一生に何度も観る映画「言の葉の庭」青春という時間を今ほしいと神様にお願いしたくなる映画・レビュー | 編集者 福田清峰の I Love You

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「5年愛される本づくり、そして10年愛される本づくりへ」をモットーに書籍を編んでいます。
ゴルフとバードウォッチングにハイキング、山登り好きです。
そして写真、ライブに演劇、バレエ、映画鑑賞と美術館めぐりが大好きな編集者&カメラマンです。


テーマ:

「言の葉の庭」

【感想/レビュー】

 

「言の葉の庭」このタイトルがとても素敵です。

「”愛”よりも昔、”孤悲”のものがたり」キャッチコピーもシャレています。

新海誠作品はどれも何か癖になるきれいさと許せてしまうはかなさと、気になるキャラクターデザインがたまりません。

そして心にチクっと傷をつくる巧みな声優さんのキャスティングがたまりません。

特に雪野由香里を演じる花澤香菜さんの間合い、最高です。

レビューにあわせてネタバレ注意です。

 

 

言の葉の庭

製作年:2013年
日本公開:2013年5月31日
上映時間:46分

監 督:新海誠(原作・脚本)
キャスト:入野自由(秋月孝雄)、花澤香菜(雪野由香里)、平野文(タカオの母)、前田剛(タカオの兄)、寺崎裕香(タカオの兄の彼女)、井上優(松本)、潘めぐみ(佐藤)、小松未可子(相沢)、早志勇紀(森山)

 

 

この恋が叶うとか叶わないとか、そんな大げさなことじゃなく、今、全力でこの人が好きなんだと。

素直にそう思えるのが青春時代なのかもしれません。

そして、随所で心に傷をつけていく柏大輔さんのピアノ。

突き刺さります。

それと、主題歌「Rain」がまた沁みます。

大江千里さんの名曲を秦基博さんが見事に歌いあげます。

 

 

こちらなら見放題です。

 

 

「子どものころ空はもっと近かった」

だから空が近く感じる雨の日が好きという主人公タカオ。

六月、梅雨とともにこの小さな恋の物語は始まります。

 

靴職人になりたい夢を持つタカオは雨の日の午前中は学校をさぼって新宿御苑の東屋で靴のデッサンをしています。

鉛筆が線を描くとともに、ノートの弛む描写が絶妙です。

 

 

このデッサンを見ていると、描きたくなるから不思議です。

それくらいこの描写に力があります。

 

 

その東屋で、昼間っから1人缶ビールを飲む気になる年上の女性ユキノと出会います。

初めて会った日にユキノがタカオに投げた短歌がタカオの耳に残ります。

「鳴る神の 少し響みて(とよみて) さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ(とどめむ)」

 

 

昼間からビールを飲むOLと学校をサボっている高校生がひとつ屋根の下で共有する時間はほどなく心地よく感じるわけで、それでも、挨拶をするようになったからといって、2人の間にはベンチの端と端という距離感が残り、それでも、東屋の外に降る雨に包まれ、2人の距離感はひとつの空気感に守られているわけで。

その東屋は2人にとって、小さなころ遊んだ秘密基地のような存在になり、「今度はいつ」なんて野暮な約束を交わすこともなく、思いが募る日々が折重なります。

 


お父さんとお兄さんとタカオと3人でお母さんの誕生日プレゼントに選んだのがDianaのパンプスです。

 

 

キラキラ輝くこの靴がタカオの心に刻まれています。

 

 

靴職人になりたいと誰かに言ったのはユキノがはじめてで。

互いに、夜眠る前、朝眼を覚ます瞬間、気づけば雨をの祈る。

2人の想いが重なり合っていくように思えます。

 

 

誰のものでもなく女性の靴をつくっていると、どうしてもうまくいかないと、ユキノの足を計らせてもらうことになります。

もちろん、この靴、ユキノの足を横目に見ながら考えていた靴です。

 

 

ユキノがパンプスを脱ぐシーン。

 

 

ここからセリフをひとつも挟まずに、時折、雨のシーンを織り交ぜて流れる展開で、この大人の女性の仕草が、どれだけ15の少年の心をつかんで離さないことか、痛いほど伝わってきます。

 

 

初めて触れる足先。

大切なものを扱うようにサイズを測っていきます。

 

 

ここでユキノが言います。

「私ね、うまく歩けなくなっちゃったの、いつの間にか」

「それって、仕事のこと?」

「うーん、いろいろ」

精一杯の会話のあとタカオはもっと深く恋という階段を落ちていきます。

「この人のこと、まだ何も知らない。

 仕事も歳も、抱えた悩みも、名前さえも。

 それなのに、どうしようもなく惹かれていく」

 

 

梅雨も明け、雨が降らない日々ばかりが続き、あの場所に行く口実ができないまま夏休みを迎えます。

そのやるせなさはユキノの心も軋ませます。

ふいに落としたコンパクトが粉々に砕けてしまいます。

 

「27歳の私は15歳のころの私よりもひとつも賢くない。

 わたしばっかりずっと同じ場所にいる」

 

 

九月に入り、2学期がはじまった学校で、タカオはユキノにばったり会います。

しかも、それはユキノが学校を退職する日で、その理由を聞くことになります。

その理不尽な理由を許せなかったタカオは先輩たちと喧嘩をします。

 

雨を待ちながら、晴れた新宿御苑に向かうタカオ。

いるはずのないユキノと巡り会います。

 

万葉集には「恋」を「孤悲」と歌った短歌がいくつもあります。

そして、「雨の孤悲」を歌った短歌が作品のひとつの大きなファクターになっています。

 

1つ目が最初にユキノがタカオに投げた短歌。

意味は「雨が降ったら、君はここにとどまってくれるだろうか」

鳴る神の 少し響みて(とよみて) さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ(とどめむ)

 

そして2つ目がその返し歌です。

雷神(なるかみ)の 少し響みて(とよみて) 降らずとも 我は留まらむ(とまらむ) 妹し(いもし)留めば(とどめば)

意味は「雨なんか降らなくてもここにいるよ」

 

さらに、雨の庭といえば、村上春樹さんが「ノルウェイの森」のタイトルを当初「雨の中に庭」(ドビュッシーのピアノ曲「版画」になる「雨の庭」にインスパイヤーされたとか)としていたそうな。

新海誠監督、「ノルウェイの森」から台詞を引用しているとインタビューでも語られています。

それがここでユキノが口にした台詞です。

「わたしたち、泳いで川を渡ってきたみたいね」

 

2人はゲリラ豪雨にびしょ濡れになりながら瀬ナクォ押されるかのように次のステップに進みます。


 

濡れたシャツを乾かしにユキノの部屋へ。
アイロンでタカオのシャツを乾かすユキノ。

オムレツをつくるタカオ。

 

 

食後のコーヒを淹れるユキノ。

「今まで生きてきて、今が1番幸せかもしれない」

2人の心が共鳴します。

 

 

タカオがユキノに告白をします。

 

 

心と裏腹に、「ユキノさんではなく先生でしょ」と。

「私はあの場所で1人で歩く練習をしていたの。

 靴がなくても」

「だから、今までありがとう、秋月くん」

と言ってしまいます。

そんな不器用な自分に打ちのめされそうになりながら、タカオとの日々を思い、むせび泣きます。

 

 

そして、意を決して裸足のまま非常階段をタカオを追いかけます。

なぜ非常階段か。

作品中で一瞬出てきますが、エレベターは点検中です。

点検中だから非常階段を使っているといった単純なものではなく、自分の足で走り出していくんだという意志、ユキノとタカオそれぞれが、互いのおかげで明日へ進むことができるかもしれないということを感じさせるためのシチュエーションであろうかと。

 

 

ユキノを罵るタカオに、涙が止まらなくなり、ユキノはタカオにしがみつき、タカオはユキノをしっかり受け止めます。

 

 

ユキノからの手紙をみながら、ユキノのためにつくったパンプスを2人の秘密の基地のベンチに置いて。

 

「歩く練習をしていたのはきっと俺も同じだと、今は思もう」

「いつかもっと遠くまで歩けるようになったら、会いに行こう」

と。

 

 

青春は何もわからないうちにやってきて、何かわかった頃には終わっているものかもしれません。

もし神様がひとつだけ願いを叶えてくれるとしたら、きっと僕は「40歳をすぎた頃からを青春時代にしてください」とお願いするだろう。

そんなことを思いながら、何度も何度も観た46分間の”孤悲”ものがたりです。

ほろ苦いだけじゃない、これも青春なんだよねと、ちょっぴりセンチでワクワクする時間をもらえます。

 

 

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