を書く。

この動きを再現するとしたら、30分では厳しいだろう。

この主人公、知識や思考の整理を眼鏡が補っているが、考え方や目の付け所に関しては、かなり優秀なのかもしれない。

 

最後に、本編に関係なくとも個人的に「面白い」と思ったシーンを紹介する。

今回は、『いろはをビビらせる夕方多夕』を挙げる。

 

普段ひょうひょうとしているキャラが唐突に発する強キャラオーラ、良い。

では、次回の更新をお待ちください。